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第6話

「もう! 興奮して眠れなかったわ!」

「オーロラったら……」


 開かずの間に忍びこむ計画はこうだ。

 カーニバル最終日ということで、お昼から国王ご夫妻とルイ王子のパレードが行われる。

 そのスキに開かずの間へ行き衛兵をだまして鍵を開けようという算段だ。 

 庭の生垣で待機するわたしたちの頭上高くに、パレードのはじまりを告げる花火が打ちあがっていく。


「行こう!」

「「はい!」」


 3人とも仮面をつけていた。

 わたしはピエロ、アーサーはジョーカー、オーロラはかわいい女の子だ。

 アーサーは衛兵に化けている。

 わたしとオーロラは侍女の格好をしている。

 手に持った盆には葡萄酒とごちそう。

 例の秘密の通路を左に進み、地下の大広間に着いた。


「すいません!」


 アーサーが前に進み出た。

 仮面を被った2人の衛兵がこちらに身構えた。


「だれだ!」

「交替の者です。実は王様たちのパレードが思った以上の人出なので、来て欲しいそうです。わたしが侍女たちと代わりに立ちます」

「侍女だと? 女が役にたつのか?」

「どうぞ……葡萄酒と料理をお持ちください」

「そ、そうか……? ならば……」


 2人の衛兵はわたしたちから葡萄酒やごちそうをもらいうけ、意気揚々と去っていった。


「パレードは1時間ほどで終わる。いそごう!」

「「はい!」」


 いそいで突き当たりのドアまで走った!

 オーロラが壁の取ってを引っ張る。


――ガラガラガラガラ……。


 石の壁が開いた。

 3人で中へ入っていった。

 天窓が設置されているため、明るい日の光が差し込んでいる。

 二、三メートル先に鉄の扉があった。


「あれだ! 行ってみよう!」


 落とし穴などあるといけないので、アーサーを先頭に慎重に進んでいった。

 

――コンコンッ、コンコンッ! ドンッ! ドン、ドンッ!


「これは頑丈そうだな……ビクともしないぞ」

「じゃあ、鍵を使ってみるわね!」

「リンダ、がんばって!」


 わたしはポケットから例の錆びた鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ!


――ガチャッ! ガチャガチャガチャガチャッ! ガチャリッ!


「開いた!」

「やったわー!」

「どれ、さっそく……おかしい。引いても押してもビクともしないぞ。さび付いているのともちがうな……」


――バンッ! バン、バンッ!


 3人で力を合わせて押したり引いたりしたが、扉はどうしても開かない。

 

「そうだわ! 魔法がかかっていたはずよね? 魔術を使ってみるわ!」

「頼むよ、リンダ」

「わーっ! かっこいい!」

「◇!〇#☆$ж……!」


 わたしは腕を上に挙げ手の平を扉に向けた。

 そして知っている呪文をすべて唱えはじめた。

 全神経を扉に集中し何度も強い念を送り続けた。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇


「ハアハア……ハアハア……これが限界よ……」


 唱えること三十分!

 疲れ切ったわたしは、石の床に座り込んでしまった。

 もう、これ以上は限界だ。


「おや? 扉の回りが滲んで見えてきたぞ!」

「えっ……?」

「ほんとうだわ!」


 鉄の扉のふちが、まるで高熱にさらされていくかのごとくジワジワと溶けはじめた!


――シュワワワワーッ!

――バターアアアアーンッ!


 遂に扉が、大きな音を立てながら向こう側へと倒れた!


「わあーっ! すごいわ、リンダ! さっそく入ってみましょう!」

「待て、オーロラ! わたしが先に入ってようすを見てくるからって……ああっ! オーロラ! 待てったば!」

「オーロラったら! 危ないわよー!」

 

 オーロラが勝手に開かずの間へ飛び込んでいってしまった!

 わたしとアーサーはいそいであとを追いかけた。

 中は真っ暗な地下室だった。

 右の奥に小さな明かり取りがあり、日が差し込んでいた。 


「オーロラー! どこだー!」

「ここよー!」 

「オーロラ! ここってどこよ?」

「こっち、こっち! そこのはしごを登ってらっしゃいよ!」

「はしご?」

「リンダ、右の奥にはしごがあるぞ!」

「ほんとうだわ……」


 明かり取りのそばに小さなはしごがあった。

 わたしはアーサーに続きはしごを登った。


「明るいわ……」


 登った先に小さな明るい部屋があった。

 上を見上げると、天上に近づくにつれ細くなっている建物の中にいた。

 高い場所に明かり取りの窓がある。

 壁はすべて鏡張りだった。

 どうやら、ここが塔の内部らしい。


「ねえ! ここってすごいわ! 上空の高い窓から日の光が入ると、壁の鏡が反射して塔全体が明るくなるように設計されているのよ!」

「ほんとうだ……だけど、ドミニク・トマの遺体がどこにも見当たらないな……」


 アーサーが、周りをきょろきょろ見渡しながらそうつぶやいた。

 たしかにそうだ。

 塔の中には何もない。

 ガランとした殺風景な空間がひろがっている。

 あるのは、壁面の鏡に映るじぶんたちの姿だけだ。


「鏡は魔術を封じ込めるアイテムなのよ。生き返ったドミニク・トマは下の部屋で鍵を奪い取り衛兵たちを追い出して施錠した。はしごを登ってこの部屋までやってきたはいいけど、鏡で魔力を奪われてしまった……。わたしなら、どうするかしら……」

「ねえ、リンダ……わたし今、すごいことに気がついちゃった!」

「オーロラ……いやな予感しかしないけど、教えてくれる?」

「ドミニク・トマは死んだと見せかけて生きていたわけでしょ? だけど鏡のせいで魔法が使えないからここから出られなかった……」

「ええ、そうよ」

「鍵が塔の下の草むらに落ちていたということは、あの天窓から外へ投げ捨てたんでしょうね?」

「そうでしょうね。錆びて古びていたから、相当むかしに投げ捨てたはずよ。おそらく、ここに入ってすぐでしょうね」

「だとしたら……ドミニク・トマは、いま初めて外に出られたんだわ! わたしたちが入ってきたあの扉から!」

「なんですってー!」

「オーロラ、どういうことだ? じゃあ……ドミニク・トマはこの塔のなかでずっと生きていたっていうのかい?」

「おそらく……そして、リンダが魔法を使い扉を開けるのを千年の間ずっと待っていたのよ! 下の部屋の暗闇に、ジッと身を潜めて……」

「なんてこと! わたしたちがはしごを登ってこの部屋にくる間に、ドミニク・トマは堂々と開いた扉から逃げてしまったということ?」

「たいへんだー! わたしたちが魔女を塔から逃がしてしまったんだ! まんまと罠に引っ掛かったというわけだ!」

「すぐに追いかけましょう!」


 わたしたちはいそいではしごを降りると、扉から出ようとした。

 そのとき――真正面の通路を男たちの一団が走ってくるのが見えた!

 

――ドカドカドカドカーッ!


「しまった! ルイ王子たちが衛兵を連れてやってきたぞ! パレードが終わって、わたしたちのことがバレてしまったんだ!」

「どうしよう……!」

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