表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命題、夢の消費期限は?  作者: 千秋 颯@3/6「選ばれなかった令嬢~」アンソロ発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/10

3 shot.踏み出した先②

 『Halu』さんは身長と模しているキャラクターとのギャップから目を引きやすい。

 それに加えて、ロケ撮の写真をSNSに投稿してからフォロワーも増えつつあり、『あの写真の人』という認識で何度か声を掛けられたりもしていた。

 勿論私も動揺に声を掛けられ、撮影のリクエストを受けたりしながら、私達は屋台が並ぶ公園へ辿り着く。


「結構がっつり食べるね」


 階段に腰を下ろし、それぞれ屋台で買ったものを食べる。

 『Halu』さんはケバブを齧っていた。


「ウィッグ作り直したりしてたら出発ギリギリになってしまって……」

「あー、オールか」

「夜と朝食べ損ねてたので」


 コスプレイヤーと徹夜は身近過ぎるワードだ。

 『Halu』さんの言葉に納得しながら私は串に刺さったいちご飴を一つ頬張った。


「『ユッカ』さんは可愛いの食べてますね」

「キャラとのギャップえぐそう」

「そう。大分ちぐはぐで可愛いですよ」


 程よく風が吹き、過ごしやすい気候。

 澄んだ青空の下、他愛もない話をしながら私達は腹を満たす。


「実は俺、『ユッカ』さんの事知ってたんです」


 ふと話を持ち掛けたのは私がいちご飴を半分以上食べ進めた頃だ。

 横目で『Halu』さんの事を見れば、彼は穏やかに微笑み掛けていた。


「『ユッカ』さんを助けたあの日よりも前から」

「……まあ。地元のイベントに出没してるとすれ違う人も結構偏ったりはするよね。お互いコスプレの歴も結構長いし」


 別に珍しい話ではない。

 特に私はよくイベントに参加する分、知り合う人も多いし、地元のコスプレ界隈ではそこそこ顔が広い方だ。


「たまにすれ違う時の『ユッカ』さんはいつもフォロワーさんに囲まれていて、楽しそうにしていました。いつか俺もあんな風になれたらなって羨んだりもした事があって。……『ユッカ』さんはすごくコスプレが好きな人なんだって知ってるからこそ、やめて欲しくなかったんです」

「だから併せ誘ってくれたり、沢山話してくれたんだ」

「とは言え自己満足でしかないので、『ユッカ』さんの気持ちが変わらないようであれば、あれ以上干渉はしないようにしようとは思っていました」


 『Halu』さんはケバブをぺろりと平らげる。

 今度は脇に置いていたタピオカに手を付けながら、過去を思い返すように目を細めた。


「もう三年くらい前かな。高校生のコスプレイヤーがSNS上で炎上した話って知ってますか」

「……うーん。正直いくつか似たような話があるからな」

「それもそうですね」


 話題に出された炎上騒動。それはとあるジャンルのコスプレをした高校生数名が着替えをしないままイベント会場の外で迷惑行為を働いたと言ったものだった。

 『Halu』さんから詳細を聞けば私にも思い当たるものがある。当時は相当話題になったものだ。


「勿論、未成年レイヤーに限らず、こういったマナー違反は度々SNSで問題視されますが……未成年のコスプレイヤーは母数の割にそういった話題が飛び交うことが多かったりするのが現状です」

「うん。まあ、昔よりもネットでの活動もコスプレも気軽にできるようになったからこその問題ではあるよね」

「男性レイヤーとはまた違った意味合いで距離を置きたがる人は一定数いますよね」

「そうだね。マナー違反などの騒動から根付いちゃった印象を抜きにしても、やっぱり慎重にはなると思うよ。未成年に何かあった時、周りの大人は責任を取らないといけないから」

「尤もだと思います。ただ……きちんとマナーを守って、他の人達と同じように趣味を共有したいだけの高校生からしたらやはり不安に思ったりはするもので」


 そこまで聞いて私は思い至る。

 初めて会った日、アフターで聞いた事だが、『Halu』さんがコスプレを始めたのは高校二年生の途中からだという。

 彼もまた未成年レイヤーとして活動した経験があるのだ。

 斯くいう私もかつては同じ様な時期があった。


「『梅昆布茶』っていうレイヤー知ってますか?」

「あ、ウメコちゃん?」


 突然挙げられたのは知り合いの女性のコスネーム(コスプレイヤーの名前)だ。

 おっとりとした優しい子だ。ふわふわマイペースな言動が目立つが、彼女が好むのはハイヒールを履いた強いお姉さん系のキャラクターというギャップを兼ね備えている。

 イベントが良く被る為、頻繁に交流をする仲の良いフォロワーの一人だった。


「高校の同級生なんですけど」

「うえっ!?」


 言われてみれば彼女も大学二年生だったような気がする。

 フォロワーのフォロワーが実は自分のフォロワーでもあった、などという現象はまあ珍しくはない話なのだが。

 だがただのフォロワー同士ではなく同級生だったという展開は初めての事だった。


「当時俺はクオリティもあれだし、男性レイヤーだしでイベントは一般参加が多かったんですけど、あいつは結構バンバンイベントに出没するタイプで」

「あーね」

「ただ、あの騒動があってからはやっぱり肩身は狭かったし新しく知り合ったレイヤーさんとの距離感も結構よそよそしい感じがあったみたいで」


 記憶を辿ってみれば、確かウメコちゃんと知り合ったのはその騒動が話題になった辺りだったような気がする。

 しかし彼女が『Halu』さんの言うような素振りを見せた事はなかった。

 意外だと思いながら話を聞いていると『Halu』さんがぽつりと言う。


「でも、『ユッカ』さん達は違った。そうですよね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