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君が魔法を使うたび  作者: まつなつ
35/35

チーム

めっちゃ期間空きました。

すいませんでした。

ネオンはジャガーの魔法に当たってしまった。

(ジャガーも一枚噛んでたのか…。油断したね…。)

ネオンの意識はどんどん深いところまで落ちていった。

「…冥」

催眠魔法にかかってすぐは辺りの音が聞こえたが、しばらく経つと何も聞こえなくなった。


「ネオン!ネオン!」

アトリエがいい感じに仮面を外したが、ネオンの意識はないままだった。

「ネオンー!死なないでー!」

アトリエはネオンの体を揺さぶって嘆き始めた。

「ん…。フィル、仮面を外してくれたんだね。ありがとう。」

ネオンが目を覚まして起き上がった。

「ネオンー!!」

「大丈夫ですか?仮面を外した後もずっと寝てて…何かあったんですか?」

ネオンは向こうの世界であったことを2人に話した。

「…って感じで向こうの世界で眠らされちゃった。ジャガーとは仲間同士だと思ってたけど…油断してたよ。」

「固有魔法がどうたらの原理は何か掴めたの?」

「残念ながら。」

「なんでジャガーは魔物の姿のネオンさんを攻撃したんでしょうか?正体が気づかれたんですか?」

「いや、気づかれてはないと思うんだけど。ただ、この魔物とジャガーは本心の服従関係ってわけではなさそうだね。」

「まぁ確かに眠らせる必要がなさそうだしね。」

「あとはネオンさんが最初に会った香水がキツイ女が気になりますね。」

「あの匂いは好きになれないね…。」

ネオンは匂いを思い出してしかめっ面になった。

「その話じゃなくて、その女とジャガーはどういう関係なんでしょう?」

「あー、うん!確かに。うん。」

3人は考え始めて沈黙が続いた。

「あのさ…。」

アトリエが口を開いた。

「フィル、何か思いついたかい?」

「お腹減っちゃった。」

「…。」

「…。」

「仕方ないでしょ!?起きてから何も食べてないんだから!!」

「…ま、このことは朝食でも食べながらでも考えよう。あ、フィル、エルをジャガーの場所まで案内してあげて。あの得意魔法は使える。」

「わかった、んじゃエルフィンちゃん行こっか。」

「はい。」

2人はジャガーの仮面を取り、ネオンと合流して朝食を取った。

「昨日あんな頑張ったのに今日も登るのぉ…?」

「仕方ないよ。東の城が攻めにくい要因さ。」

アトリエはしょんぼりしながらテントを片付け始めた。

「まぁリマを倒すまでの辛抱ですよ。頑張りましょう。」

「おや?エル、昨日は散々僕に文句を言ってきたのに、どう言う風の吹き回しだい?」

「やっと吹っ切れました。」

テントを片付け、前日と同じように山を登り始めた。

太陽はアトリエ達の頭上を高く登り、降って行った。

「はぁ…。ひぃ…。ふぅ…。」

「アトリエさん…大丈夫ですか…?」

「むり…。」

アトリエが今にも崩れ落ちそうな様子で山を登っていた。

ネオンが前でどんどん登って、アトリエとエルフィンが後ろから着いていっていた。

「ネオンさーん!」

「?」

ネオンは足を止めて振り返った。

「アトリエさんが…。」

エルフィンの指を刺した先には生まれたての子鹿のように膝が揺れているアトリエだった。

「うーん。今日はもうちょっと行きたかったけど…この辺にしとこうか。」

「アトリエさん!終わりですって!」

「…生き…生きてる…?」

「生きてますよ!今日もよく耐えましたね!」

