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水底呼声  作者: 宣芳まゆり
第4章 思惑の果て
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裏話

首都神殿の裏門を守る兵士に,黒の少年は一枚の金貨を握らせた.

そして,にっこりとほほ笑む.

兵士は少し悩んだ様子を見せてから,金貨を懐にしまう.

どうやら心得ているようだ.

「“聖女”に会わせて.」

こちらの要求を伝える.

しかし聖女と聞いたとたん,兵士の顔がこわばった.

「それは,……さすがに無理だ.」

「会うのは,僕と主人のカズリ様だけだよ.」

力のない子どもと女性の二人だけである.

「そんなに警戒しなくてもいいのじゃない?」

「まぁ,そうなのだけど.」

兵士はあごをなでる.

「聖女様は大切なお方だからな.カズリ様は,いったい何の用なんだ?」

「ライクシード殿下と婚約したことを自慢したいみたい.」

「へ? なぜ聖女様に?」

兵士は目を丸くする.

だがすぐに,

「あー,聖女様と殿下が恋仲だったからかぁ.」

と,納得した.

「ということは,聖女様に勝利宣言でもするの? 殿下は私のものよ,おーっほっほっほ?」

手振りまでつけて,彼女のものまねをしてくれる.

ウィルは思わず笑ってしまった.

「なら,金貨をあと二枚くれよ.警備隊長と話をつけてやるから.」

「ありがとう.」

少年は,カズリから預かった金貨をさらに二枚,兵士の手に落とす.

金貨の輝きに,兵士は表情を緩ませた.

「臨時収入だな.隊長も喜ぶぞ.」

神殿の兵士たちは職務に忠実ではなく,簡単にわいろを受け取る.

貧民街のうわさは本当だったらしい.

きっと後悔するよ,と黒猫は口もとに笑みを刻んだ.

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