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第二話 洋館

 ある昼下がり。

 (おもむき)のある洋館の一室で、二人の青年が並んで正座をしている。


 二人の内一人は黒目、黒髪で、年は18歳、名前を高泉(たかいずみ)(そら)という。

 もう一人は茶髪に襟髪だけ髪を伸ばしていて、年は19歳、名前を松下(まつした)(りく)という。


 二人の前には仁王立ちした女性が一人。

 その顔は呆れきっているといっても過言ではない。


 その女性は黒髪を背中の中ほどまで伸ばし、今はそれを一つにくくっている。

 名前を二宮(にのみや)かおり、年は青年二人と同じ位に見える。

 その手にはなぜか金属バットが握られている。


「貴方達は何時もいつも同じ事してて…飽きない?」

 呆れ顔そのままでかおりが言った。

「…すいません…」

「いや、別に…」

 空は俯き加減で、陸はそっぽを向きながら返事をした。

「まったく。ここは貴方達の遊び場じゃあないのよ」

 かおりは周りを見回しながら言った。

 周りは所狭しと物が散乱し、缶や瓶が転がり食べかけのお菓子や料理がテーブルの上などに放置されていた。


 つい一ヶ月前は綺麗な部屋だったのだ。

 しかし、かおりが居なくなると途端に散らかし放題となる。

 空は片付けられるし、自分の部屋はきちんとしているのだ。

 しかし陸は、散らかっているほうが落ち着くらしく空が片付けることを禁じているのだ。

 空は気が弱く、陸に強く言われると引いてしまうので、その結果空の部屋以外の場所は一ヶ月で悲惨なことになる。

 かおりは最低月一回はこの家に来るので、大抵かおりの雷が二人に落ちるのだ。


「分かっては居るんですが…」

 またしても陸を止められなかったことを悔やむ空は、苦笑いになっていた。

「いいじゃねえか、ここは俺達の…」

「…何か言った?」

 かおりがにっこりと微笑みながら、バットを陸の目の前に突き刺した。

「な、何も言ってません…」

 陸の顔色が一瞬で変わった。

「よろしい、では…片付け開始」

 陸の顔色に満足した様子でかおりが言った。

「はい」

 空は素直に頷くと立ち上がり片づけを始めた。

「まったくなんで…」

 変わったままの顔色で、陸は小声でぶつぶつと小声でいまだ何か言っていた。

「ん?」

「いえ、何でもありません」

 かおりは今までに無い笑顔で陸と視線を合わせた。

 すると陸は冷や汗を掻きながら立ち上がり空の下へと向かった。


「何回目かな?ここがこうなるの」

 二人が、片付けているのを見守っていたかおりが言った。

「あいつらも懲りずに良くやるな」

 すると死角になってた物陰から一人の男性が出てきた。


 スーツをきっちり着込んた三十代半ばのその男は、名前は田村(たむら)正和(まさかず)という。


「本当に。毎回こうなのに、改善する気がまったく見られないし」

 陸も片付けられないわけではない。

 空よりも片付けるスピードは速いのだ。

 空は一つ一つの物を吟味し考えるのでゆっくりと、しかし丁寧に片付いていく。

 一方の陸は即断即決でごみとそうでは無い物とを分けていくため、時におかしな片付け方にはなるが物が無くなるのは速いのだ。

「懲りないな、あいつら」

 田村はため息をつきながらかおりの隣に立った。

「お前もな」

 かおりはそんな田村を冷たい眼差しで見た。

「…ハハハ」

 そんな眼差しを受け、田村の頬には汗が一筋流れた。

 実は田村は10日ほど前からこの家に居たのだ。

 そしてこの男は大人数で騒ぐことが大好きなのだ。

 なので、この家に来た日から昨夜まで知り合いを集めてのどんちゃん騒ぎを起こしていたのだ。

「見逃すと思っていた?」

 金属バットの矛先が田村に向いた。

「…いいえ」

 田村は、陸と同じように顔色を変えた。

「では、始めましょう」

「は~い」

 かおりの言葉に田村もまた素直に従った。

「さて、私も手伝いますか」

 かおりも三人の後に続いた。


二束のわらじは得意じゃないのですがね…

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