第5話
今度はアーサーにも事情を話して一緒についてきてもらった。
彼には平民の服装をしてもらい、一般市民のフリをしてもらった。
例の通路から城壁の外へ出てカーニバルの会場に向かった。
今日も提灯の灯かりが点々と灯り、赤や青の華やかな夜店があたりをにぎわしていた。
「美しいな……こんな華やかな場所はマルタン王国にはないぞ」
「素敵でしょ? アーサー様と来られるなんて、とてもうれしいですわ!」
「安息日だから昨日より人手が多いわね? 見つかるかしら?」
「大丈夫! アクセサリー屋の近くだったわね! こっちよ!」
「あっ! オーロラ! 待って!」
「リンダ! どこだ?」
なんとわたしたち3人はカーニバル会場に着いて早々、バラバラにはぐれてしまったのだ!
「たいへんだわ! どうしよう……とりあえず占い師を探すしかないか……。あのー……すみません」
わたしは近くの人たちに占い師の店を聞いてまわった。
だが、三角帽子の占い師は今日は休業のようだった。
ならば家を訪ねてみようと考えた。
だが、占い師の家を知っている者は誰もいなかった。
途方に暮れていると柄の悪い大男が寄ってきて、おれが占い師の家を知っているので連れていってやると言ってきた。
わたしは今日も黒マントにフードを被っている。
こんな女をかどわかそうなんて男はいないだろう。
何かあったら魔術でなんとかしよう。
そう考え、藁にもすがる思いで見知らぬ男についていった。
――カサカサ、カサカサ……。
連れてこられた先は寂しい平原だった。
そこかしこに背の高さと同じぐらいの草むらがある。
カーニバルの灯かりや喧騒がだんだんと遠ざかっていく。
不安になったわたしは口のなかで呪文を唱えはじめた。
「マントラ、マントラ……あのー……ほんとうにここなの? 人家なんてないじゃない?」
「あそこにあるだろう? あの小屋だ!」
「ほんとうだ……」
少し先の巨大な樹の陰に小屋が見えた。
小屋というより、枯れてポッキリと上半分が折れてしまった巨大な樹の幹に、屋根だけ取り付けた簡素な家だった。
「占い師に話をつけてくるから、ちょとそこの草むらに隠れてろ」
「そこの? なんで?」
「ここには女がちかづいちゃいけないんだ。おれがうまく話してくるから」
「わかったわ……」
不思議に思いながらもかたわらにある草むらに向かった。
「マントラマントラ……えっ?」
――ガサガサガサガサーッ!
うしろから男が襲ってきた!
「きゃああーっ!」
「覚悟しなー!」
「へっへっへー! 娘がひとりでこんなところで付いてくるもんじゃないぜ? どんな顔してる? どれ、見てやるか!」
まずい!
わたしはだまされていたのだ!
「やめてーっ!」
「おとなしくしやがれー!」
男がわたしを羽交い絞めにしたままフードをめくろうと前に腕をまわしてきた。
手が押さえられては魔術が使えない!
絶体絶命だ。
とそのとき――――ダダダダッダダダダッ!
――ガンッ! バシッ!
「うわああーっ!」
「なに……?」
一瞬、何が起きたかわからなかった。
誰かがわたしたちの元に駆け寄り、あっという間に大男を倒してくれたようだ。
月光に映し出されたその姿を見て息を呑んだ――ルイだ!
剣を片手に地面にのした男を震えあがらせている。
「大丈夫ですか! おや? あなたは……!」
――キイッ!
