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雨ノ日  作者: まなつか
2/2

後編

前編の続きです。

「おはよう。杉山君」

「え……。あ、あぁ。おはよう」

 次の日の朝教室に入ってくるなり元村さんは声を挨拶をしてきた。

「今日、私日直だから。宿題、早く出してね」

「お、おう……」

 そんなギクシャクした会話をした。周りから見ればさぞかし不自然だっただろう。変態男子と純情女子だ。不釣合いにも程がある。

 案の定、山々が放課になってすぐに声をかけてきた。

「お、おまえ……。いつから元村さん攻略ルートに入ったんだ……?!」

「なんだよ。攻略って……」

 こいつはやっぱり馬鹿だ。

「いや、急に話すようになったからさ。なにかあったのか?」

「あぁ。昨日友達になってと言われたけど」

「……はぁ」

 山々はやれやれとでも言いたそうにため息をついた。こいつ、最近また振られたらしいな。ざまあ。

「おまえ、いいなぁ。リア充死ね」

「ちょ、待て。俺はリア充じゃねえって! 別に付き合ってないし!」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「怖いって! 怖いから!!」

 その放課中ずっと山々は呪詛の言葉を言い続けていた。おお、コワイ、コワイ。


 そして放課後。

 俺はとっとと家路に着こうとしていた。その時、後ろから声をかけられた。

「杉山君! 待って!」

「あれ? 元村さん。どうしたの?」

「あの……。一緒に帰らない?」

「え? 一緒に?」

 なんでこうなるんだ。また山々に変に思われちまう。

「そう、一緒に」

 彼女は顔を赤らめながら一言一言はっきりといった。

「なんで?」

「なんでって……。雨が……振りそうだから」

「え?」

 俺は空を見上げる。今まで気付かなかったが、厚い雲で覆われていた。今にも雨が降り出しそうだ。

「もしかして、傘ないの?」

「……うん」 

 今日は、運がいいことに折りたたみ傘が入っていた。俺はそれを取り出すと行こうか。と声をかけた。

 肩を並べて道を歩く。

「あの……」

「うん?」

 俺はいつもより近くに見える元村さんの顔にドキドキしていた。自分より少し背が小さい。

「雨、降り始めたよ」

「お、おう」

 俺は慌ててカバンから折りたたみ傘を取り出し、さした。そのとたん、大粒の雨が降りだした。

「うわあ……すごい降ってきたなあ」

「そ、そうだね……」

 俺らはひとつの傘に二人入っている。密着状態だ。心臓がドキドキする。あっちにも音が届きそうだ。

「……」

 どちらも何も言葉を発しない。ただ、雨が傘に当たる音と歩くたびに足元からぴちゃぴちゃと音がするだけだ。俺は傘をなるべく元村さんが入るようにした。自分が濡れても構わなかった。

 そして、しばらく歩いた頃

「それでは、私ここなので」

 一つの家の前で止まった。元村さんは傘から抜けて家の方へ向かって走っていった。

 そして、軒下で

「ありがとう。杉山君」

 と言い、手を振ってくれた。俺も振り返すとにっこり笑って家のドアを開け、入っていった。

 俺はしばし、立ち尽くしていた。

「さて、帰るか」

 一言つぶやいて歩き出した。

 空いている左側がやけに寂しく思えた。


 

 そして、一週間が過ぎた。

 俺はその一週間は普通に過ごし、勉強していた。元村さんとは、普通に友達として接していた。あの雨の日以来、何も起こっていない。

 だけど、俺は知っている。

 こんな平凡な日々も、どこかで壊れるのだと。

 しかし、今日――こんなに早く壊れてしまうなんて思いもしなかった。


 今日は晴れだった。

 天気予報でも確実に晴れと言っていた。

 俺はあの日以来、天気予報を必ず見ている。録画までしているほどだ。……山々には『おまえ、それ病気』とか言われたが、天気予報は必ず見ていた。

 なぜか――それは自分でもわからなかった。

 

 そして、放課後。

 俺はさっさと帰って勉強しようと思っていた矢先、元村さんがやってきた。

「あのさ、これから時間ある?」

 彼女はそんなことを訪ねてきた。

「あぁ、あるよ」

「じゃあ、今から屋上で」

「わかった」

 そんなふうに軽く言ったが、心は雲に覆われたように複雑だった。

「よぉ、杉山。んー? んんんんー?? 死にてえみたいだな」

 山々が殴りかかってきた。俺は軽くかわし、へへーんとばかにすると教室を飛び出して屋上へと向かった。

 変わってしまう、俺らの関係が―――


 

