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パレット  作者: 青原朔
33/36

ep1.須川健

改めまして、中編です。

ここからはエピソードとして残していきます。

今まであまり語らなかった所ですが、自分はまだ小説家名乗るに値しないと思ってます。

人の感情、自分の生きてきた経験、人とは何か。

それを色と識別しこのパレットに載せて書いてます。

なので、コレを読む際は僕が何をみて何を考えてるかなども見てもらえると嬉しいです。

須川 健


 白い天井だった。


 見慣れた色。


 見慣れた匂い。


 消毒液と、安っぽい空調の風。


「……生きてるか」


 須川健は、ぼそりと呟いた。


 起き上がろうとして、右肩に鈍い痛みが走る。


 凍傷。

 軽度。


 手首に残る違和感。

 拘束の跡。


 頭に触れる。


 濡れている。


「……水鉄砲かよ」


 ため息が漏れた。


 本物の弾丸より、

 あれの方がよっぽど屈辱的だった。


 拘束。

 敗北。

 無力化。


 しかも急所を一切狙わない。


 ――完全な“制圧”。


 負けだ。


 言い訳の余地もない。


 天井を見上げたまま、思い出す。


 氷柱。

 軽い銃声。

 水。

 そして、


 「チェックメイト」


 あの少女の顔。


「……ガキの顔して、やるじゃねぇか」


 正直な感想だった。


 怖さはない。

 殺意もない。


 なのに、

 勝てる未来が一つも見えなかった。


 ああいうのが一番厄介だ。


 理屈じゃない。


 “才能”だ。



 病室のドアが開く。


 無言で資料を置いていく局員。


 目も合わせない。


 須川はそれを手に取った。


【夜祭り戦闘報告】

【未所属能力者との交戦】

【戦闘不能:須川健】


「……書き方ァ」


 露骨すぎる。


 ページをめくる。


 黒の出現数。

 捕獲数。

 被害。


 数字。


 数字。


 数字。


 その中に、手書きのメモ。


【未所属能力者(3名)危険度上昇】

【監視対象強化】


 名前が並ぶ。


 神木ハル

 水卜葵

 火野火憐


「……子供じゃねぇか」


 思わず呟く。


 昨日、目の前で見た。


 戦ってた。


 命懸けで。


 必死に。


 あれは「危険物」じゃない。


 ただの――


「……ガキだろ」


 書類を閉じる。


 心のどこかが、わずかに引っかかった。



 午後。


 屋上。


 須川はいつもの癖で、銃を分解していた。


 パーツを一つずつ確認する。


 指の感覚を確かめる。


 仕事前のルーティン。


 ……のはずだった。


「……来るなよ」


 ぼそっと呟く。


 言霊なんて信じない。


 でも。


 足音がする。


 軽い。

 遠慮のない足取り。


 そして。


「やっほー」


 最悪の予感が当たる。


 振り返る。


 屋上の扉のところ。


 昨日の少女。


 美波。


 後ろに、腕を組んだ男。


 久我。


「……なんでいる」


「教えてもらいに来た」


「何を」


「狙撃」


 即答。


 須川は頭を抱えた。


「俺は教官じゃない」


「でも強いじゃん」


「だからって来るか普通」


「来た」


「……」


 久我が横から言う。


「すまんな」


「止めろよ」


「止まらねぇんだよこいつ」


「でしょ?」


 誇らしげに言うな。


 須川は長く息を吐いた。


 空を見る。


 青い。


 平和だ。


 昨日まで撃ち合ってた相手が、

 今日は弟子面して立っている。


「……世界、どうなってんだ」


「ねぇ」


 美波が近づく。


「なんで心臓狙わないの?」


「……は?」


「昨日もそうだった」


 須川は少し黙る。


 そして銃を組み立てながら言った。


「撃ち抜いたら終わるだろ」


「うん」


「終わらせるために撃ってねぇんだよ」


 少女が、目を丸くする。


「止めるために撃つ」


 それだけ。


 単純な話。


「武器はな、殺すためだけの道具じゃない」


 美波の目が、わずかに揺れた。


 その反応を見て、

 須川は気づく。


 ――ああ。


 こいつも同じか。


 撃てなかった側の人間。


「……一回だけだぞ」


「ほんと?!」


「うるせぇ」


 銃を構える。


 スコープを覗く。


「姿勢」

「呼吸」

「トリガーは“引く”な。“置け”」


「置く……?」


「余計な力入れんなって意味だ」


 少女は真剣に聞いている。


 昨日まで敵だった男の言葉を、

 まるで宝物みたいに。


 須川は小さく笑った。


「……変な世界だな」


 でも。


 悪くない。


 そう思ってしまった自分に、

 少しだけ驚いていた。

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