「おーい! なんの騒ぎだー?」
樹の小屋のドアが開く音がして、誰かがこちらにむかって叫んだ。
振り返ると昨日の占い師が立っていた。
占い師の家というのはどうやらほんとうだったらしい。
「すみませーん! 賊がいたので応援を呼びたいのですが!」
「おお! それではロープを持ってそちらに行きましょう!」
占い師がロープを持ってやってきた。
「これを使ってください! いま、ふくろうを放って事件を衛兵に知らせておきました」
「かたじけない」
ルイは占い師からロープを受け取り大男をグルグル巻きにした。
「悪い奴め! 若い娘になんてことを……覚悟しておけよ!」
「クッソー! 人がいたとは……」
「娘さん、おけがはありませんか?」
「はい……どうもありがとうございました……」
「わたしの家で休みなさい。茶でも飲めば気持ちも落ち着くことでしょう。こっちです」
「わたしはこいつを衛兵に引き渡すまで見張ってますので、どうぞいってらっしゃい」
「すみません……」
わたしは占い師に連れられ、彼の樹の家に上がらせてもらった。
「ここは……」
「占い師の家なんてしょせん、こんなもんじゃよ。自然の中に暮らすのが運命なんじゃ。あんた魔女だろ? わしになんの用だい?」
「……時間がないので単刀直入に聞きます。昨日の夜、わたしたちと一緒に占いをしていた美男子とマントの人物の占い内容を教えてください。おねがい! とても大切な問題なの!」
「占い内容は他言無用が鉄則なんじゃが……。魔術師同士のよしみで教えてやろう。自分たちはドミニク・トマの子孫だそうだ。だが、霊能力はまったく持ち合わせていないと言ってた。実際にそのようだったぞ」
「そういえば……苗字が一緒だわ……」
「南から来たそうだ。ドミニク・トマには子供がいて、ベルナール城が他国に襲われたさい南に逃れた。その子孫が自分たちだと言っとったぞ」
「その人たちがベルナール王国にきた目的はなに? 復讐?」
「それは聞いてない。それよりも彼らが探しているのは、カラダに蛇の模様がある女じゃったぞ!」
一瞬、息が詰まるかと思った。
蛇の模様があるといえばわたしのことではないか!
「そ……その女を捜しだして何をするつもりなの?」
「そこまでは聞かなかった。わしが占わされたのはその女がどこにいるかということだ」
「そうなの……。彼らはなぜあなたにそれを占わせたの?」
「言い伝えがあるそうなんだ。ドミニク・トマが死んだあと、自分の子供の夢枕に立って告げた遺言だ」
「それは、どんな……?」
「千年経ったら自分の遺体を確認しろ。そのとき蛇の模様がある女を連れていけ。ルビーがすべてを語るだろう。ドミニク・トマは夫の王からもらったルビーの指輪をそれは大切にしていたそうだ」
わたしはとっさに指輪をはずしてポケットに入れた。
千年も前のお告げが、現在のわたしの身に呪いとして降りかかってきているとは。
「その遺言にはカーニバルのとき王子の花嫁選びをしろ。頭にベールをかけ試験をしろ。そしてカーニバルの占い師に蛇の女のことを訊けとあるそうだ。だからわしのところへ占いにやってきた。だが、わしはドミニク・トマなんて魔女は言い伝えでしか聞いたことがない。まして蛇の模様がある女なんてまったく知らない。おおかた、イレズミでもしているサーカスの女だろう。なにぶん千年も前のお告げだ。あたっているわけないさ」
「そ、そうですよね……」
どうしよう。
ぜんぶ当たってるわ。
「あんたはなんでこんなところまで? 昨日の占いの続きが知りたいのかい? おや? あんた、まさか……」
――トントン!
「はい!」
「ルイと申します。さきほど男は尋問を終え衛兵たちに引き渡されました。娘さんを……」
「おお、どうぞ、どうぞ!」
――カチャッ!
ルイが占い師の家のドアを開けた。
今日も平民の服装で変装をしている。
このような明るい場所で彼に会うのはまずい。
それに、占い師に蛇のことを暴かれたらもっと困る!
――ガタンッ!
「では、わたしはこれで! どうもありがとうございました!」
ルイの脇を通り抜けていそいで逃げようとしたが、腕をつかまれ動けなくなってしまった!
