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水底呼声  作者: 宣芳まゆり
第9章 帰還
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裏話 猫と馬と王子の関係性

馬のサウザーランドを川へ連れて行き,水を飲ませた.

それから翔はさりげなく首を動かして,あたりを探る.

みゆとウィルは川から離れた場所で,休憩を取っている.

この距離ならば,声を出しても聞こえないだろう.

水を飲み終わった馬に,問いかけた.

「お前って,ライクシード王子の馬?」

馬の耳が,ぴくんと動いた.

目が何かを期待して,翔を見つめる.

しっぽをぱったんぱったんと振って,自分の主人との再会を待っていた.

「やっぱり…….」

翔はがっくりとうなだれる.

バウスから馬をもらったときから,妙な気はしていた.

あの王子が善意のみで,馬をくれるわけがないと.

翔は城の馬場で,サウザーランドの世話もしていた.

そのとき,この馬はとても利口なので,王族の方にかわいがられていると説明を受けた.

だがまさか,ライクシードの愛馬だったとは.

つまりバウスは弟に馬を届けるために,翔たちを利用したらしい.

ウィルの嫉妬深さを考慮に入れずに.

とりあえずみゆとウィルは,サウザーランドがライクシードの馬だと知らないようだ.

しかし,みゆはともかく,ウィルに知れたらどうなるのか.

馬に罪はないという理屈は,あの少年には通じない.

きっと平然と…….

想像しただけで,背筋がぞわぞわした.

そもそも人懐っこいサウザーランドがみゆに甘えただけで,ウィルは本気で怒る.

彼女の前では優しい恋人の仮面をかぶっているが,実は相当にタチの悪い男だ.

だから翔はみゆとどれだけ親しくなっても,わざわざ他人行儀に古藤さんと呼ぶ.

みゆなどと呼んだ日には,にらみつける視線の強さだけで殺されそうだ.

さらにまちがえて彼女の体に触れでもしたら,謝罪する間もなく天国行きだろう.

はぁぁぁ,と長いため息を吐く.

気を取り直して馬の背をなでてやると,サウザーランドはうれしそうに顔を近づけてきた.

「あまり古藤さんにはくっつくなよ.」

しかもライクシードの馬だなんて.

「マジで命の保障はできないからな.」

馬刺しや馬肉ソーセージにはなりたくないだろ? とまじめに忠告したが,馬はのん気にしっぽを揺らしていた.

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