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Steel Cherry Blossoms  作者: 筆まぶし


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【胎動】閉ざされた道と朝の図書館

新シリーズ『Steel Cherry Blossoms』、真の開幕です。

舞台は1990年代後半、就職氷河期のどん底。

地元の進学校に通いながらも、高校2年の冬、家庭の経済事情から大学進学の道を断たれた少年・舘崎優たてさき ゆう

手に職のない普通科の彼に、学校も社会もあまりに冷酷でした。

しかし、優の胸に灯った反骨の炎は、周囲の大人たちの想像を遥かに超える、孤独な戦いへと彼を突き動かします。

「……すまない、優。今のうちの家計じゃ、大学の学費を払ってやれないんだ」

 高校2年の冬。実家の居間で父親から告げられたその言葉が、舘崎優たてさき ゆうの青春を終わらせた。

 通っているのは地元の進学校。周囲の仲間たちが当然のように予備校や志望校の話題で盛り上がる中、優だけが一人、別の現実に放り出された。

 進学はできない。ならば就職するしかなかったが、時代は「就職氷河期」のどん底。技術が身につく商業高校や工業高校ならまだしも、優がいるのは普通科の進学校だ。特別な資格を持たない高卒の若者に、民間企業が差し出す求人などどこにもなかった。

 進路指導の席で、優は担任の教師に静かに告げた。

「民間は諦めます。公務員試験を受けます」

 その瞬間、教師が浮かべたのは、憐れみと呆れが混ざった冷ややかな失笑だった。

「公務員? 舘崎、今の公務員試験の倍率を知って言っているのか? 進学校から高卒で公務員浪人なんてことになったら、学校の進学実績に傷がつくんだよ」

 大人たちは誰も彼も、自分の保身と数字のことしか考えていなかった。

 高校3年になり、優は授業中に一人、公務員試験の過去問を解いていた。当時の国家公務員Ⅲ種試験の倍率は、およそ**「64倍」**。1クラスに1人受かるかどうかという、目眩めまいがするような超難関だ。学校の授業を聞いている余裕など1分もなかった。

「おい舘崎! 誰の許可を得てそんな内職をしている! 受験しないなら授業の邪魔だ!」

 教壇からの怒声が教室に響く。クラスメイトの視線が一斉に優に集まった。

 普通の高校生なら、ここで縮こまり、教科書を開き直すだろう。だが、優の芯はすでにはがねのように硬かった。

「……それなら、もう授業には出ません」

 静かに、しかしはっきりと告げ、優は荷物をまとめて席を立った。背後から聞こえる教師のヒステリックな声を無視して、教室の扉を閉めた。

 それからの毎日は、孤独な戦争だった。

 朝、制服を着て家を出ると、優は学校ではなく、町の図書館へと向かった。開館前の凍えるような空気の中、入り口の前で参考書を抱えて待つ。9時の開館と同時に席につき、閉館のブザーが鳴るまで、周囲の目も気にせず、ただひたすらに64倍の壁をぶち破るための猛勉強を続けた。

「どうせ挑むなら、普通の役人じゃつまらない。誰も行かない、変わった仕事がしたい」

 参考書の隅に見つけた『皇居護衛隊(皇宮護衛官)』の文字。

 格式高く、その任務の特殊性は他のどの公務員とも一線を画していた。

 誰も助けてくれないなら、自分の身一つで特別なプロフェッショナルになってみせる。

 朝の図書館の静寂の中、ページをめくる優の瞳には、冷たい社会への激しい逆襲の炎が灯っていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

高校2年の冬の宣告、学校の冷酷な対応、そして「それなら授業に出ません」という優の圧倒的な行動力。これぞ「舘崎優」という男の原点です。

次回第2話、朝から図書館にこもり続けた優が、ついに64倍の超難関試験に挑みます。そして、この「皇居護衛隊」という選択が、どのような巡り合わせで自衛隊、そして「空のプロフェッショナル(パイロット)」へと繋がっていくのかを描きます。

「優のハングリー精神と反骨心が最高に格好いい!」「当時の学校のリアルな描写がリアルで引き込まれる!」と思われた方は、ぜひ応援をお願いいたします!

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