「…………!」
「これは失礼! お嬢さん、ひとりで帰るのは危険です。送っていきましょう」
「……そ、それはご親切に……。どうもすみません」
「占い師殿、いろいろとどうもありがとうございました!」
「おお! よく見たら、昨日の占いのお方か! 高貴な王家の方のようですね。あなたのお探し者はすぐ隣りにございますよ。でも、決して見つからない。なぜなら、恋は盲目だからです」
「恋は盲目? おかしなことを……。わたしはもう、2度と恋はしないと誓いました。ですからすべてを割り切って生きることにしています」
「あなたが恋をしている間は彼女は近づかない。あなたが恋をやめたら、傷つくので彼女は遠ざかる。意味がおわかりかな?」
「……わかりません。恋はもう、あきらめましたので」
「あなたがたを見ていて今わかりました! この呪いの意味が! あなたの恋は身を滅ぼす。じゃが、恋をやめたら呪いは解けない。まことに複雑な呪いですな。ドミニク・トマはたぶん、ほんとうはあなたの祖先に直接、呪いをかけたかった。だが、それが叶わずあなたの子孫の恋人に間接的に呪いをかけたのです。人は誰もが、愛する人が苦しむぐらいなら自分が苦しみたいと思う。これは愛することを知っている人間にかけた恋の呪いなのです」
「恋の呪い……。意味はよくわかりませんが、あなたの言葉を胸に刻んでおきましょう」
「きっとこの先、役に立ちますよ。そこのお嬢さんも、解けない呪いはこの世にない。なぜなら、愛は呪いに勝るからじゃ! 肝に銘じておきなされ!」
「はい……」
ルイに連れられ占い師の家を出たわたしは、平原を抜けカーニバル会場へもどってきた。
「娘さん、知らない人を信用して付いていってはいけませんよ?」
「はい……ほんとうにどうもありがとうございました。どうしてわたしが危ないとわかったのですか?」
「あなたはなにか、おまじないのようなものを唱えていたでしょう? それがわたしの耳になぜか届いたのです。こんな寂しい場所から若い女性の声が聞こえてくるのはおかしいと思い来てみたのです」
「そうでしたか……」
思わぬところで守りの呪文が聞いたようだ。
あの呪文は自分を助けてくれそうな人に作用する効果があるのだ。
「ところで、昨日は菓子を忘れていったでしょう? ノエルのおなかに全部おさまってしまいましたよ」
またノエル・トマ。
彼女はわたしにとって天敵だ。
「ほら!」
「もごっ……むぎゅっ……!」
いきなりルイに綿菓子を口に押し付けられた!
いつの間にか夜店で買ってくれていたようだ。
遠い昔の懐かしい甘さが口のなかにひろがっていく。
ルイの視線を感じた。
黒曜石のような瞳からくりだされる、心を射抜くような強烈なまなざしを。
「こんな……こどもだまし!」
わたしは口からすぐに綿菓子を離し押し返した。
愛される女になるわけにはいかない。
ルイに嫌われないと彼が危ない!
「だったら、おれがもらう!」
「あっ! ちょっと!」
ルイはわたしの食べかけの綿菓子をかじると、わたしの手を取り歩きはじめた。
はるか上に見える、彼の大きくて広い背中。
つながれた手と手が熱くなる。
そこからポウッと全身に炎があがってくるようなおかしな感覚が芽生えはじめる。
顔をふり、ルイのことを考えないように夜店に集中する。
けれど、考えないようにすればするほど、その熱がわたしの体中を焼き尽くしていった。
◇ ◇ ◇ ◇
そのころのオーロラは。
「なんだ、占い師は今日はお休みなのね! 残念だわー。そうだ! 昨日のアクセサリーをまた見てみようっと!」
「昨夜の娘じゃないか? よかった、また会えて! 聞きたいことがあって探していたんだ!」
「わあっ!」
うしろから声を掛けられびっくりした。
なんと!
