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ロストソング  作者: 雪那 由多
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守護精霊と約束と

店はクローズに、鍵もしっかりとかけて店内にいたギルドとは関係ない方達には食事代と引き換えにお引き取りを願い、カーテンを閉めて声が外に漏れないように、そして室内にいる人の気配を消す処理まで徹底に施した後


「どうすればいい?」


 トリアの質問に


「机と椅子をどけて。

 お嬢ちゃんはおっさんと向かい合って床に座って」


 ガタガタと机と椅子を周囲にどかせば店の真ん中で二人向かい合って座る。

 あまりの勢いにレイはしょーがないかと周囲を見わたす。


「いい?これから起こる事は何も怖くないの。

 ただ、俺様の声だけに耳を傾けて、言うとおりにすればいいただそれだけ」


 簡単だろと笑うレイに緊張したままのミストはぎこちない笑みを浮かべる。


「じゃあやるか」


 言ってレイは右手をさっと横に振れば二人の下に光に輝く魔法陣が浮かび上がった。


「初めて見る文字の魔法陣だ。呪文もなしに陣を敷くとは」


 トリアの呟きに「俺も」とだけファロードは陣を見ていた。


「これから何が起きても魔法陣から出ないでね?終わるまで出してあげる事も出来ないけど、入る事も出来ない。

 これはそう言った物だから諦めてね」


 レイの言葉が静かに店の中に響けばミストは小さく頷く。

 そして横に振り払ったその手をミストの胸へとさし伸ばせば……その寸前で呪文を発する事なく小さな魔法陣が展開し輝いた。

 それも床に描かれた魔法陣同様に見た事ない文字で書かれた魔法陣だった。

 レイはその魔法陣の中に手を突っ込めばそのまま手は魔方陣の中に消えて行き、陣の先からレイの手が消えていた……


ビクン


 ミストの体が小さく跳ね上がった。


「俺様の魔力が混ざって変な感じだけど動かないでちょうだい」


 言えばうんとだけ零す小さな返事に何となく気まずい空間が漂う。

 これは皆で見物しながら行ってよい物だろうかと。

 だけど、今更足音さえ立てるのも気が引ける緊張感に誰もがその場を立ち退く事が出来ず見守るしかない。

 だけどそこからは何も変化なくただレイだけが目を瞑ってあー……とか、うー……とか、むー……とか唸るだけ。

 ミストは懸命に声も立てずにこらえるも


「必死な分だけなんかエロいな」


 強く目をつぶり、唇を噛みしめ、振るえそうになる肩を強く自ら腕を抑え込む事でこらえ、ペタンと座る足は靴を履いていても判る指先を丸めながら耐える姿は確かにエロかった。

 誰もがあえて言わない言葉をヒューイはついに代弁してしまい、エクルによる足ふみ攻撃が始まった。


「い、いた……ごめんなさい。悪かったから、やめて!!!」

「見るな!ミストが穢れる!」


 あくまでの小声の攻防にファロードが呆れていれば


「よし、これでいい。たぶん成功。

 後はミストの仕事だ。

 良いか?今さっきまでとは違う変な感じがする?」

「う、うん……なんか、熱いような、風邪ひいてる時の感じに似てる」


 言葉の通り、瞳は潤み、頬も上気したかのように赤く染まっている。

 さっきの後にこれだ。


「エロの化身……」

「くたばれっ!!!」


 ついにエクル様の右ストレートが腹に向かって炸裂したのを誰もが見ない振りと言うトリアを始めとする大人の振りを発揮していた。 

 そんな外野を他所に


「それはミストの魔力が体中にに流れている証拠だ。直に慣れる。違和感は最初だけだ」


 うんと頷くミストに


「さて、これからが大変だ。

 まずミストは心臓から体の隅々に魔力を巡るように感じる事は出来るか?