アトリエは涙を流しながらエルフィンに抱きついた。

「やった…やった…。私…」

「よし、テント建てようか。フィル頼んだよ。僕は周りの様子見てくるから。」

ネオンはアトリエの言葉に被せてそう言ってテントを残してどこかに行った。

「うぶ…。」

アトリエはエルフィンの肩から崩れ落ちてその場に倒れた。

「アトリエさん!?」

「…。」

「ア、アトリエさんー!」

こうして今日の登山は敵に襲われることなく平和に終わった。

「それじゃおやすみ。」

「おやすみなさい。」

「おやすみー。」

3人は夕食を食べ、アトリエが血反吐を流しながら建てたテントで就寝した。

数時間経った頃。

「…いてて。」

アトリエは登山で酷使した足が痛んで目が覚めてしまった。

アトリエは目の前でぐーすか寝ているネオンを羨ましく感じた。

「ネオンはよくぐっすり寝れるよね…。エルフィンちゃんは…。あれ、エルフィンちゃんは…?」

ネオン、アトリエ、エルフィンの順で寝てたのにアトリエの横にはネオンしかいなかった。

アトリエはネオンを起こさないようにテントの外に出た。

「トイレでも行ってるのかな…ってこれ…。」

アトリエの味に金属の塊が当たった。

「…エルフィンちゃんの義手…なんでここに…?ん…?」

アトリエの耳にふぅ…ふぅ…と荒い呼吸が届いた。

「エルフィンちゃん?」

テントの少し外れに片腕だけのエルフィンがもがきながら倒れていた。

「エルフィンちゃん!?どうしたの!?」

「ア、アトリエさん…?な、なんでもないです…。」

「なんもないわけないでしょ!?どうしたの!?」

「いつものことです…心配しないで…ください。時間が経てば治まるので…うっ。」

「け、けど!心配だよ!」

「2人ともどうしたんだい?…ってエル?」

ネオンが2人の騒ぎに起きて様子を見に来た。

「ネオン!エルフィンちゃんが…!どうしよう!?」

「僕に掴まって、立てるかい?」

「…はい。」

ネオンはエルフィンの片腕を肩に乗せて椅子まで誘導して座らせた。

ネオンが背中を摩ってエルフィンを落ち着かせた。

数十分経った。

「楽になってきたかい?」

「…はい。ありがとうございます。すいません…迷惑をかけて。」

エルフィンは苦しみから一時的に解放された安堵の表情と同時に2人の睡眠を邪魔してしまった事への申し訳なさが込み上げていた。

「…エル、今のは『幻肢痛げんしつう』かい?」

「…だと…思います。」

「待って待って、幻肢痛?ってなんなの?」

「実際はないはずの体の部位がまだ存在していると脳が勘違いし、ずれが生じて、なくなった場所がすごく痛む病気さ。エルの場合両腕かな。」

「…はい。」

エルフィンは右腕で義手のなくなった左肩を押さえていた。

「エルフィンちゃん…。」

アトリエはエルフィンが痛がっている時の"いつものこと"と言う発言が気になっていたが、ネオンはこのことを知らないし、エルフィンはあまり知られたくないのかもしれないから喋れなかった。

「アトリエさん、ネオンさん、本当にすいませんでした。私はもう大丈夫なので…。」

「エル、大丈夫じゃないだろう?幻肢痛はいつからあるんだい?」

ネオンはさっきまで見せていた穏やかな目が鋭い眼差しへと変わっていた。

話を強引に終わらせようとしたエルフィンにイラッとしたんだろう。

「…ネオンさんに隠し事は無理ですね…。」

「エルは会った時から同じ顔色だったけど昨日、ジャガーに眠らされた時は違った。魔法で寝かされたとしても、寝ないよりスッキリしたんだろうね。昨日はとても良い顔色をしていたよ。

