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新たな学園生活 4

「先生?」

 振り向いて先生を見上げる。

 さっき言っていた頼み事についてここで話をするつもりなんだろうか。

「君に頼みたいことがあってね」

「はい」

「伯爵に手紙を書いてほしいんだ」

 予想外の言葉に目を瞬く。

「手紙、ですか? 父に」

 確認するリシアに先生が頷く。

「それはかまいませんが、私が出しても父が目を通すかはわかりませんよ」

 家令が見てそのまま処分するかもしれない。

 リシアの手紙をきちんと父が読む保証は無かった。

「どんな内容ですか」

「ん? 何でもいいよ」

(何でも?)

「じゃあ適当にご機嫌伺いの手紙を書いておきます」

 父親もリシアが学園にいることは知っていると思うし、この前の婚約破棄に絡めて状況を確かめる手紙にしようかな。

 手紙を出すなら全く触れないのはおかしいだろう。

 それでいいのか先生に確認すると黙って頷いてくれる。

「あとひとつだけ、手紙の端にこれを書いてくれるかな」

 そう言って先生が差し出した紙片には何かの数字が書いてある。

 何の数字か考えてみるけれど特に思い当らなかった。

 でも先生が出してくるのだから父の気を引く重要なものなんだろう。

 頭に刻みつけて先生に紙片を返す。

「手紙が突き返されたり、読まれた様子がなければ何度か同じように手紙を書いてこの数字を記載すればいいんですね?」

 内容が何でもいいということはこの数字を見せることが本命、リシアはそう解釈する。

 浮かんだ予想を先生に伝えればにっこりと微笑まれた。

「うん、良く出来ました」

 子供にするみたいに頭を撫でられる。

 褒められるのは嬉しいけれど子供ではないのでちょっと恥ずかしい。

「それとリシア」

 突然真剣な声で名前を呼ばれた。

「私が渡した魔道具は今持っている?」

「はい」

 ポケットから取り出して見せる。

「肌身離さず持っていてくれるんだ」

 真面目な顔を少し緩めうれしそうに笑う。

「貸して」

 言われるままに先生の手に魔道具を乗せる。

 留学中ずっと傍にあった通信用の魔道具。

 貴重な物なので他の人に見られないように鎖に通して持ち歩いていた。

 先生と繋がっていることにどれだけ支えられたか。

 卒業してからも持ってていいと言われたので同じようにして肌身離さず持っていた。

 先生がリシアの手を取る。

 そして留学前と同じように手に嵌めてくれる。

 右手の中指に嵌った指輪を見て少しの懐かしさと…、残念さを感じた。

「外さないで着けていて欲しい」

「でも…」

「これが魔道具だと気づく人はいないから大丈夫。

 必ず身から離さずにいて」

 いつになく真剣な表情と声。

 そうまで言われたら拒否することなんて出来ない。

 元から拒否するつもりもないけれど。

「わかりました」

 頷いて了承すると先生が身を屈めた。

「別の指にはそのうち、ね」

 リシアの耳元で囁いて指輪の嵌った指に口づけを落とす。

「…っ!」

 突然の行為に息を呑む。

 見上げる先生の目に映ったリシアは真っ赤になっているだろう。

 そうやって先生はリシアを困らせるのだ。


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