 体中に巡る魔力が最後に心臓に帰って来るようにイメージをして。

 魔力循環の基本中の基本だな」

「い、イメージ……」

「体中に魔力が巡ったら戦いの始まりよ?」


 何の?と聞く前に魔力が循環した。

 ドクンと心音が跳ね上がるような魔力に戸惑いを浮かべるミスト。


「魔力を蓄える空間が開いたかな?

 空っぽの魔力空間が魔力が作り出された側からものすごい勢いで吸い込んじゃうから酷い風邪ひいた時みたいに倦怠感半端ないけど、俺の言葉だけに集中しろ」


 戸惑いながらもコクンと頷く。


「魔力を感じろ。そして、魔力が語りかける声に耳を傾けるんだ」

「魔力は……判る。全身に感じる……だけど声って……」


 それよりも初めて感じる魔力に不安を覚えるように体を抱きしめながらも苦痛の表情を浮かべる。


「生まれたばかりのとても小さな声だ。

 人が産まれた時から共に育っていく自分の分身の声だ。

 普通なら体の成長段階の途中で育つ魔臓器だが、今までほぼ休眠に近い状態からフル稼働に突入してびっくりしてパニックになっている。

 お嬢ちゃんはその魔力に落ち着くように制御しないといけない」


 痛みからか身体を抱きしめたままごろんと転がる。

 ちなみにミストはワンピースの下にちゃんとレースをふんだんにあしらった可愛らしいスパッツを穿いていた為にヒューイはただ舌打ちをするばかりで、再びエクルのボディーブローが鮮やかに決まったのをみんなで拍手を送った。


「魔力の奥深くから聞こえるでしょ?小さな声で生まれた時より寄り添っていた魔力の産声が」

「わ、わかんないよ!そんなの聞こえない!」


 痛みを伴うと言うように痙攣と共に涙が零れ落ちる。


「聞こえないわけないじゃないの。ずっと一緒に居たんだもの。ちゃんと探してあげて。

 これはおっさんにはできないお嬢ちゃんしか出来ない仕事よ」

「聞こえないよ!わかんないよ!!!」

「魔力の方だってお嬢ちゃんを探してるんだから。

 ちゃんと見つけてあげて。じゃないと魔力回路を遮断してまで今までこの痛みからお嬢ちゃんを守ってきてくれた魔力の防衛機能が無駄になっちゃうじゃない。

 もう防衛機能は守ってくれないよ?見つけないとこの痛みが休みなく一生付きまとうのよ? 

 後戻りはもうできないんだから、ちゃんとお嬢ちゃんに属する魔力の声を見つけてあげて」

「あ……」


 属する魔力の声と言うのがキーワードだったかのようにミストは目を開いた。

 それと同時に涙を一筋零したのを最後に大きく開いた目が宙を見つめて


「聞こえる。なんかさらさらって音……」


 釣られるように誰もが耳を澄ますも怪訝な顔をするばかり。


「そう、それがお嬢ちゃんだけの魔力の声。

 お嬢ちゃんにはそう言うふうに聞こえるのね。

 その声をもっとちゃんと聞いてあげて?

 音はどっちから聞こえる?音がする場所を探してあげて」

「何か流れてる音がする。水……かな?」


 その言葉を発したのち、二人が座る魔法陣の周囲から突如放射状に水があふれ出した。


「な、なに事?」


思わずと言うように誰もが後ずさる中、ガーリンは食堂からバケツと雑巾を持ち出して、食堂に居たメンツに手渡し掃除をさせていたが、溢れる水の量はどんどん激しさを増していく。

