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君が魔法を使うたび  作者: まつなつ
20/35

少女と不幸な力

私は子供の頃から不幸だった。

南端にある小さな村。魔王の進軍の心配もなく、その村の住民は誰も魔法を使わなくなった。

そんな生活が何世代にも続き、その村では魔法を見たこともなく亡くなる人も多くなった。

そんな時に私は生まれた。

私の『エルフィン・マスカレード』と名付けられた。

私は平凡な家庭で生まれた、平凡な子供かと思っていた。そう思われていた。

12歳くらいの頃だろうか。父母に愛されて育ち、同年齢の親友だってできた。

その時は近くの森に親には内緒で親友と遊びに行った。

森の中に川があるからそこで遊ぼうと話した。

私たちは私服のまま川に入った。

一通り遊び尽くした。

魚を手づかみで取ろうとしたが無理だったのは記憶に残っている。親友と2人で魚を取れなくてもとても笑っていた。

「ごめんエルフィン。私トイレに行ってきていいかな?」

「わかった!私はここで待ってるね!」

親友が森の奥へ入っていった。野糞でもする気だろう。

数秒後だった。

「ぎゃゃゃぁぁぁ!!!」

親友の叫び声が聞こえた。

私は川を出て声の元へ急いで行った。

「なにがあったの!?大丈夫!?」

私が何かいるところに叫んだ。

返事はない。

草を掻き分け、親友の元へ行った。

血だらけだった。

親友のそばには熊がいた。

私は新友に背を向け来た道を走り出した。

後ろからは熊の大きな足音が迫ってきていたのをまだ覚えている。

私は転けてしまった。

熊が私を襲おうとした。

私は恐怖から目を瞑り、震えた声で助けを求めた。

熊の咆哮が聞こえた。

私は死ぬと思った。

なかなか攻撃が来なかった。

私は恐る恐る目を開けた。

熊は仰向けになり、動かなくなっていた。

あの時は何が起こったかわからなかったが、今考えると魔法だとわかった。

私はその時何が起こったかわからなかった。けど、その時親友のあの姿が思い浮かんだ。

私は急いで村に帰って大人の人を呼んだ。

親友はすぐに手当てされた。しかし助からなかった。

そして何よりの問題は私だった。

隠れて川で遊んだ。親友がトイレに行った。

ここまでは良かった。

叫び声が聞こえ、様子を見に行くと熊がいて、親友を切り裂いた。

私は必死に逃げたが追い詰められて、恐怖から目を瞑っていた。

目を開けると熊が死んでいた。

誰も信じるはずがなかった。

私は様々な説に当てはめられてしまった。

私が親友を殺した人殺しだ、とか。

私は本当は死んでいて、今の私は魔物だとか。

私は軽蔑され、差別の対象とまでなった。

外を歩くと、子供から大人までが私を人外呼ばわりし、石を投げた。

家なんてたくさんの落書きされた。

私の家族は私を庇った。

それがダメだった。

私の家族まで差別の対象になった。

お母さんはママ友からのけ者にされ、陰口、陰湿な嫌がらせにまで発展した。

お父さんは職場での立場がなくなり、職場の汚職をなすりつけられ、解雇された。

ある朝だった。今日も憂鬱な1日が始まってしまうと考えていた矢先、お母さんが泣いていた。

確かに度々お母さんは泣いていたが、今日はそれとは比にならないほど泣いていた。

なんて会話をしたかは覚えてない。

思い出したくもなかった。

ただ、この真実だけを聞いた。

お父さんは私たちを置いて夜逃げした。

私はこの怒りを何にぶつければいいのか困っ

