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第7話

「おや! ドアが開いているぞ! みんな! 魔女がいるかもしれない! 用心しろよ!」

「「「はい!」」」


 ルイたちは奥のドアが開いていることに気がつくと、用心深く中へ進んできた。

 ニ、三メートル先にルイたちが迫った!


「ルイ! 危ないからわたしたちが先に行く!」

「ノエル、ミシェル、危険だ! いいから、下がってろ!」


 なんとノエル・トマやミシェルもいる!

 これはいよいよまずい!


「リンダ、例のケム玉は?」

「鏡のせいで魔術がまったく使えないのよ!」

「追いつめられたおかげで、良いアイデアがひらめいたぞ! リンダ、オーロラ、わたしのうしろへ! こうなったら、こちらから強行突破だ! 最大の防御は最大の攻撃だ! 行くぞー!」

「あっ! アーサー!」

「アーサー様!」


 アーサーはいきなりルイたちの元へ走り出ていってしまった!

 わたしたちも仕方なく、アーサーのうしろに従った。

 お互いに仮面を被っているので、顔は見えない。

 いきなりアーサーが騒ぎだした!


「たいへんです! ドミニク・トマが扉を破って逃げ出しました!」

「なんだとー! たいへんだ! 衛兵! すぐに追いかけろ!」

「「「ははっー!」」」

「わたしたちも、一緒に追いかけます!」


――ダダダダッダダダダーッ!


「えっ? わたしたちって……侍女もいるのか? おいっ! どこの部署のものだ?」

「ルイ、みな行ってしまったぞ! わたしたちも早く追いかけよう!」

「わかった! あっ! そういえば……さっき見張りの者が、衛兵と侍女の2人に交代を命じられたと……あいつらだー!」

「やられた! あいつら魔女の手先だ! いそいで追いかけよう!」


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ハアハア……ここまでくれば……」

「仮面はこの生垣に捨てていこう! 2人ともすぐに宿舎に戻るんだ!」

「わかりました! アーサー様もお気をつけて!」


 わたしたちは城の庭でアーサーと別れ、いそいで宿舎に戻った。

 オーロラは初めてわたしの素顔を見て驚いていた。


「リンダったら! すごい美人じゃないの? なぜいままで素顔を隠していたの?」

「絶対にルイ王子に顔を見られたくないのよ。実はわたし、このお城に3年前に滞在していたことがあるの。だから、知ってる人に顔を見られるとまずいのよ!」

「そうだったの……。あなたはつまり……ルイ王子の元々の知り合いってわけね? これは面白くなってきたわ」

「オーロラ、それよりもドミニク・トマはどうする? 彼女は今、城のどこかに潜伏して復讐の機会を虎視眈々と狙っているわよ!」

「魔女が相手じゃ手強いわね……。そういえば、蛇の模様の女を探してるってノエル・トマに聞いたわ。なにか知ってる?」

「ゴホッ……わ、わからないわ……とにかく用心しましょう! 明日の舞踏会でドミニク・トマが何かしてくるかもしれないわ!」

「さすがのわたしも恐くなってきたわ……。明日は一緒にいてね!」

「オーロラ、あなただけでも守ってあげられるようにがんばるわ」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 不安なまま翌日の夜を迎えた。

 最終試験の舞踏会だ。

 今日も白いベールを頭に乗せて花嫁候補たちが大広間に集まった。

 ただしいつもとちがう。

 上位11人が着ているのは白のウェディングドレスだ。

 王城から贈られたもので、優勝者はそのまま教会でルイ王子と式を挙げる予定だ。

 落選した花嫁候補たちも色とりどりのドレスで参加していて、舞踏会に華やかな色を添えていた。


 今日は王様と王后様も玉座にいらっしゃる。

 ノエル・トマとミシェルもだ。

 侍従が前に進み出て説明をはじめた。

 

「今から1位の花嫁候補から順番に1曲ずつルイ王子と踊っていただきます。最終選考は王子が行います」


 ざわざわと会場が騒ぎはじめた。

 ルイ王子と踊れてよろこんでいる者、くやしがっている者とさまざまだ。

 わたしはこのときたいへんなことに気がついた。

 おとといの夜、占い師の家でルビーの指輪をはずしたあとマントのポケットに入れたままだった!

 あの指輪がないと魔術が使えない!