「その水はどんな感じ?」


 その合間にもレイとミストの問答は繰り返される。


「ちょっと冷たくて……でも気持ちいい。

 さらさらしてて、とても澄んでるの」

「その流れがミストから見える総て?」 


 その質問にフルフルと頭を振り、居住まいを正してレイと向き合うように座りなおす。


「泉が見える。ぽこぽこって水紋が浮かんでる」

「へぇ?」

「泉だ。水がこんこんと湧いてるの」

「おやすごい。水の生まれる場所を見つけたんだ」

「誰かいる……」

「は?」

「女の人。すごい綺麗な人……」

「ちょっとまって」


 ミストはす……と何かに手を伸ばした。

 泉に立つ人がその手を握り返してくれた。


「はじめまして。ミストローゼ・シャトルーズです。

 よろしければお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」

「私はシレスティアル。水をつかさどる精霊の一人、そしてこの泉の主」


 そのまま手を引かれて泉の上へと迎え入れられた。

 歩けば波紋が広がるも不思議と水の上と言うのに不安はない。

 どこまでも澄むこの泉のような瞳を持つ精霊に


「シレスティアル……素敵な名前」


 教えてもらったばかりの名前を辿れば


「貴女を生まれる前より見守っていたけど、やっと会えたわ。嬉しい」


 感情が乏しいのか、それとも美しすぎるせいなのか控えめにだが微笑みかけられた笑みが眩しくて


「精霊様にお目にかかる事が出来て光栄です」


 思わずと言うように俯きながら服の裾をもじもじと弄ってしまえばコロコロと上品な笑みを零す。

 それでも美形は美しさを増すだけで、貧相な自分が正直並んで立つのは罰ゲームにも思える。


「所で尋ねたい」

「はい?」

「先ほど口にした”御恩は生涯をかけて命ある限り忠誠をつくす”という言葉に偽りはないか?」


 先ほど口にした何てなんだっけ思うもその口上を口にした相手は1人しかおらず、なぜそこにこだわるのかわからないけど嘘偽りはないので


「はい。先ほどの言葉に偽りは在りません。

 生涯をかけて命ある限り忠誠をつくします」


 もう一度忠誠の文句を述べれば満足げな笑みを浮かべれば


「約束」


 そう言って私の胸元に指先で突けば紋章のような物が一瞬浮かんで、消えた……


「貴女が私達を合わせて下すったあの方への約束を守る限り私は貴女を守護いたしましょう」


 その人はその言葉が終わるのと同時に世界は光に溶けて行った。

 光の中で


「覚えておいてミストローゼ。

 貴女が私を必要とするとき何時如何なる時どんな場所でもあなたを守り抜きましょう」


 脳裏に囁きかけるような優しい声と同時に


「でも約束は忘れないで。

 約束を破った時、私は貴女の魔力回路を再び閉ざします。

 そして私も去り二度と会う事はないでしょう」


 まるでこれが引き換えだと言うような少しだけ厳しい声に私は小さく頷くのがやっとだった。





「お嬢ちゃん誰と話してるの?」

「シレスティアル……素敵な名前」

「ミスト相手に気をつけろ!お前の魔力の中にはお前以外居ないんだ!」


 室内に響く乾いた音はバケツリレーをしてる合間でも響き、レイの叫びに誰もが異変を感じてその手を止める中


「精霊様にお目にかかる事が出来て光栄です」


 レイに強く頬を討たれても気付かずに深く頭を下げての謝辞。

 レイでなくても誰もが息を飲んだ。


「魔盲の理由って、この子精霊付きだったのか……」

「精霊付きってなんだ?」


 ファロードがざぶざぶと未だ溢れる水の中を通りながらやってくる。


「たぶんこの子には生まれつきの守護精霊がいたの。

 まぁ守護精霊に守られながら生まれたって言うのが正しいんだけど、精霊の判断で魔盲になってたんだろうねぇ。

 ひょっとしたらこの子化けるわよ」


 と言っても修行はこれから必要になるだろうし、いまだトリップの最中だ。

