ペットを虹の橋へ送った
11年飼ってた小鳥が死んだ。最後は私の手の中だった。
朝に寝坊して起きたら、小鳥はいつもと違った声で鳴いていた。何事かと思いケージの中を覗いたら、止まり木に掴まりながらぐったりと翼を下ろしていた。小鳥が木に止まれなくなるのは、死の予兆。私は急いでネットを開いた。調べてみたが、動物病院は遠く、両親とも仕事で家にいない。
小鳥は眠たそうに、そして少し苦しそうな息をしている。彼は人の手をあまり好まないから。私はどうすればいいのかわからなかった。ただそっと、ケージにいる彼に手を差し伸べた。彼は少し歩いて、私の手の上へ、いつもより素直に乗った。
彼は背中を上下させ、浅い息を繰り返す。
何度も体勢を変えて、楽な場所を探す。
私の手の内で、彼の羽毛は密着し温まる。
熱く、風邪でも引いてるみたいな暖かさだ。私は胸にそっと抱いたり、いつもは嫌がるけど頭を撫でてみたりした。彼は気持ちよさそうに目を閉じる。こんなに幸せそうなら、もっと彼にこの手は安全なものだと教えてあげられたらよかった。虫の音のように翼を弱々しく羽ばたかせ、頭が重いのか、時折私に寄りかかった。
彼の名を呼ぶと、小さな返事が返ってくる。元気な時、彼は自身の名前を言えた。でも今、彼は少し鳴くだけでも掠れていた。
彼はそうして姿勢を変える。
私に背を見せ、尻目をよこしながら。左翼が震える。うるうると目に涙を浮かべ。彼は少し私を見上げていた。それから指の間に向かって透明な液体を流す。嘴から出てくる生温かい命は、淡く途切れていく。両翼を小さく震わせ、小鳥は目を開けたまま逝ってしまった。
やがて、そういう時が来ると覚悟はしていた。
でも、私と彼との間には、多くの思い出があった。
長い時を生きる人間と、短い時を生きる小鳥。
記憶に残る、小さくとも、面白おかしい生き物。彼は私に、生の喜びを教えてくれた。
たくさん食べて。たくさん寝て。たくさん鳴いて。たくさん羽ばたく。
生きていたら当たり前のことを、彼は教えてくれたのだ。
今、私たちは社会に埋もれている。普通の生活など忘れ、たくさん働き、勉強しなければ、社会に振り落とされる。
でも当たり前のありがたさを忘れちゃいけない。
命がある。限りがある。彼は目一杯、小さな世界で生きた。
私の手のうちで、彼は息を引き取った。私は彼の小さな足が指に絡まっていたのを思い出す。小さな命がもたらしてくれたものは、大きかった。
今までありがとう。私の愛した小鳥たち。