だとしたら、昨日以外の顔色を鑑みると僕たちと出会った時からよく眠れていないってことだよね?」

「…その通りです。」

「全く気付かなかった…毎回あんなになってるの?日常生活は?」

「いえ、痛みが来るのは寝る時だけなんです。」

「なんで寝る時だけ?」

「よくわかりませんが、寝る時に色々と昔のことを思い出してしまうのも原因の一つと考えています。」

「昔のことって前に喋ってくれた時の魔物とかかい?」

「はい…。」

「さっきまでは左腕が痛かったんだよね?右腕は大丈夫なの?」

「いえ、日によって痛みが右腕だけだったりたまに両腕が一気に痛む日だってあります。」

「片腕であんなだったのに両腕なんて…考えたくもないよ…。それをずっと1人で…?」

「…ですね…すいませんなかなか言い出せなくて…。」

3人の間にとても重い空気が流れていった。

「…一回痛みが来た後に一夜のうちに痛みが再発することはあるのかい?」

「今のとこはなったことないです。」

「んじゃ、今日のとこは寝ないかい?明日も登らなきゃいけないんだ。」

「それは賛成!私眠くて眠くて…。」

「…そうします。アトリエさん、ネオンさん改めましてお騒がせしてすいませんでした。」

「そんな気にしなくて良いの!これからもちゃんと話せることは話してね!」

3人はテントに戻って眠りについた。

戻った頃はまだ暗かったが時間は経って、太陽が昇ってきた。

「ん…よく寝た…。」

アトリエの横目には眠っているエルフィンがいて安心した。

「ネオンがいない…起きたのかな…。」

アトリエがテントから出てると焚き火の横に座っているネオンがいた。

ネオンは好物のコーヒーを嗜みながら、本を読んでいた。

「お、フィルが起きたのかい。」

「ふぁ…ネオンおはよう。また変な本読んでるの?」

「読んでみると面白いよ。あと、もうおはようの時間は過ぎたけどね。」

「え?…ってえ!?もうお昼じゃん!!」

太陽はアトリエ達の頭上辺りまで昇っていた。

「今日は少し遅く出ることにしたんだ。エルのこともあるしね。」

「幻肢痛…だっけ?あれって治るの?」

「うーん、僕が知ってるのは薬か、リハビリテーションかな。この山の中であれを治すのは難しいかもね。」

「かわいそうだね…どうにかしてあげたいけど…。」

「僕たちができることはエルの相談しやすい環境を作ってあげることぐらいかな。エルは1人で背負い込む癖がある。」

「私達にずっと敬語だし…私達って話しずらいのかな…?」

「エルの敬語は相談のとは少し違う気がするけど…。って言ってたら、起きたみたいだね。」

「アトリエさん、ネオンさん、おはようございます。」

寝起きのエルフィンが2人に近づいていった。

「おはよ。」

「エルフィンちゃん、おはよう。…あれから大丈夫だった?」

「はい、アトリエさん達のおかげで今日は少しスッキリできました。」

「ただエルの睡眠時間が伸びただけだよ。」

「?」

「エルフィンちゃん、今日は遅く出発するんだって。」

「って今お昼じゃないですか!?」

「フィルとおんなじ反応だね。」

「な、なんでですか?私が理由ですか?」

「まぁそれもあるし、僕も少し休憩したかったからね。多分フィルも。」

「1日ぐらい休んだってバチは当たらないよねー。」

ネオンは別に休憩を必要としてなかったがエルフィンに気を使って言ったのだろうとアトリエは推測した。

「まぁエル、これが本当の理由なんだけどさ。僕たちは魔王軍を討伐するために結成した1つのチームなんだ。けどメンバー同士で自分のことについてろくに相談できないのはチームとして長生きしない。なぜ幻肢痛について僕たちに相談できなかったのか言えるかい?」

エルフィンは下を向きながら口を開いた。

「…まず、言えなくてすいませんでした。言えるタイミングはたくさんありましたが、私は自分個人の問題と捉えて1人で解決しようと模索していました。

相談できなかった理由は…私が使えない奴と思われるのが怖かったからです…。

ネオンさん達がそんなこと思ったりしないってのはわかってるのですが…。

私はただでさえ、魔物を殺すのを躊躇してしまうような人間です。そんな自分を受け入れてくれている人達に嫌われる、使えないと思われるのがとても怖くて…。けど、そんな自尊の気持ちでもっとお二人に迷惑をかけてしまった…本当にすいませんでした。」