 トリアもエクルも驚きの瞳の色を隠さずにそばまでやってくるも二人を取り囲んでいる魔法陣に弾かれて側には近づけない。


「とりあえず心配だから連れ戻しに行ってくる」


 どこに?なんて聞く間もなくミストの両の手を掴んで目を瞑る。

 それと同時にミストは呟いた。


「はい。先ほどの言葉に偽りは在りません。

 生涯をかけて命ある限り忠誠をつくします」


 誰もが眉間を寄せるようなその言葉に動きを止める。

 それではまるでミストがその言葉を声に出すまでは魔力が使えないような引き金ではないかと。

 それから数分もしないうちにレイの瞳がぱっと開いたと同時にミストもゆっくりと瞳を開けた。


「はーい。ただいまー。お嬢ちゃんのお帰りよ」


 言えば足元の魔法陣も消えて、陣の中だった場所にもどこからか湧き出た水が押し寄せてくるのを二人も受け止めていた。

 ぱちりぱちりと未だ夢と現実の間に居るかのようなミストはエクルに抱きしめられてようやく意識をちゃんと取り戻した。


「うん。ちゃんと感じるよ!ミストから魔力をちゃんと感じる!!!」

「ああ、まだ弱いけど俺もちゃんと感じるぜ」


 ファロードがやったなと言うように笑みを浮かべる中、バケツリレーは再開される。


「っていうか、みんな魔法使えるんだから水を操れば楽だろ」


 暢気な声でレイは指をパチンと鳴らして開けた窓から水を龍のような姿に変えて人通りのない場所に捨てれば


「私としたことが動転してうっかりしていた」


 顔を赤らめてのトリアの声にレイはもう一度指をパチンと鳴らして濡れた服を瞬時に乾かして見せた。


「重ね重ね申し訳ない」


 近くに居たギルドの男が几帳面にも頭を下げるのをレイは大したことなくって逆に申し訳ないわーなどとのんきな声で笑っている。


「それよりも、これ、せっかくだから作ってみようよ!」


 エクルがカバンから取り出したのは一つの魔法石。


「そんなもの持ってきていたのか?」


 ヒューイがあきれてみせれば


「いつ何時魔法が使えるようになるかわからないじゃないの。常に肌身離さずって奴よ」


 エクルがベーと舌を出して抗議したのちに


「今ならきっと作れるよ。ミストの魔武器」


 学校で配られた拳大の石を両手で包み込むように丁寧に持ちレイへと視線を向ける。


「まぁ、今はまだ魔力がほぼない状態だから、あまり大きな魔力を使わなければいいんじゃない?」


 天と地以上の差を持つ0と1の差にどこか強張るぐらい緊張する表情でミストは少しずつ魔力を魔法石へと注ぎ込む。

 初めての魔力操作は今までの月日で鍛えた妄想が形となって生まれた頃から使えたと者達と何ら変わらないスムーズに魔力を操っていた。

 魔石は淡く輝き、魔力と化学変化を起こして形状を、質量と常識さえ超えて変化させて……


「杖が出来た」


 姿を現したのはあまり長くはない物の優美な植物の蕾を想像する一本の純白の杖だった。

 先端には透明度の高い水色の石がそれこそ花のつぼみのように埋め込まれていて……


「学校で配られる石のレベルでこんな見事な魔武器が仕上がるなんて信じられん」


 トリアの呟きにガーリンが丸い魔法石を持ってきた。


「ついでにじゃないが属性と魔力値とか測ろうか」


 差し出された石にこれもまた緊張して強張り手をゆっくりと乗せる。

 そして流した魔法石は水色ただ一色のみ光を浮かべる。


「水属性1つきりか。だが、今使えるようになったと言うのにすでに8万まで伸びてるぞ」


 凄いじゃないかとガーリンは言うが、それを見ていた外野は


「水属性1つじゃ、素直に喜べねえな」


 悪気があるわけじゃないだろうがミストを追い詰める言葉をついと言うように吐き出してしまい、側に居た女に肘鉄を食らって、あわてて謝ろうとするも


「何言ってるの。この子精霊付きよ。

 水属性1つじゃなくて水属性特化って奴よ。

 ひょっとしたらって思ったけど、まさか今時属性特化の子に会えるなんて思っても居なかったわ」


