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桜の樹の下には桜さんがいました  作者: ミルミル1号
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入学式:美少女と熱い男

車で15分ほどの場所に、僕がこれから通うこととなる桜ノ森高校はある。

名前の通り、校舎の周りには桜の樹がびっしりと植えられていて、春になると地域の人達がお花見に来るほどだ。


それで、今日は母と秋人と僕で入学式に来たわけだけど…


「相変わらず大きいわねぇ…この学校。ほら春人、看板の前に立って。写真撮るから」

「ぼくもとるー!」

「秋人はいいの!今日はお兄ちゃんの特別な日なんだから」

「やだやだやだやだぼくもとるのー!!」

「秋人、スカートひっぱっちゃ駄目!」


34歳と5歳児の喧嘩に付き合ってられない僕は、校門のすぐ側に植えられている桜の根元に近寄った。

うわ、花びらが雪みたいに舞って、凄く綺麗。

桜ノ森は30年ほど前からあるらしいから、この桜の樹齢も30年以上なんだろうなー…



「ちょっと、そこの男の子!!」

「!?」


うっとりと桜を眺めていたら、背後から大きな声が聞こえてきた。

驚いて振り向くと、そこには桜ノ森の制服を着た女の子が立っていた。


「えーと…僕?」

「そう、あなた。今すぐその足をどけてあげて。この子が、痛がっているから」

「えっ」


うっかり他の人の足を踏んでいるのかと思って、足下を見た…けど、そこには何もなかった。

しいて言うなら、桜の根元くらいしか。


「何もないんだけど…」

「何もなくない!いいから早くどけてあげてってば」


女の子の有無を言わさぬ迫力に、僕はとりあえず女の子の横にジャンプした。


「これで、大丈夫?」

「…うん、もう痛くないって!ありがとう、どけてくれて」


あ、笑った。

怒ってたからわからなかったけど、この結構可愛い…


「春人ー、何やってるの写真撮るわよー!」


いつのまにか二人の喧嘩は終了したらしい。


「こちらこそ、ごめんね。じゃあ僕は母さんに呼ばれてるから、またね」


女の子は多分僕と同じ新入生だからまたすぐ会えるだろうと思ったので、とりあえず謝って名前は聞かないまま母のもとへ向かった。



結局僕と秋人は看板を挟んで一緒に写真を撮ることになった。

後から写真を見ると、その時の秋人は泣いて鼻水を垂らしていたせいでとてもマヌケな顔をしていた。





体育館に直行する母と秋人とは別れ、僕は昇降口へ向かった。

昇降口にはクラス番号が発表されている紙が貼ってあるため、凄い混みようだ。

僕は人混みが嫌いなので、少し離れたところからその紙を見ることにした。


えーと、日野ひの春人は…4組の16番か。

…誰か4組で知り合いのやつはいないか探してみようかな。



そしたら僕の真下に、見覚えのある名前。


16番 日野 春人

17番 姫路 翔太



「…姫路か」

「おっ!俺またハルと一緒かー!」


声があがったところを見ると、貼り紙のすぐ目の前に彼はいた。

姫路とは小学校1年の時からクラスが一緒の、いわゆる腐れ縁だが…まさか高校まで一緒になるとは。

彼のことは嫌いではないのだが、暑苦しいので苦手だ。

ちなみに松岡○造さんも少し苦手だ。


触らぬ神に祟りなし…はやく教室行って、ばれないよう机に突っ伏していよう。


そう思い貼り紙に背をくるりと向けた瞬間、

「よっ!卒業式以来だな、ハル。俺達、またクラス同じみたいだから一緒に行こうぜ!」

肩をポンポンと叩かれたので振り向くと、そこには人の良さそうな笑みを浮かべる熱血男がいた。



触られちゃったよ、祟り神に。

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