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第三話 あちらとこちら

 数日後。

 女は長たる男に呼ばれた。


「『外』に出る日取りが決まった」

 昼間でありながら薄暗い部屋。

 そこに二人はいた。

「はい」

 二人は道場のように広い部屋の中心にいた。

「それまでに『外』のことを少しは学んでおけ。ここと『外』は別世界だぞ」


 『外』とここは同じ場所でありながら違う場所。

 時の流れも。

 人も。

 考え方も。

 文明も。

 全ては()(こと)なるもの。

 異なる世界。

 でも、違う世界ではい。

 同じでありながら違う存在。

 まるで鏡に映る自分のように。


「はい。承知しております」

「三年前に『外』に行ったものが明日ここに来る」


 この世界から『外』に行くことは出来る。

 しかしそれは危険を伴うものなので10年に一回程度のことだ。

 『外』の人間のほとんどはこちらのことを知らない。

 人の数も多い。

 だから紛れることが出来る。

 しかしこちらは分かる。

 ここに生きる全ての人が知っている。

 こことは違う他の世界があるという事を。

 そしてここは人の数も少ない。

 過去にこの世界に来る『外』の人間のほとんどは望んでここに来たわけではない。

 この世界の境目にある『壁』、それが薄くなっているときにたまたまそこに居た人間が運悪く来てしまうのだ。

 神隠し、『外』ではそう言われている。

 こちらに来てしまった人間は危険が伴うが『外』の世界へ帰している。

 こちらの世界の記憶を封印して。

 危険を恐れ、どうしてもと言ってこちらに残っている『外』の人間も何人かはいる。

 その人間達は受け入れられ『外』のことを知りたい、学びたい人たちに色々な話をしている。


「はい」

「その者から出来るだけの事を学べ」


 『外』から人間から学び『力』のあるものが『外』に行くことが出来る。

 『力』が無いと世界の狭間にある『壁』を越える事は出来ない。

 女は『力』はある。

 しかし、『外』に興味が無かったため『外』のことをほとんど知らない。

 知らないままでは『外』に行くことはできない。

 出発までの僅かな時間の中で女はそれを学ばねばならない。

 

「はい。ありがとうございます」

 女は男に頭を下げた。

「油断するなよ」

 男はそう言うと去っていった。



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