村の救世主
「私の魔法を跳ね返すか...人間にしてはいい魔法だ...」
魔物は感心して言うが、とても余裕のある表情をしている、自分が負けると微塵も思ってないような。
「君たちに褒められても全然嬉しくないよ」
と謎の女性は答えた。
「貴様があの小娘を守ると言うことは、身近な存在か...貴様を殺した後にあの小娘もお前の元へ送ってやろう...」
「ごめんけど、あの子が誰かも知らないし、生死はどうでもいいかな。」
「ならなぜあんな小娘を守る。人間の寿命は短い、あの跳ね返す魔法はそんな赤の他人のためにたくさん使える代物ではない...」
「ただ、目の前で死んで欲しくないからだよ。その後に野垂れ死んだり、他の魔物に襲われて死んだりしてもどうでもいいかな。」
「フハハ、面白い、貴様の名前は?」
「...エヴァン」
「そうかエヴァンか...貴様を殺した後も、頭の片隅に置いといてやろう。」
「あっそ」
エヴァンは杖を魔物に向けた。
冷静に魔物の動きを待った。
人間と魔物にはそれぞれの得意魔法がある。
それは得意じゃない魔法と比にならないほど強力である。
しかし人間は魔法を無駄撃ちしたりできない。
自分の得意魔法がわからないまま死んでしまうのがほとんどである。
しかしエヴァンは自分の得意魔法を知っている。
魔物との戦いで運良く見つけたのである。
それは『鏡』。
その効果は、鏡の反射を利用して魔法を跳ね返すことができる。
「そういや君の名前は?」
とエヴァンは問いた。
「死人に教える必要はないが、聞いた反面答えてやろう。」
なんだこいつ腹立つな、と心の中でエヴァンは思った。
「魔王軍 呪将のドレイク・グレイモンだ。」
魔法軍の呪将といえばまあまあ高い位だ、しかし何故そのような位のやつがこんな村に、大半は都市部への攻撃を任せることが多い。
「呪将のドレイクね、君のような主力を倒したってみんなに自慢しよう。」
「フッ、面白い冗談だ...!」
「「「幻光閃‼︎(げっこうせん)」」」
魔物がまた光のような魔法を放ってきた。
今回はとても早い。
しかし、エヴァンはすかさず、
「「「反鏡呪」」」
と唱えた。
杖の先からうっすらの見える壁が出てきた。
ドレイクの光が鏡に当たったその時、光が跳ね返って、どこか遠くへ飛んでいった。
「うむ、これを反応したか、だが跳ね返す魔法なのに私に掠りもしない。精度が悪いな。」
「そうかな、一応得意魔法なんだけどね。」
「そんなものか、もう少し面白いと思ったのだがな...
残念だ...!!」
「「「幻光閃」」」
ドレイクがまたもや魔法を放った。
それはさっきまでとは違い、光が分かれ、5本ほどが別方向からエヴァンに襲いかかった。
「油断したね...」
ドレイクの光はいきなり途切れた。
そしていつの間にか、ドレイクの体に大穴ができていた。
「なぜ私の魔法が跳ね返ってきたんだ...幻光閃はまだ跳ね返されてないはず...」
ドレイクは掠れ声で言った
「跳ね返したさちょっと前にね」
「まさか...」
「そのまさかだよ。一度跳ね返した光をまた跳ね返して時間差で君にぶつけた。いやー、君の光は早くて鏡で追うのが大変だったよ。」
「この...私が...人間如きに...‼︎」
ドレイクは絶命した。
ドレイクが殺され、ドレイクの部下は逃げてしまった。
エヴァンはこの村を襲った軍勢を一人で追い返した。
だが、この村から生き残れたのは一人の少女だけだった。