腕のない少女と斬撃
「よし、フィルここで一旦お別れだ。」
「うん、私はここでこの子の看病をしておくね。」
ネオンは山脈の麓の都市へ向かった。
「よし、ここなら日も当たらないね。」
アトリエは女の子を置いて改めて観察してみた。
「こう見てみると本当にひどいね、かわいそうだ。」
ボロボロな身体、切り取られた両腕、アトリエと同じくらいの年齢であるのに、魔物は慈悲もクソもないとアトリエは考えた。
一方 ネオン
「そろそろ魔法を使おうかな。」
ネオンは魔法を使った。ネオンのオーラは水色から桃色に近い色となった。
「魔王領の都市は久しぶりだな。」
ネオンは都市に入った。
人間領を侵略し、そこで得た資材を街の発展へと使っている。そのおかげで魔王領の街は発展を遂げている。
「義手を作ってくれる店はどこなのかな?」
ネオンは街を探し回っている。
ネオンがキョロキョロしながら街を歩き回っていたからか、
「どうした?この街は初めてか?」
と話しかけられた。
40代の男性だろうか。
「うん、今義手を作ってくれる店を探してるんだけど...。」
「知ってるが、案内しようか?」
「申し訳ないね、ありがとう。」
ネオンはおじさんに着いていった。
少し歩き都市の外れにでた。
「ここだ。」
「本当にありがとうね。」
ネオンがその店に入ろうとした。
「待てよ、タダで行くっていうのかよ。」
「ん?あー。そういうことか。」
「代金はもらわないとねぇ?」
「生憎、僕はこれから義手を買わなければならないから無駄遣いはしてらんないよ。ごめんね。」
「おいおい、俺は案内してやったんだぞ?まぁいい、払わないってんならこっちもそれなりの対応はするぞ?」
おじさんはネオンに掴み掛かった。
「うーん。」
「何考えてんだ?さっさと出すもん出せや。」
「案内してもらったのに、ごめんね。先を急いでるんだ。」
ネオンは杖を出した。
「な...何する気や!?」
「「「忘記封」」」
おじさんはネオンから手を離した。
「んあ?俺ここで何を...?」
「どうしたんだい、おじさん?」
「俺ここで何しようとしたんだっけ?」
「ん?君はここに散歩できたんじゃなかったの?」
「そっかそっか。あれ君は誰だ?」
「ん?僕は君とは無関係だよ?」
「あー、そうだった。すまんな、失礼する。」
「はいよー。」
おじさんはさっき来た道を戻っていった。
「申し訳ないけど、まぁ仕方ないよね。記憶をちょっと飛ばしたくらい。さてと、お店に入るとするかな。」
その時アトリエは。
「ネオンはまだかなぁ」
アトリエは女の子を見張りながらボーッとしていた。
足音が聞こえた。
「おっと、城に戻ろとおもたら人間がいるじゃねぇかよ。」
アトリエはびっくりしながら杖を構えた。
「あんた何者!?」
「なんや、わては『アッシュ・ロズヴェルト』や。ただの東の城の害虫駆除業者や。」
アッシュが杖を構えた。
「まずい!!」
アトリエは防御魔法を展開した。
「「「裂空斬‼︎‼︎」」」
アッシュの出した魔法は三日月型で飛び、近くの木を切り倒すと共に、アトリエの防御魔法も切り裂いた。
「何、この魔法は!?斬撃?」
「御名答、しかもわての得意魔法や。」
「斬撃って...。もしかしてお前がこの子を!?」
「またしても御名答、我が領土に害虫がいたもんでな駆除しきったと思ったんだかなぁ。」
「クッ...!」
アトリエは女の子の事を思い、腹が立った。
「やっぱ害虫は群れて固まるんやなぁ。滑稽やわ。」
アトリエは、言葉に釣られたように魔法を放った。
「「「爆葬!!」」」
アトリエはアッシュに炎を出した。
「なんや、ヘボい魔法やな。さすが害虫ってとこか。」
いちいち鼻につく発言にアトリエは苛々としていた。
