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雨ノ日  作者: まなつか
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前編

「初めまして。杉山健二です。趣味はギャルゲです。好きなモノは女の子です。よろしく」

 僕は新学期早々自己紹介でそう言った。クラス全体が引いていくのがわかる。

 男子はうわぁ……こいつ……とささやいている。

 女子は何こいつきも。と騒いでいる。

「……計画通り」

 俺はそう言うと自分の席についた。そしてふぅとため息を軽くつく。

 なぜ、こんなことを言ったのか。俺はもともとギャルゲなんてしない。そして、女子は大嫌いだ。大嫌いだからこそ近づけないようにこんなことを言う。女子は、男子が近づいて行っていいものではない。清らかなんだ。

 ――勝手にそう信じていた。


「おい、お前。なんであんなことを言うんだよ。黙ってりゃモテんのによー」

 そのの次の休み時間になって去年からの悪友、山々順が話しかけてきた。

「いいんだ。これで」

 俺は机の角に目をやりながらそう答えた。

「お前、去年あんなことがあったぐらいでへこむなよ」

「へこんでなんかない、ただ……」

「ただ……?」

「なんでもない。俺はもう恋なんてしない。勉強に専念するんだ」

 口で言いつつもなんだか変な感じだ。

「おぉ。そうかいそうかい。勝手にやっとけ。俺は早速女子にこえかけてくるぜ」

「そっちこそ勝手にやってろ」

「あはは。無理すんなよ」

 そう言って悪友は一番目に付く女子のグループに突っ込んで行った。俺はそういうところだけ、男らしく思えた。そして彼は数秒後、しょぼくれた顔をして帰ってきた。

「俺も勉強するわ」

「あぁ」

 そんなことをしているうちに中学二年生、始めの日は終わってしまった。



 次の日

「ねぇ、健二君。今日、勉強教えてくれない?」

 クラスの女子の山風って奴がやってきた。明らかに勉強が目的でないのがわかる。シャープペンシルさえ持ってきていないからだ。それに昨日の自己紹介を聞いていなかったのか? それと名前で気安く呼ぶな。俺はそんなことを思ったが、口には出さず適当に答えた。

「あぁ、ごめん。今日俺塾だから」

「そっか……」

 塾と言うのは本当で、俺は去年から塾に入っている。その甲斐あってか定期テストでは大体上位の方に入っている。だから名だけは一人歩きをして、こうやって勉強教えてくださいとやってくる奴がいるのだ。

 山々の話によると、大抵の女子は俺自体が目的らしい。迷惑な話だ。

「そっか。じゃあ明日は?」

 明日は塾はない。どうしようかと一瞬迷ったが、昨日作った自分のキャラ設定を思い出し――

「明日は……その……あ、ぎゃ、ギャルゲーをやるんだ」

 ――無理に答えた。

「へー! 本当にやってるんだ! イメージにあわないけど……」

 不審そうな目を向けてきた。

「ははは……」

「なんてゲームやってるの?」

「え……?」

 答えられねェ―――?! つか、一本も持ってねーし!

「す、すくーるみずぎ大国かな……」

「聞いたことないけど……ブランドは?」

「ブランド……?」

 服みたいだな。ってか今俺がつけた名前の奴にブランドなんてねぇー!

「よ、よく憶えてないよ……」

「同人ゲーム?」

「ってか、なんで山風さんはそこまでそっちのことに詳しいの?」

 俺がそう答えると彼女は俺から目をそらして何故か赤面しながらつぶやいた。

「だって……」

 しかし、そう言うと黙りこんでしまった。

 後日山々に聞いてみると奴曰く『好きな相手の好きなもんに合わせんのは基本だろ』だとよ。


 そうして、俺はクラスの女子に多々話しかけられるもなんとかかわし、4月を終えた。

「ぬはーっ。疲れたよ。俺」

「あはは……俺もだ」

 目の前では全戦全敗の悪友が暗い顔をしていた。どんだけ振られたんだ?この一ヶ月で。

「ざっと30だぜ」

「ほぼ一クラス分じゃねーか!?」

 あほだ。そこまで振られるならもう諦めればいいのに。

「今月は3階にいるやつに声をかけてくるぜ」

「いってらー」

 アホはほおっておいて、俺は英検の勉強に取り掛かった。来月、2級を受ける。

 ―――とその時、俺の横にカラカラと鉛筆が転がってきた。

 今時鉛筆なんて珍しいな。そう思いつつも俺はそれを拾った。

 『元村 里紗』と丁寧に文字が書いてあった。

「それ……」

「え?」

 俺が鉛筆から顔を上げると目の前にその鉛筆の持ち主、元村さんがいた。

「うわっ?!」

 急にで驚いた。

「え?! あ、ごめん……」

「あ、あぁ。これ、元村さんのか……。はい」

 俺は彼女に鉛筆を返す。

「うん。ありがと」

 俺は目線を彼女から問題集に向けて、勉強を再開した。やれやれ。やっと効果が出てる奴がいたか。さっきの元村さんの顔。かなり嫌そうな顔をしてたぜ。……たぶん。

 

 放課後。俺はいつもさっさと帰っている。部活には所属していない。

 春から初夏にかけての暖かい風が、下駄箱を出た、疲れた俺の身体を和らげる。

「はぁーっ」

 俺は大きく深呼吸をする。こうすると肺の奥まで新鮮な空気が行き届くようだ。

「元村さん……か」

 俺は今日鉛筆を拾ってあげたクラスの女子の顔を思い出す。綺麗な子だったな。

「どうしたの? 杉山君。私に用?」

「え……?!」

 心臓が飛び上がるようだった。目の前には元村さんがいた。なんだか不審そうな顔をしている。

「あ……。ごめん。変なこと考えている最中だった?」

 彼女は初っ端から訳の分からないことを言い出した。

「は、はぁ?」

「あ、ちが……! 考え事している最中だった?」

「あ……ええ」

 なんだかギクシャクする。何故か久々に心臓がドキドキする。

「あのさ……さっきは、ありがとう」

「いや、いいよ。もうさっきお礼言ってもらったし」

「そ、そうだったね……」

 俺達は目が合わせられないでいた。普通の女子とは違う。この娘は。そんな気がした。

「あのさ……。友達に……なって欲しいんだけど……」

 彼女は下を俯きながらそういった。

「ん? 友達?」

「そう。友達」

 意外だった。今までの女子はいきなり交際を申し込んでくる奴が大半だったからだ。それなのに元村さんは友達になろうと言ってくる。

「え……うん。いいよ」

「ありがとう」

 なんだか、心が軽くなっていくようだった。

 そうか、友達か……。それなら悪くはないな……。

 二人の間に静かな、心地良い春の風が吹いていた。

ども、まなつかです。


さて、いかがでしたでしょうか。

なんかいいよーな雰囲気がしてますね。

短編小説なんで、展開は早めになっています。あしからず。


この作品は、友人に依頼されて、即日で作り上げたものです。

「おい、まなつか」

「あぁ?」

「お前、小説書いてこい」

「いいよ。ジャンルは?」

「スクールデイズみたいのじゃない、学園モノで」

「あいよ」

そんな感じで書きました。

軽いです。


次の日早速持って行くと別の友人に取り上げられました。

そして読まれたあと、

「面白い。夏ノ風よりずっといい」

「ゑ…」

おい。


それで、後編はちょっと調整があるので遅れます。

結末が…。

(予定)通りになればいいですが…。


それでは、またノシ


 追記:2010/12/03 文章を改稿しました。

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