影の謎
戦いの後、アトリエとネオンは眠ったままだったエルフィンを起こした。
木々の隙間から差し込む光がエルフィンを照らしていた。
「ん〜…すいません、寝過ぎちゃいましたか?」
エルフィンが眠そうな目を擦り、起き上がった。
起きるなり、エルフィンはアトリエを見つめて固まった。
「アトリエさん…趣味ですか…?」
「エルフィンちゃんは心配してくれると思ってたのに!」
アトリエの燃やされてボロボロになっていた服を見て唖然としている様子だった。
「敵に襲われたのさ。エルがぐっすり寝てたのもそのせいさ。」
「そうなんですか!?敵は倒せたんですか?」
「なんとかね。フィルよりエルの方が寝たままなのは新鮮だね。」
「すいません…。」
「まぁいいさ。いつもより顔色がいいし、よく寝れたんだろうね。まぁエルが寝過ごしたからフィルがこんなんになっちゃったけどね。」
ネオンがアトリエの服を引っ張って見せた。
「半分はネオンのせいだよ!?」
「まぁ勝てたからいいじゃないか。それに僕が水をかけたから火の被害は最低限に防がれたんだろう?」
アトリエは何か言いたい様だったがぐうの音も出なかった。
「そういや、こんなことは置いといて、エルにやって欲しいことがあるんだ。」
「やって欲しいこと…ですか?」
「まぁついて来て。」
「ちょっと待って!着替えの時間だけちょうだい!」
「仕方ないな…少しだけだよ。」
アトリエが着替えを終え、3人は魔物の元は向かった。
「この魔物…ジャガーじゃないよ?」
「この魔物がいいのさ。」
アトリエ達が辿り着いたのは最初に催眠魔法で攻撃して来た忠誠心の高い魔物だった。
その魔物の頭には杖が刺さっており、周りには血が飛び散っていて異臭を放っていた。
「うっ、死体は見慣れてるけどこの匂いには慣れないね…。」
ネオンはひどい匂いに鼻を抑えた。
「あの、まだいまいち話が掴めないんですけど…。」
「まぁ一連の流れを話そうか。」
ネオンは目が覚めてからジャガーを倒し終えたまでの過程を話し始めた。
「ん?ネオンはエルフィンちゃんに得意魔法を仮面にして欲しいんじゃないの?なんでこの得意魔法を持ってない魔物のところなの?」
「エルが強くなることは嬉しいけど、それよりも気になることがあるんだ。この魔物がジャガーの得意魔法を使ってたかもしれないんだ。」
「ん?どういうこと?」
「?」
アトリエとエルフィンはまだ話の概要がわかっていなさそうだった。
「言ってなかったかな…いいかい?まず得意魔法で強化される魔法には大きく2種類あるんだ。例えば〜…炎の得意魔法使いだとしよう。
この魔法使いは炎に関係ある魔法の効力を飛躍的に上昇させて使える。「爆葬」はよく使うよね?この魔法は基礎的な物だから誰しもが使うんだけど、この得意魔法使いが「爆葬」を使うと周りとは比にもならないくらいの爆発が起こる。
けど、これとは別に"得意魔法使いにしか使えない魔法"があるんだ。
これを『固有魔法』とでも言おうか、僕やフィルのような普通の魔法使いの想像を軽く超えるような魔法だとも言われている。
得意魔法ごとの固有魔法の数や効力はその得意魔法使いの練度に比例するらしい。
まぁエルの仮面を作る魔法を想像してもらったらわかりやすいかな。」
「えっ?うん…つまり…?」
「僕はどんなに頑張っても影は纏えない。」
「そういうことですか。」
エルフィンは何か察したようだったがアトリエはちんぷんかんぷんだった。
「この魔物が得意魔法使いでもないのに固有魔法の『影を纏う魔法』を使ってたことが気になってるってことですよね?」
「その通り。さすがエルだね。」
「あー、私たちを持って逃げた時の話か!…うん?やりたいことは多分大体わかったけど…知ってなにか意味あるの?」
「固有魔法なんて喉から手が出るほど欲しい産物だよ。それが誰でも使えるようになるんだ、興味深いと思わないかい?」
「けど私たちはエルフィンちゃんの魔法で充分じゃない?」
「それもそうだけど、それに敵に固有魔法を共有させることのできる魔物がいたら、この冒険は苦難を強いることになるからね。」
「確かに、そこで記憶を読めるエルフィンちゃんの仮面ってことね。」
「てことでエルの寿命を僕に捧げてね。」
「もう少し言い方あるんじゃないんですか…?」
エルフィンは苦言を呈しながら魔物に手を伸ばした。
エルフィンの冷たい義手と魔物の冷たい体が触れ合った。
「取れました。」
エルフィンの手に魔物から取った仮面があった。
「ありがとう。んじゃエルでもフィルでもいいからいい感じのタイミングで仮面を外してね。」
ネオンはエルフィンから仮面を受け取ってすぐさま仮面をつけた。
「ちょっと!危ないって!」
ネオンは仮面をつけて気を失うように倒れたが、アトリエが上手く受け止めた。
「いい感じって…いい感じって!!」
「まぁ…頑張ってください。」
「ネオンに何かあったら私が悪いみたいになっちゃうじゃん!」
「私が記憶の仮面をつけた時は帰ろうと思ったら帰れましたけどね。」
「エルフィンちゃんの魔法だからとかも関係あるのかな?てか、エルフィンちゃんいつ仮面つけてたの?」
「…なかなか寝付けなかった時にこっそり…。」
「まぁエルフィンちゃんの魔法だから自由でしょ…あ〜…ネオンも自分から帰られればなぁ。」
魔物の見た目をしたネオンはどこかの城の中にいた。
辺りのシャンデリアから発された光を光沢のある床に反射して眩しかった。
(お、来れたね。ここは東の城の中かな?)
後ろに知らない女の魔物がいた。
金髪に厚い化粧、そして濃い香水の匂いがした。
(この香水の匂いは…僕の好みじゃないな。)
ネオンは鼻を抑えなくなったがやめておいた。
「こっちよ。」
魔物がそう言うと、どこかに向かって歩き始めた。
ネオンは辺りを見渡しながら無言で着いて行った。
真ん中にあった大階段を登り、ある一室に招かれた。
「入って。」
女が部屋の扉を開け、ネオンを部屋に入れた。
そこは薄暗く、ネオン達が入ってきたことに驚いたネズミが走り回っていた。
(ここはなんの部屋だろう?)
ネオンの後ろで何か音がした。
「おっと…。」
ネオンが後ろを向こうとしたその時、背中に杖が構えられていた。
その杖と握る手はどこかでネオンは見たことがあった。
「「「暗夜睡」」」
ネオンも杖を取り出そうとしたが、先に魔法を放たれてしまった。
倒れたネオンの後ろには女とジャガーがいた。