昨夜と同じ男装のノエル・トマだった。
「あ、あ、あの……」
「なんだ? 指輪が欲しいのか? こんな子供だましでよければ買ってやろう!」
「ええー! ほんとにー! でもそれ、高いのよ……」
「高いといっても、そうでもないだろう? えっ! ほんとだ! 店主! 夜店でこの値段はないだろ! 負けろ!」
「へいへい……」
なんと、あのノエル・トマが店主に負けさせて指輪を買ってくれた。
それはピンクのガラスで出来た小さな指輪だが、自分の故郷にはこんなきらびやかな物は売っていない。
おこづかいでは足りない値段なので、昨日から見ているだけの商品だった。
だからうれしくて仕方がなかった。
「どうもありがとうございました!」
「娘はどこの家の者だ? 送ってやろう」
「いえいえ! わたしは旅行者でして! 家はうんと遠くの田舎です!」
「なぜ、こんな遠くへ?」
「カーニバルに参りました!」
「そうか……ところで、蛇の模様の入った女というのに心当たりはないか? 開かずの間や魔女の呪いについて何か知らないか?」
「……あの……その……」
「知っているのか?」
「呪いについての言い伝えなら、うわさ話として耳にしました。蛇の女の話は初めて聞きましたわ。他に詳細はわかりませんの?」
「情報はそれだけだ。わたしたちも何もわからなくて困っておる。マントの女はどうした? その女なら何か知っているのか?」
「いえいえ、ぜんぜん! わたしたちはなーんも関係ないですよ! なぜわたしにそのことを聞くのですか?」
「昨夜、占い師が言っておったんだ。探し人がお嬢さんたちだって!」
「あんのやろー……ゴホンゴホンッ! あんな老いぼれ……いや、ご老人の言う事なんか真に受けちゃだめですよ! わたしなんかただの田舎者なのに、お姫様だなんて! へそでわらっちゃうわよ! おーほほほほ!」
「まあ……たしかにそうだよな。わたしも現実主義者だから最初から占いや魔女の呪いなんて信じちゃいないさ」
「ちょっと! それって、わたしが姫に見えないってこと? 失礼しちゃうわ!」
「いやいや、決してそういうわけでは! あの占い師、わたしが聞いたことを何ひとつわからなかったものだから……。それをごまかすために、お嬢さんたちが探し人だなどと適当なことを言ったんだろう。その証拠に、今日は店をひろげていない。だけど、友人がかわいそうでな……。すっかり魔女の呪いを信じきってしまっている。失恋したのもそのせいじゃないかと……」
「そうですか……。でも……たしかウワサでは、呪いは王家にしか降りかからないはず。そのご友人ってもしかして、王家の方ですか?」
「い、いや! そ、そんなことはないぞ! 娘! 念のために名前を……あれ? どこいったー!」
――タタタタ、タタタタッ!
「ハアハア……ここまでくればもう大丈夫! じゃーん! 逃げ足だけは速いんだもんねー! それにしても……ノエル・トマもたいしたことないわね! ちょっと勘ぐっただけで動揺しちゃって! あーあ、こう人が多くちゃ、リンダたちとはもう会えないかもね。おとなしく宿舎で待つのが得策だわ。指輪も手に入ったし! 帰っちゃおうっと!」
◇ ◇ ◇ ◇
そのころのアーサーは。
「しまった! 2人とはぐれてしまったじゃないか!」
――トントン!
「あのー……」
「はい?」
肩をたたかれ振り向くと、なんと魔法使いのミシェルが立っていた!