 レイの言葉に初めて聞く特化と言う言葉に誰もがまた食いつく。


「特化って?」


 自分の事なのでミストは小首を傾げながらもレイを見上げながら問えば


「文字通りよ。普通なら一つでも扱える属性が多い方が有利とされてるけど、特化はその属性1つだけど誰よりもその属性を極める事が出来るの。

 鍛え方次第じゃすべての水属性持ちを超える存在になるわよ」

「そりゃ穏やかじゃないわね」


 トリアが呟けば誰もが息を呑む。

 トリアことトリアドール・ゴルドニア。

 このウィスタリア王国一位になるギルド黎明の月のギルドマスターで、このウィスタリア国ギルド連盟を束ねる頂点に立つ任についているのだから。


「そうよ。

 精霊の守護持ちの特化なんて、SSSクラスの存在なんだから。

 どの国さえも超越した水使いの存在になれる予定なのよ」


「予定……なのか?」

「ロンサール国の女帝ガーネットが炎特化だったって話があるじゃない」

「何年前の話だ?ロンサール国も無くなったしガーネットの名前もついに聞かなくなったぞ」

「それだけ珍しい話なのよ」


 言えば溜息を吐き


「女帝ガーネットを持ち出されたら張り合うのは無謀と言う物じゃないか」

「女帝ガーネットって物語に出てくる魔導師の話だろ?」

 

 ファロードは何処か瞳を輝かせながら前によく物語を読み聞かせてもらったんだと言えば別の所でも憧れたとか、その物語で魔術師になったと言う人までいた。


「実在してる人だし、ここ数年の話しだし、ひょっとしたら今も生きている人だし、ガーネットをモチーフにした物語はみんな同じレベルの突拍子もないストーリーだからね。疑う余地もない」

「と言うか、あの国のがまっ平らで大地の表面が溶けて硬質化している理由がガーネットの炎の熱によるものだなんて、嘘みたいなホントの話だからおっかないわ」


 怖い怖いと腕をさすりながらレイはミストの瞳を覗き


「その点お嬢ちゃんはギルドに引き抜かれる前に神殿に引き抜かれる事になるだろうから、一生懸命お仕えする事になるわね」


 その言葉に誰もがそうだと言う。


「神殿の人を紹介してあげるから一緒に神殿で魔力を測りに行こう!」


 エクルがミストの手を握ってぶんぶん振り回す。


「え?え?」


 繋がった手を眺めて目をくるくる回すミストに


「誰よりもすごいって事みんなに知らしめなくちゃ!」

「え?え?」


 目を回しっぱなしのミストに


「そうね。その方がおっさんも安心できるわ」


 一方的に忠誠何てさせられたレイにファロードも力強く頷く。


「同級生の友人が母親になるなんて事になったら……冗談じゃない」


 お前の親はロリコンですか?変態ですか?の世界だ。

 と言うか、同級生が性的な対象になるのはさすがに避けたいファロードだったが


「それよりも買い物行かなくていいの?

 随分時間がたってるけど」


 レイの言葉に窓の外を覗けば随分日は傾いていて


「やばい!とりあえず明日の準備急ごう!」

「だな。俺とファロは薬屋に行くから、ミストはエクルを連れて靴屋に行け!

 半刻後にこの店の前に集合、そのあと雑貨屋に行くぞ!」

「班長了解です!」


 言ってポケットから適当にお金を取出し


「すみません。後からおつり取りに戻ります!」


 大慌てと言うように店を飛び出した四人に誰ともなく気をつけろよと送り出される中誰かが言った。


「あの魔盲の嬢ちゃん、ああやって顔を上げてれば随分と別嬪さんじゃないか」

「ああ、前に見た時は陰鬱な影のある薄気味の悪い子だったのにな」


 気持ちひとつで年相応の輝かしい若さに誰もが眩しく目を細めて


「俺もあんな嫁さん欲しい!」


 誰かが叫ぶと同時にどっと笑い声が店の外まで溢れていた。








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