 俺は上がる。階段を。一段一段踏みしめて上がっていく。そのたびに気分がウキウキする。

 俺は屋上のドアの前で立ち止まる。一回呼吸を置いてから深呼吸をする。

「……もういいかな?」

 俺はゆっくりとドアを開ける。ぎぎぎぎと錆び付いたドアが開く。

「杉山君?」

 ドアのちょっと行ったところで元村さんが立っていた。風によって肩まで伸びた髪がしなやかに揺れる。

「……」 

 俺はゆっくりと彼女の方へと向かう。

「元村さん。話って?」

 俺は彼女に尋ねる。彼女は頬を赤らめながら――

「これっ! 受け取って!」

 彼女はいきなり手に持っていた箱を俺の方に差し出した。

「えっと――」

 その箱をゆっくりと見る。アニメの絵柄が書いてあった。

「これは?」

 俺は心臓がドキュリと嫌な音を立てているが、顔を上げて聞いた。

「杉山君、ギャルゲー好きって言ってたから……。その……、贈り物に……」

 俺はなんて答えればいいのかわからなかった。

 俺はあの時嘘をついた。女子を遠ざけるために。だけど、それでも俺のことを好きでいる人がいたんだ。

「でもさ――」

 その時、彼女が口を開いた。目が合う。

「杉山君って、本当はギャルゲーなんてしないんでしょ?」

「え――?」

 心臓がドキッとする。

「山々君から聞いたの。それに、そのゲーム新作だから普通だったら何かしら反応を示すはず……」

「……ごめん。俺、嘘ついてた」

「やっぱり。でもなんで?」

「女子が――苦手だったんだ」

「……聞きたいな。どうして?」

 優しく、俺を包み込むように彼女は問いかけた。俺はずっと心のなかにしまっていた何かを言いたくなった。どうしてかはわからない。

「去年の夏だった――」

 俺はフェンスにもたれかかりながらポツポツと話し始めた。


 俺はある人が好きになった。その子はいつも、誰にでも優しい。

 俺は次第にかれていった。そして、話しかけていくようになった。

 しかしある時彼女は俺に対してこう言った。

「ねぇ……。私の事好きなら、やめてくれる?」

 その一言で全てが終わった。

 俺の世界が絶望に満ちた。バラ色の人生から転落して灰色の人生だ。

 俺はそんな日々の中で毎日、何が悪かった。俺のどこが悪いんだと自分を責め続けた。

 そして、夏が終わり10月。俺は思い切って自分を変えることにした。そう――変えるんだ。

 まず、塾に入った。頭を良くすれば少しはマシだろう――と。

 さらに、スポーツを始めた。サッカー、野球、バスケット……。流石にこれは長続きしなかった。しかし、今でも筋トレはしている。

 そして、最後に……。女子を遠ざけた。

 何故か。それは簡単だ。俺の人生を灰色にしたのは全て女子だからだ。

 この世の女を全て恨んだ。

 一年生が終わる頃にはクラスの女子は誰も話しかけなくなっていた。別に寂しくも何もなかった。


 俺は一気に語ると軽くため息を付いた。

「……はは。なんだかみっともないな」

 自虐する。

「……そうだったんだ。――だけどさ。私には接してくれたじゃん」

「それは――」

「ここにだって来てくれたでしょ?」

「……」

「あのね。私、杉山君のことが好き」

「え――?」

 俺は今、「なんて……?」と訊こうとしたが、その瞬間彼女が俺を抱きしめてきた。手に持っていたギャルゲーの箱がバサリと落ちる。

「……好き……なんだ。これでも……私を……女子として……嫌うの?」

 俺はそっと彼女を抱きしめる。

「違う。嫌ってなんかいない。出会ったあの日、友達になったじゃん」

 俺は本心をそのままに言った。

「そっか……。そうだよね」

「だけどさ、今はこうやってお互いを抱きしめている。これってもう……」

 友達じゃない。

「好きだ。俺も、好きだよ」

 恋人だ。

「俺は、もう……女子なんて嫌わない」

「どうしてそう思うの?」

「だって……。こんなに素敵だなんて思ってもなかったから」

「ダメ!」

「え!?」

 彼女はそう叫ぶと俺を突き飛ばした。

 おいおいおいおいおい!? いったい何が?!

「浮気は許さない!」

「違うって!」

「……ふふっ。冗談」

 彼女は笑顔でそうつぶやくと帰るね。と言って屋上を出て行った。

 俺は、今あったことが現実なのかそうでないのか……。そんなことをぼんやり考えながら立ち尽くしていた。

 ただ――。これからは、今までとは変わった、楽しい人生になりそうだな。

 そんな期待に胸を踊らせているのでもあった。


 次の日

「すーぎーやーまーくーん☆」

「や、山々……」

「ぜーぇんぶぅー、聞いてたよ。見てたよ」

「えぇ!?」

 こいつ、ストーカーだったのか!?

「うふふふふふふふふふふふふふふふ」

 山々は気味悪い声をあげる。顔が見事にひきつっていた。

「ま、まて。そうやってその後ろに隠している鉄パイプで何をする気だ」

「死ね」

 それで殴りかかってくる。

「うわっ!?」

 俺はさらりと横に避ける。

「おのれえええええええ! なんでっ! (ガッ)お前が(カキーン)俺より先に(ガシャーン)付き合ってるんだよ!?」

「理不尽だー!」

 俺は軽やかに攻撃をかわしつつ、笑いながら廊下を駆け回っていた。

 ちらりと教室を見る。元村さんが笑いながらそれを見ていた。助けろよ。

「杉山ァァアアア!」

 山々の本気の怒号と共に、俺らの笑い声も学校中に響きわたっているようだった。


こんにちは、まなつかです。

いや、無事完結できてよかったです。

これも周りの友人らのおかげです。

そして、これを読んでくれたみなさんにも感謝です。


さて、どうでしたか?

ハッピーエンドです。


しかし、なんかこれを友人に読ませた後

「お前、久しぶりに……いや、初めてまともなの書いたな」

とか言われました。

( ゜∀゜)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

笑い飛ばしました。鬱展開なしとかきつい。


イラストがものすごくつけたいですが、自分の絵はひどいものです。

クラスの女子に上手い人がいるけど、協力してくれませんよね。普通は。

後輩にも一人いますが、こっちもこっちです。

……諦めるか。



感想をいただけると、大変喜びますので、馬に餌をあげるような感覚で与えてみてくださいね。

それでは、また会いましょう。

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