「な、なんでしょうか?」
「アーサー様ではないですか? マルタン王国の?」
「ギクッ! もうバレてる! はあ……まあ……」
「わたくしミシェルと申します! あなたさまの詩がとても素敵で……素晴らしい才能です!」
「いやー! これはこれは! そうでもないですって!」
しばらく詩についての談義が続いた。
ミシェルの顔はマントでまったく見えない。
男にしては高めの声だった。
そうだ、呪いの話を聞いてみよう。
「あのー……今日、従業員からおかしな話を聞いたのですが……開かずの間に魔女の呪いがかかっているとか……」
「アーサー様は呪いに興味がおありですか?」
「いえいえ! 魔法使いのミシェルさんがいるなら、どうしてそれを解いてしまわないかと不思議で……」
「アーサー様にだけ特別にお教えしますが……」
「はい、なんでしょうか?」
「わたし実は、魔法使いの格好をしているだけで、魔法はまったく使えないんです」
「はあっ? なんで魔法使いのフリをしているんですか」
「事情があるんです。顔を見られたくなくて……。魔法使いのマントなら隠せるから都合がいいんです」
「そうですか……。何か事情がおありなんですね」
「はい、おおありです! だから呪いの解き方もわからないんです。占い師には目的の人物はゆうべ出会った娘たちだって教えられましたが、それだってどうだか……。占い師ってのはマユツバモノですからね? 言い伝えだってあてになりませんよ!」
「はあ……そうですか……」
ミシェルというのは話してみると意外ときさくで庶民的な若者だった。
これじゃあ、霊能力はなさそうだ。
またしばらく詩について語り合い別れた。
「リンダたちはどこに……あれ? あそこにいるのは、ルイとリンダじゃないか! しまった! 出会ってしまったのか! 仕方がない、見つからないように、あとをつけてみるか……」
わたいはルイから逃げるわけにもいかず、しばらく夜店のなかを一緒に歩いていた。
「お嬢さん、あなたの連れの女性には蛇の模様がありますか?」
「はあっ? な、なんですか、急に!」
「さきほどの占い師が昨夜、あなた方が去ったあとでそのようなことを言っていたんです。でも、さっきあなたがいたのに、占い師は蛇の女のことに言及しなかった。だから、もうひとりの娘さんに蛇の模様があるのかと思いまして……」
「あの……あの子はただの町娘ですよ? 蛇のイレズミしてるように見えます? も、もちろん……わ、わたしもちがうわよ!」
「そうですよね……。でも、占いにでも頼りたくなる心境なのです。3年前の失恋がずっと忘れられなくて……」
「……そうなのですか」
「それにしても……あなたはひどく話しやすい女性だな! こんな女性は人生で2人目です!」
「あ、あの……昨日の連れの方たちは? 今日は?」
「どこかにいるはずですよ。どこかな? あれ? お嬢さん? また、いなくなった……不思議な人だ……」
「リンダ! ここだ!」
「あっ! アーサー!」
ルイの目を盗んで逃げ出したわたしは、アーサーに呼ばれた。
いそいで彼の隠れる噴水の陰に一緒に身を潜めた。
ルイはわたしを探しながら夜店のなかへと消えていった。
「いったん、帰ろう。宿舎にオーロラがいなかったら、わたしがひとりで探しにくるから」
「ええ。わたしもすごい情報があるから、帰り道で説明するわね」
◇ ◇ ◇ ◇
帰る道すがら、アーサーにノエル・トマたちが蛇の模様の女を捜している話をした。
「たいへんな事態に巻き込まれたな。せめてもの救いは、ノエル・トマたちが占い師を信じていないところだが……」
「そうね。彼らが現実主義者で助かったわ。あら? あれはなに?」
従業員たちが仮面の入った箱を運んでいる。
「きみたち! それは?」
「明日のカーニバル最終日は、町中が仮面を被って楽しむのです。そのとき配る仮面ですよ!」
「なんだって! では、明日はお城の者も全員が仮面を被って作業をするのかい?」
「はい。お城中が仮面の人間で埋まり、それは面白いですよ!」
「その仮面を三つほど分けてもらいたいのだが……」
「どうぞ、お持ちください! たくさんありますから!」
「どうもありがとう!」
アーサーが仮面を3つもらい受け、もどってきた。
「リンダ、やったぞ! 明日はこの仮面を被り開かずの間へ忍びこもう!」
「グッドアイデアね! アーサー!」
アーサーと花嫁候補の宿舎へ行き、オーロラの無事を確認した。
オーロラを交え明日の計画を練ると、アーサーは自分の宿泊施設にもどっていった。
いよいよ明日、開かずの間でドミニク・トマの遺体と体面できる。
ドキドキしながらベッドで目をつむると、ルイのやさしげなまなざしが浮かんできた。
いけない。
わたしはここへ、呪いを解くためにやってきたのだ。
決して2度目の恋をするために来たわけではないのだから。