アトリエは考えていた。
自分が魔法を受けないと女の子に当たってしまうかもしれない。
アッシュがまたしても魔法を放とうとした。
アトリエはそれに反応し、防御魔法を展開した。
「愚かな判断や。」
「「「切刻無斬!」」」
アトリエに向かって、三日月型の白い魔法が飛んできた。
その魔法はアトリエの展開した防御魔法を貫通しアトリエの右肩へと飛んだ。
「な、なんで!」
アッシュの防御を貫通した魔法により、アトリエの右腕は地面に落ちていた。
「不思議やろ。これが得意魔法や、冥土の土産にはちょうどええやろ?」
「何、あの魔法...。どうしたら...。」
アトリエは考えている。
今の状況を落ち着いて考えた。
敵は得意魔法『斬撃』の使い手。
防御魔法は自分に危害が及ぶ魔法を全て防ぐ。
しかし、敵の斬撃は防御魔法を貫通し、右腕を切り飛ばした。
「あれ...。何で...?切り取られた場所は何で痛くないの...?」
「次は足に行くで。」
アトリエは、痛くないことも踏まえてまた考え始めた。
さっきの通り、防御魔法は自分に危害が及ぶ魔法を防ぐ。
もし、この斬撃は痛みがないことから、防御魔法の抜け穴なんだとしたら。
自分に危害は及んではいるが、これが一番しっくりくる。なんせ敵は得意魔法の使い手。
「けど、わかったところでどうしたら...。」
「行くで。」
「「「切刻無斬!」」」
アトリエは魔法が放たれた瞬間、右腕が切り取られたことによって落ちた杖を拾い、構えた。
「「「燃広波!」」」
アトリエは防御魔法を置き換えたように炎の壁を放った。
しかし、その斬撃は炎をも貫通し狙い通り、アトリエの右足に当たった。
「ッ...。攻撃も通じないか...。」
アトリエの右足は右腕のように切り飛ばされた。
「もう終わりや、あんたは逃げることもできん。」
アトリエは足が片方なくなってしまい、地面に這いつくばっていた。
「次は普通の斬撃や。お前の首を狙う。その後あんたが大切にしとるその害虫も殺す。」
アトリエは対処法を考えた。
普通の斬撃、つまり最初に出した魔法のこと。
さっきは防御魔法で防げた。
アトリエは最初の魔法によって切り倒された木を再び見た。
「ん...。そういうことか...?」
アトリエは1人つぶやいた。
「チェックメイトや。」
「「「裂空斬!」」」
アトリエに先ほどの三日月型が複数個飛んできた。
「やるしかない!」
アトリエはアッシュに背を向け片足しかない足で走り出した。
「片足でどうする気や、気が狂ったか。終わりや。」
斬撃はアトリエのすぐそこまで来た。
しかしアトリエに当たる瞬間斬撃魔法は消えた。
アトリエのいるところはちょうど、最初の斬撃で切れきれなかった木の場所だった。
「チッ...。バレたか。」
「やった!やっぱりその斬撃は有効射程がある!」
アトリエはアッシュの射程外で倒れた。
「御名答。けどあんたは守っとる害虫を忘れていっとるわ。」
アッシュは両腕のない女の子に杖を向けた。
「死ね!」
「「「裂kッ...!!」
「「「水弾陣!!!」」」
攻撃しようとしたアッシュに向かってすかさずアトリエは水の弾丸を放った。
アッシュは攻撃をやめ、防御魔法を展開した。
「ここは射程外!そして攻撃と防御魔法は一緒には使えない!」
アトリエはアッシュへの水を止めなかった。
「チッ...。マジで腹を立たせんのがうまい害虫やわ。けどな!あんたの作戦はええかもしれん!だが!魔法は下の下や!」
アッシュは防御魔法を解いた。
「やっぱや。痛くも痒くもねぇ。水鉄砲か?」
アッシュは水を受けながら攻撃を放とうとした。
「「「裂空z...。」
「そうしてくると思ったよ!」
