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私の名前を呼ぶ人は(とっても短い婚約破棄 連載版)  作者: 桧山 紗綺
卒業後

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新学期 2

 新学期になるとリシアの仕事も落ち着いてきた。

 そうすると自分のことを考える時間も出来るもので。

 机の上に広げた便箋を見て考える。

 父親に送った手紙は今の所なんの反応もない。

 手元に届いたかどうかさえわからないので、次の手紙の内容に少し悩む。

 あと一週間ほどしても動きがなかったら次の手紙を出そうと決めた。

 そうと決まったら他にやることはいくらでもある。

 せっかくこうして学園内に留まることが出来たのだから、好きなだけ勉強をしよう。

 ついでにこの前の子爵家のことも調べてみようかな。

 父親が子爵家に話を持って行った理由がわかれば、少しすっきりできると思う。

 父親も、その夫人も姉も、リシアを嫌っている。

 自分たちの利になり、リシアが嫌悪するような縁談を持ってくると思っていた。

 だから違和感が拭えない。

 あの子爵家の人は善人に見えた。

 婚約中に他の女性と心を通わせるような心の弱い浮気性であっても、それを馬鹿正直に謝ってみせるような人。

 カーミラ様がいなかったらそのまま結婚させるつもりだったのなら、リシアはそれなりに幸せになれたかもしれない。

 だから、おかしいと感じる。

 父親は自分の利益になればリシアが何を感じていても構わないと思っていそうだけれど、夫人と姉はそれを許さないと思う。

 幼い頃に見た二人の目を思い出して僅かに身体が震えた。

 苦しめなければ気がすまない、苦しまなければ許さないという目。

「ああやだ、思い出しちゃった」

 ふるふると頭を振って脳内から追い出す。

 考えてもしかたないことは考えない。

「よし!」

 気持ちを切り替えるためにお風呂に入ることにした。



 湯船に浸かって空を見上げる。

 生徒用の棟とは違い露天になっているお風呂は大きさこそ変わらなくても贅沢に感じる。

「あー、落ち着く」

 誰もいないお風呂で身体を伸ばす。

 この瞬間だけは頭をからっぽに出来た。

 空に浮かんだ星を数えて星座を結んでいく。

 学園からこんなにきれいに星が見えるなんて知らなかった。

 今は余裕があるってことなんだろうな。

 必死だった過去を懐かしむことが出来るくらい。

「~♪」

 学生時代はほぼ個室のお風呂しか使わなかったけれど、大浴場も悪くない。

 露天風呂だから余計にそう思う。

 空があんまりきれいで、少し逆上せるくらい楽しんだ。


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