エルフィンは改めて2人に頭を下げた。

「なるほど…。エル?君はなんでそんなに自分を下げてるんだい?」

「え?」

「僕はこの僕の長い人生でエル以上に役に立つ人間に出会ったことはないよ。まぁ僕が基本1人で過ごしてたのもあるんだけど。」

「流石にそんなこと…。」

エルフィンは怒られたり、失望されたりすると思っていたのにいきなり褒められ始めたので唖然とした。

「エル自身のいいところもたくさんあるけど、たとえば、色々な種類の得意魔法も使えて、故人の過去を読める。

これはエルにしかできなくて、この大陸にいる人間はこれをしたくてもすることはできない。

そんなエルを役立たずって言うことは僕のような一般人にはとてもじゃないけどできない。」

アトリエは黙ってネオンの話を聞いていたが、不老の魔法使いが一般人なのか引っかかった。

「いいかい?エル、まず、完璧な人間なんて存在しない。誰しもどこか長けていて、どこか抜けているものさ。

そして僕は完璧なんて求めない。もちろん一定の力量は求める、けど僕の目に映るエルが僕の望む力量を下回ったことは一度もないよ。例え、魔物を殺せなくてもね。」

「ネオンさん…。」

「そして同様に僕は別に完璧なエルを求めていない。魔物を殺せないのは人間としての良心の表れだと思うし、エルに幻肢痛があるからって理由だけで失望するなんてしない。

だからエル、完璧じゃなくていいんだ。

エルのどこか抜けている場所は僕たちで塞ぐことができる。

けどね、エルが自分でわかっている抜けている場所を僕たちに言わずに自分で塞ごうとしたってそんなことできっこない。そしていつかその穴を突かれ、自分、もしくは自分以外の誰かが命を落とす。

僕たちが魔王を倒すにはその穴をできるだけ少なくしないといけない。

だから、自分ができないこと、自分の身に起きてることを正直に僕たちに相談してくれればその穴は僕とフィルが補填する。もちろん、エルにも僕やフィルの抜けている場所は補ってもらうよ。

それが強固で強いチームってもんさ。」

「私がネオンさん達に幻肢痛を開示しても真摯に向き合ってくれることなんてわかっていました…わかっていたのに…本当に私は情けないことをしてしまいました。」

エルフィンはネオンの発言によって自分の過ちを改めて思い知り、悔しさから涙を流した。

「まぁこれでまた一つこのチームの穴がなくなって強くなるのさ。この積み重ねで魔王の首に手が届く。」

アトリエはネオンが言いたいことを全部言うので何も言うことがなく、黙ってエルフィンの背中を撫でた。

「まぁまだ幻肢痛の穴が残ったままだ。この穴は僕とフィルじゃ埋めることができないから早めにどうにかしたいけど…。リマを倒すまで耐えられそうかい?」

「…はい。…大丈夫です。」

「よし、そうと決まったら早くリマを倒しに行こうか。ほら2人ともさっさとご飯食べな。」

「…はい…!」

エルフィンは泣きながら朝食か昼食かわからないご飯に齧り付いた。

アトリエは終始喋ることがなくて、黙ったままご飯を食べた。

「よーし!今日も山登るぞー!」

テントを片付け、山を登る準備を終えた。

「今日はフィルが元気だね。」

「エルフィンちゃんのためだからね!張り切っちゃうぞー!」

「アトリエさん…ありがとうございます。」

3人は並んで山を登り始め、数時間がたった。

「ん?」

「ネオン?どうしたの?」

「どうしました?」

ネオンがアトリエの後ろで立ち止まった。

「今日はネオンが先に体力切れかなー?私はまだまだいけるけどね!」

そう言ってアトリエがネオンとエルフィンを置いて進んで行った矢先。

「あえ?」

「…えーまた『ぷ』かよ…ってえ?」

「なん…ってえ?」

2人の魔物と鉢合わせた。

「わー!!」

アトリエは急いで引き返し、ネオン達と合流した。

「なんか喋り声がすると思ったさ。」

「また来たんですか…。」

ネオンとエルフィンが魔物に杖を向けた。

「びっくりしたー。本当に人間がここまで来てんだな。」

「人生何が起こるかわからないよなー。てか俺人生初の人間かも。」

2人の魔物が奥から出てきた。

「もっと下で待ち伏せするプランだったのになー。

って!『プラン』!」

「お前それ『ん』じゃん。しかもそれどころじゃ無いぞ。」

「あー!今のなし!続きはこの戦いが終わってからな!」

相対しても全く緊張感のない様子だった。

「フィル、エル。気をつけて。」

「…はい!」

「う、うん!」

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