「「「凝固窒水!!!」」」
アトリエが放った水がアッシュに集まって固まっていった。
「あいつ!こんまま窒息させる気か!」
アトリエはすかさず
「「「流操水!!」」」
まだ固めていなかった水で波を作り両腕のない女の子をこっちに来させた。
「クソ!はよ抜けなやばい!」
アッシュは水に斬撃を打った。
「「「裂空斬!」」」
水は一度途切れてもまだくっつき、アッシュを閉じ込めた。
「絶対に逃さない!」
「ざけんな!はなしやがれ!」
アッシュは水の中で暴れ始めた。
「ネオンが幅広く魔法が使えたほうがいいって言う理由がわかった。アッシュは斬撃魔法以外は使いこなせない!」
「クソが...!ただの害虫が!」
「こんまま溺れてもらうよ!」
「クッ...!タダで死んでたまるかよ!」
アッシュは杖を構えた。
「ここは射程圏外だ!お前は私たちに何もできない!」
「そう思い込んでんのは愚行や!わての懐刀!」
『『『刃雨術!』』』
アッシュの頭上に数えきれないほどの刀と剣が浮いた。
「道連れや!クソカス害虫ど...も....!」
アッシュは白目を向き口から残りの空気が出てきた。
アッシュが死んだことによってか、アトリエの右足と右腕は治った。
しかしアッシュの魔法は止まることなく刀と剣がアトリエ達のところへ飛んできた。
「最悪だ...!」
アトリエは防御魔法を展開した。
しかし、防御魔法は物理攻撃に弱い。
アトリエの防御魔法は刀と剣を3、4本弾いたところで割れてしまった。
「逃げなきゃ!」
アトリエは女の子を抱き、走り始めた。
しかし刀と剣はアトリエを標的としており、逃げた先にも飛んできた。
「イダっ!」
刀がアトリエの治った右足を襲った。
抱いていた女の子も落としてしまった。
「この子だけでも!」
アトリエは女の子を押して遠くに飛ばした。
「私を狙っているなら離れればいいんだ...。ネオンが来るまで待っててね。女の子...。」
アトリエの背中に剣が飛んできた。
避けることもできない。
「フィルー?何をしているんだい?」
ネオンがこっちに歩いてきた。
「おっと。そう言うことね。」
ネオンは何かを察し、アトリエに防御魔法を張った。
「ネオン!これは物理攻撃なんだ!すぐに防御魔法は壊れる!私は足を貫かれたから逃げれない!女の子を!」
「あー。フィル、動かないでね。あと、彼女の防御魔法を解かないように。」
「何をする気なの!?」
ネオンは防御魔法を解いた。
すかさずネオンが
「「「幻閃光」」」
と魔法を放った。
アトリエはあの魔法を見たことがあった。
あの魔法はアトリエの村で両親を殺した魔法だった。
ネオンが放った光の魔法はとても早く、刀と剣を全て弾いていった。
「フィル。もう大丈夫だよ。」
アッシュの出した刀と剣は全て地面に突き刺さっていた。
「ネオン!!遅いよ!!死ぬかと思ったんだから!!」
と言ってアトリエがネオンに抱きついた。
「ごめんごめん。色々と悩んじゃって、あとチンピラに絡まれていたんだ。」
「チンピラ?まぁいいや、義手は?」
「左右ともバッチリさ。最近の義手はすごいね。魔法をこめると頭を読んで動くらしい。」
「魔王領ではそんなものが流通しているんだね。」
「うん。人間との魔法格差ってのは残酷だね。彼女はまだ起きていないのかい?」
「まだ起きてない。けど呼吸はちゃんとしてるし、眠ってるだけかも。」
「まぁ気長に待とうか。ついでに食料も買ってきたんだ。」
「なら私は木の枝でも集めてくるよ。」
「フィルは疲れてるでしょ。僕がやるから彼女の様子を見てて。」
「わかった。ありがとう。」
アトリエは初めての魔物との戦いは白星に終わり、反芻しながら森に寝転がった。