「では、一位のオーロラ姫、こちらへ!」

「はい!」

「従者はおりませんか?」

「はい、貧乏国の末っ子なのでそんな余裕はございませんわ。こちらへは、自立の道を目指して参りました」

「フハハハハ……! これはすごい姫だ! さすが1位に選ばれるだけはある! では、わたしがダンスの腕前を試してしんぜよう」


 突然、魔法使いのミシェルが前に進み出てリンダ姫の手を取り、片膝を折ってうやうやしくあいさつをした。

 これには大広間の一同があっけに取られてしまった。

 驚かなかったのはオーロラぐらいだろう。


「のぞむところよ」


 ニッコリ笑うとウェディングドレスを持ち上げ正式なあいさつをしてから、ミシェルの手を取り踊りはじめた。

 

「おや……?」


 ミシェルはオーロラの手を見て何か言ったが、すぐにフロアの中央に彼女を連れていき一緒にまわりはじめた。

 ふたりともかなりのダンスの名手だ。

 これでは花嫁試験は、オーロラの1人勝ちで終わりそうだ。

 ミシェルの蛮行に文句をつける者は不思議と誰もいなかった。


 次々に姫が指名されルイ王子と踊りはじめた。

 わたしはそれを見つめながら3年前に思いを馳せた。

 よく2人で舞踏会のファーストダンスを踊ったものだ。

 ルイはダンスが得意で、小柄なわたしをわざとくるくると回しながら笑っていた。 

 あの頃がなつかしい。

 あのときにもどれたらいいのに。


「リンダ、大丈夫か? 一緒に踊ったりしたら、ルイにバレないか?」

「アーサー……わたしは3年前と比べて身体つきも声もちがうわ。だいじょうぶだと思う」

「だといいが……とりあえず、開かずの間の件はわたしたちの仕業だとバレてはいないみたいだが……」

「次はリンダ姫! 10位の姫の支度がまだなので繰り上げる!」

「なんだって! 順番が早くなったぞ! 次の曲は踊れる曲か?」

「この曲は……」


 いま演奏のはじまった曲は、ルイとの思い出のナンバーだった。

 よく2人で練習した。

 この国独特のかなり高難度のステップで、踊れる人はあまりいない。

 

「アーサー、まずいわ。この曲、踊れるわ。どのていどの腕前を見せれば……」

「アーサー様! わたしと踊りましょう!」


 いきなり壇上からノエル・トマが呼びかけてきた!


「はっ? わたくしとですか? しかし……このような曲は聴いたことがないので踊れるかは……」

「よいから! わたしが教えます!」


 ノエル・トマはミシェルのように傍若無人な態度で壇上から下りてくると、アーサーの手を取り強引に連れていってしまった!


「ちょっと! アーサー! どうしたら……」


 手を伸ばしてアーサーの袖を引っ張ろうとしたら、いつの間にか横に来ていたルイにその手を取られてしまった。


「わたしがリードします。ついてきて!」

「あの……」


 わたしたちに合わせ、演奏が曲の最初からはじまった。

 なつかしいメロディー。

 なつかしい腕の中で聞こえてくる。

 自然と足がリズムを刻み、ルイの胸にピタリとカラダを寄せる。

 

 いけない。

 指輪をしていない今のわたしは、ひどく無防備だ。

 ただの恋する娘。

 愛の魔法に負けてしまいそうだ。

 絶対に愛されてはいけない人なのに。

 

 ベールを通してルイの強い視線を感じる。

 黒曜石のような美しい瞳、高い鼻、ひきしまった唇。

 スタイルもよく踊りの名手だ。

 どこをとっても完璧な男。

 完璧にわたしの心を虜にする。


「どうしてこの曲のステップを踏めるんですか?」

「えっ? いえ……あの……」

「今日はルビーの指輪をしていないんですね? いつもしていたのに。どうしてですか?」

「……失くしました」

「あなたの手を握っていると、ある人を思い出す。身体つきも声もそっくりだ」

「…………」

「昨日、仮面を被った衛兵と2人の侍女が地下の開かずの間から飛び出てきました。仮面はその後、庭の片隅で発見されました。なぜその者たちを疑っているのか知っていますか?」

「あの……なんの話を……」

「パレードが終わり戻ろうとしているとき、開かずの間で見張りをしているはずの衛兵がそばにいるのに気がついたのです。事情を聞いたら、衛兵と侍女2人に交替を告げられたと言っていました。だが、そんな指令は誰も出してはいなかったのです」

「あの……王子様……わたくし具合が……」

「それはいけない! 庭で休みましょう!」

「え? ちょっと! 待って!」


 ルイが強引にわたしを庭へ連れ出した。

 助けを求めようにも、オーロラはミシェルと大広間の中央でクルクルまわっているし、アーサーはノエル・トマに抱きつかれ、慣れないステップに四苦八苦している。

 

「あの……曲が終わりました! わたしはこれで……!」

「ちょっと待ってください! これから我が王宮に一緒にいらしてください」

「なんですって! 失礼なことを言わないでよ! わたしはそんな安っぽい女じゃないわ! 別にあなたと結婚したくてここに来たわけじゃないんです!」

「そういう意味ではありません。あなたに聞きたいことがあるのです。なぜなら……」

「なぜなら?」


 暗闇にルイの瞳がギラリと光った。

 

「踊っているときチラリとあなたの背に、蛇の模様が見えたからです!」

「…………!」


 蛇の秘密がバレた!

 よりによってルイに!

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