た。

そんな心境の時でも、差別は止まらなかった。

学校でも先生も誰も私を助けてはくれなかった。

その日は同い年の男子に囲まれて、殴られ、蹴られ、笑い者にされたことを覚えている。

私はその夜傷が痛んだのもあったが何より、お父さんがいなくなったことでいっぱいで眠れなかった。

次の日。

昨日は一日中泣いていたお母さんがやけに静かだった。

理由は明白だった。

お母さんは首に縄をくくり付け、宙ぶらりんになっていた。

私はついにこの村ではなく、世界を恨み始めた。

その日は学校を休んだ。

私は何も考えずに床に座っていた。

外からは同い年くらいの子供の声が聞こえた。落書きをしているのだろう。

私のせいで両親は離れ離れになった。

私はその夜、その罪を償おうとした。

首に園芸用のロープをくくり付けてお母さんが引っ掛けていた柱に結んだ。

結んでいない方に首が通る円を作った。

首を引っ掛け、あとは椅子から降りたらお母さんの元へ行ける。

そう思っていたのに。

どうしてだろう。

足は動かなかった。

頬には涙が垂れていた。

横でぶら下がっているお母さんはどこか穏やかな顔をしていた。

私も苦しみから解放されたかった。

このまま生きても、誰かの怒りの吐口にしかならない。

外を歩けば石を投げられ、悪口を言われる。

家に来ても、落書きを楽しむ声で溢れている。

私は縄を首から外し、椅子から降りた。

私はその場に座り込み、窓の外を見た。

月はとても大きく、とても美しかった。

私は裸足のまま外に出た。

村の明かりは消え、静寂に包まれていた。

私はそのまま森へ入った。

私もなんでそうしたかなんて覚えていない。

ただ、一つ言えることは限界だったのだ。

森を何も考えずに無我夢中に歩いていた。

さっき美しいと感じていた月はもう沈もうとしていた。

歩いている時、私ではない人間の喋り声が聞こえた。声は2人分しか聞こえなかった。

こんな森でこんな時間いるやつなんて碌な奴じゃないと考え、私はそれに合わないよう避けて歩いた。

その2人の横を通り抜けようとした時、私は枝を踏んでしまった。

パキッと枝の折れた音が喋り声と共に静かな森に響き渡った。

「なんの音だ?」

「誰かいらっしゃるのですか?」

その2人は私を探していた。

私はあの村のせいで人間が怖くなっていた。

私は走って逃げようとした。

すると正面から私より年上だが、若い女性が来た。

「ワッ!?」

女性はとても驚いていた。

私はそのまま逃げようとしたが、女性に捕まった。

「大丈夫!?なんでこんな時間に子供が...。」

女性は私に心配をしてくれているのだ。

「まぁこっちに来て。ご飯でも食べる?」

私は女性に手を握られ、先ほどの2人の場所へと案内された。

「2人ともー!戻る途中で子供がいたんだけど!」

「やっぱ、他の人がいただろ?」

「流石にこの時間だと、気のせいかと思ってしまいました。」

私はとても怯えていた。

いつこの人たちが私を攻撃してくるかと、そわそわした。

「まぁ落ち着いて、シチューあるけど食べる?」

と女性がとても優しい声で聞いてくれた。

「お!4人で飯食うのなんて、実家ぶりだわ!」

「私たちが街を出てから1日しか立ってませんよ。」

この3人は昨日から街を出て、ここにいるようだった。

「えーと自己紹介からね。私は『カレン・ネストリア』って言ってね。あの大柄の馬鹿が『ノイン・エレグラム』。敬語の癖が抜けてないのが『エリオ・グランメルス』。よろしくね。」

