表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/47

新たな学園生活 1

中等部編から書いたら著しく糖度が足りなかったので、少し構成とサブタイトルを変えてみました。内容は変わりありません。

 留学先から戻って早一週間。

 リシアは家に帰らず学園で暮らしている。

 卒業したリシアが学園でいかにして過ごしているかというと…。

「先生、こっちの資料まとめ終わりました」

「ありがとう。 次はそこに積んである本を第一まで返却しに行ってもらえるかな」

「わかりましたー、いってきます!」

 手に持って行くのは不可能な量だったので台車を借りて教員室を出る。

 新学期の始まる前のこの時期は生徒も教師も数が少なくて、廊下は人通りが無い。

 寮に入っている生徒たちもほとんどが実家に帰っている。

 あの謎の婚約破棄の後、リシアも一度伯爵家に帰ったけれど、父親も夫人も姉も、誰もいなかったのを幸いと学園に戻ってきた。

 婚約と婚約破棄についてはスルーすることにした。どうせまともに説明するわけがない。

 必要な手続きと説明はあの誰かもわからない元婚約者がしてくれるだろうし、会わなくても問題ない。というか会いたくない。

 リシアは平和で自由な生活を満喫していた。

 学園で過ごすにあたって与えられたのは臨時職員という立場と寮の一室。

 すでに学生ではないリシアは先生たちが暮らす棟に入れてもらっている。

 臨時職員という雑用係は結構たのしい。

 学生生活の裏側ではこんな雑務があったのかと新しい発見がある。

 何よりも先生の近くにいられるのは嬉しかった。

『じゃあ、私と結婚しようか?』

 婚約破棄現場を見ていた先生が放った一言。

 先生はどこまで本気なのか。

(…本気なんだろうなあ)

 出会った頃のことを思い出す。

 先生は今まで口に出したことは違えず実現している。

 これだけ冗談でした、なんてことは言わないだろう。

 いいのかな、と思いつつリシアは嬉しかった。

 ずっと先生が好きだったので戸惑いはあっても側にいられる今は楽しいし幸せだ。

 高等部時代はずっと留学していたので久々に会った先生にときめきっぱなしだった。

(時々は話してたのにな)

 魔道具を使って通信したりはしていたけれど、会って、顔を見て話すのはまた違う。

 些細なことにドキドキしてしまってちょっと困るくらいだった。

 つややかな深緑の髪はリシアの留学前より少し伸びて更なる色気を醸し出している。

 片側に流して纏めた髪の一部が掛かる瞳は神秘的な新緑の色。明るい所で見たら金と間違えそうなほど明るい緑の瞳がきれいで、見惚れるっていうのはこういうことなんだと先生を見ると思う。

 女性的というわけではないけどキレイな人、という表現がぴったりだった。

 見つめていると時を忘れるほどの美しさだとリシアは思っているけれど、教員室ではあまり先生に注目している人はいないように見えた。

 普段は穏やかに微笑んでいるばかりなので周りは気が付かないのかな。

 そんな風に先生の美しさについて考えていたら廊下の角から飛び出してきたものに反応するのが遅れた。

「…っ!」

 誰もいない廊下に音が響く。

「ごめんね! 大丈夫?!」

 飛び出してきたのは小さな少年だった。

 制服を着用した少年は衝撃に座り込んでいる。

 赤くなった膝を見て猛省した。前は見ていたのに考えごとをしていたせいで音に反応するのが遅れてしまった。

 走る音にもっと早く気付けばこんな怪我をさせたりしなかったのに。

「ゴメンね、医務室へ行こうか」

「い、いえ、大丈夫です」

「ダメよ! ちゃんと手当しないと!」

 そのまま立ち去ろうと腰を浮かしたので肩を押さえて止める。

 打ち身は後から腫れたりする。血が出ていないからといって放っておくわけにはいかなかった。

「いえ、本当に医務室はいいです!」

 大げさにしないでくださいと何故か言い募る少年。

 強引に連れて行くことも出来たけどあんまりにも必死な少年にリシアの方が折れる。

 持っている物でせめて応急処置でもとハンカチを濡らして戻って来たら少年の姿は消えていた。

「あれ?」

 曲がり角の先を見ても少年の姿は無い。

 水場は100mも離れていないのに、いつのまに。

「そういえばあの子…」

 少年が結んでいたタイの色、あれは今年の新入生の色だ。

 入学式もまだなのに何で学園内にいたんだろう。

 不可解だった。

 機会があったら調べてみようと頭の片隅に記憶することにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