「誰が馬鹿だと!?」

「まぁ落ち着いてください。ところで、あなたの名前はなんというのですか?あと何でここにいるのですか?」

「...。」

私はまだ怖かった。

こんなに優しいそうな人たちが私の正体を知ればどんなに対応が変わるのだろうか。それで頭がいっぱいだった。

「言いたくないなら言わんでいいだろ。だが、これが誘拐とかに発展したら困る。今から質問するからもし、言うのが嫌なら頷くだけでいいぞ。あんたは今帰る家はあるか?」

私は首を振った。帰る家もないし帰れる村もなかった。

「そうか。つかぬことを聞くが、親はおるか?」

私はまた首を振った。

「そうか...。」

「ここの近くですと、あの村の子ですかね。」

ノインは何か思いついたような仕草をした。

「質問を続けてもいいか?」

とノインが聞いた。

私は頷いた。

「あんた、親がいなくなった以外の理由であの村から出てきた理由はあるか?」

私は頷いた。

両親もいなくてただ、いじめられる村になんていたくもない。

「重ねて聞く。それはあんたが魔法を使うからか?」

私は固まった。

私は生まれてこの方魔法というものを聞いたことはあるがどのようなものかわからない。

しかしあの熊を退治した力が魔法だとするならば...。

私は頷いてみた。

「やっぱな。あの村周辺の奴らは魔法を知らない奴が多すぎる。多分気味悪がられたんだろうな。」

「ならこの子は私たちと一緒ってことね!」

「それってどういうことですか...?」

私は勝手に口から言葉が出たことから思わず口を塞いでしまった。

「いい?この世界での魔法ってのはね、確かに不気味なものかも知れないけど、希望に満ち溢れてる力なの!」

カレンはピカピカ光らせた目を私の顔の近くまで寄せてきた。

「まぁ、カレンの言ってることは間違いじゃない。あんたはあの村では異端児やったかもしれん。けどな、今の世界はあんたのような異端児を求めてるんだ。」

カレンに同調しノインが言った。

私はその言葉を聞き、泣き崩れた。

「相当辛いことがあったんですね...。」

私の生まれてくる場所が違うだけで、私は、私の家族は救われたのかも知れない。

「...あんたはこれからどうする?」

泣いている私にノインが聞いてきた。

「もちろん、俺らから離れてもいい。なんならついてきてもいい。だが俺たちの行き先は魔王城、誰も生きて帰って来れてない場所なんだ。おすすめはこの先の街まで案内してやるからそこで生活することだ。返答は急がんでいい。」

私は悩み、俯いてしまった。

「まぁ暗い話は程々にして。ご飯でも食べましょう。あ、2回目ですけど名前、聞いてもいいですか?」

「...エルフィン・マスカレードって言います...。」

「エルフィン・マスカレードね。かっこいい名前だな。」

「よし!ご飯食べよー!」

私はノイン、カレン、エリオの3人と一緒にご飯を食べた。

私が村にいた頃は家族の気が全員落ちていたから食卓を囲むことはほとんどなかった。

3人との食事は、親友と遊ぶ前の時に家族で一緒に食べたご飯に似ていた。とても暖かく、穏やかに時間が過ぎた。

ご飯を食べ終わった頃。

「そろそろ行くか。」

「そうですね。焚き火の処理をしますね。」

「火つけるの頑張ったのになー。」

「エルフィン。これからどうする?俺たちはこのまま北上する。ついてきても途中で街に住んでもいい。このまま離れてもいい。」

「...ついていっても...いいですか...?」

「よしわかった。なら行こうか。疲れたらちゃんと言えよ。」

3人と私は私の村とは反対の方向へと歩いていった。

歩く途中でも会話が途切れることはなかった。

「ここに結構でかい山中都市がある。ヤミナミノミヤとかだっけな。エルフィン、ここで別れるか?」

「あの...。無理だったらいいんです...。私も魔王城までご一緒していいですか...?」

「それって...。」

「エルフィンちゃん。私は全然大歓迎だけど大丈夫なの?」

「私...。もう街だったり村が怖くて...。なにより私は見返してやりたいんです...!」

「見返すってだれにですか?」

「私が魔法を使って差別をしてきた村の人たちです。私はこの差別された魔法で魔王を倒し、村を見返してやって親の仇を取りたいんです!」

「...俺はその願いを断る気はない。だがこれだけは聞かせてくれ。前言った通り、生存者はいない。死ぬ気でいかなければならない。その覚悟はあるか?」

「...あります!」

「よし!いい覚悟や!けどあんた杖持ってないやろ?杖がないと暴発したり威力が下がったりするから、ヤミナミノミヤで買いにいくぞ。」

「私あんな都会初めて!」

「なんで、カレンがはしゃぐんですか。」

私たちはヤミナミノミヤという山中都市へ向かった。

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