魔法の代償
目を覚ますと暗い森の中にいた。
僕の体は何故か植物に囲まてれていた。
僕はそれを払い除け、起き上がった。
心做しかいつもと景色が変わっている気がするけど、僕は不老の魔法に成功したと悟った。
周りは暗くなっている、早く戻らないと親が心配するだろう。
森を進み都市が見えた。しかし何かが違う。
一夜にして都市が発展しているようにも思えた。一番大きかった図書館はさらに大きさが増し、僕が通っていた魔法学校は見えなかった。
なにか不思議に思い、僕は家に戻る。
鍵が掛かっていた。チャイムを鳴らし怒られることを覚悟した。
出てきたのはチャラそうな男だった。お父さんでは無い。
「誰だこんな時間に。」
チャラ男は僕を睨みつけてきた。
「ここは僕の家だ。君は誰だ。」
「は?ここは俺の家だ。何こんな時間にふざけてんだよ!」
チャラ男はドアを勢いよく閉めた。
さっきから何かがおかしい。
状況を整理しようとした。
不老の魔法を使い気を失って倒れていた。
何故か植物が木の体に絡まっていた。
森の景色も都市の建物も違う。
僕の家に知らない男。
「...まさか!」
僕は走ってカレンダーなどを探した。
誰かが捨てた新聞紙が落ちていた。
「これは...そんなことが...」
僕は驚愕した。
魔法を使ってから50年近く経っていた。
それなら辻褄が合う。
森のなかで50年も眠っていたら、植物は僕に絡まるし、景色も違う。
もちろん都市は発展するし、僕の住んでた家だって...
「家...?僕の両親は...?」
もちろん僕の両親がどうなったかなんてわかりきっていた。
けど僕は認めなかった。認めたくなかった。
僕は思い出したかのように走り出した。
同い年の友達に魔法を使っていない子がいた。
あの時はまだ16歳だ。66歳ならまだ生きているかもしれない。
友達の家に着いた。
チャイムを鳴らし、ドアを叩いた。
「ちょっと、なんだい!?」
ドアを開け、少し老けたおばあちゃんが出てきた。
「僕のこと覚えてない!?昔友達だった!」
「なんのことだか、私はこの街に来て3年しか経ってない。しかもあんたみたいなガキと昔から友達な訳ない。」
僕は絶望したさ。友達の家には友達じゃない人が住んでいた。
「もういいかい?私は眠たいんだ。」
とドアを閉めた。
『不老』、僕がこんな魔法を使ったことによって友達も両親も失った。
後で聞いた話、両親は魔法を使った日、明らかに僕の帰宅が遅かったから捜索願を出していた。都市部の捜索から始まり、森の中や、周囲の山々を調べ始めた。
僕は森の奥にいて、そこに捜索が来た頃には僕は植物に埋まっていた。
僕は死んだことになって葬式までされたらしい。その後両親は老衰により亡くなった。その友達も病気で亡くなっていた。
「...って感じで僕は不老になったんだよ。」
と女は話を終えた。どこか悲しい顔をしていた。
アトリエは
「それはとても災難だったね。」
と宥めた。
「僕が勝手に魔法を使って起こした事だ。悔しいけど僕の責任だよ。」
「今は何をしているの?」
アトリエは女に質問した。
「せっかく不老になって魔法が無限に使えるようになったんだ。自分の私利私欲のための研究をしているよ。」
「だからあんなに強いんだね。」
あの騎馬隊を一瞬にして散りにさせた魔法を思い出した。
「あんなに強いのに何でみんなを助けたり、目立とうとしないの?」
アトリエは聞いた。
「不老っていうのは寿命という概念がなくなるだけで、病死だって魔物に殺されたりだってする。不老なんて魔王軍の最大の敵、そんな奴がいると知られたら、魔王は確実に僕を殺しにくる。」
「けど、あんなに強いなら返り討ちに決まってる。」
「そりゃ、大半の奴には負けないけど、魔王に、なんなら『弍牙竜魔将』にすら勝てる自信がないよ。」
アトリエは知らない位だ。
「そんなに魔王軍って強いの?」
「君、一応魔法使いじゃないの?何で知らないの?」
女は呆れながら言った。
「知らないけど、私はあなたなら勝てると思ってる。」
「僕だって魔法を魔物のために使う世界じゃなくて、この世の発展のために使う世界にしたいさ。ただ、魔王はそうは思わない。あいつは人類の魔法使いの絶滅を望んでいる。だから魔王軍は数少ない魔法使いを殺し回っている。」
「わ...私と一緒に戦ったら!?」
アトリエは恥ずかしげにと言った。
女は
「君では実力不足だ。最低でも僕と同じくらいになってもらわないと。」
と返した。
「なら、私の師匠になって、私を鍛えてくれない!?さっきの騎馬隊で悟った、私じゃあんなので負けて死んでしまう。それじゃ魔王なんて夢のまた夢、だから私を鍛えて、一緒に魔王を倒しに行かない!?」
「何冗談言っているんだい。」
と女は笑いながら言った。
「お願い!この村のこともできるだけ話すから!」
とアトリエは頭を下げた。
「うーん、確かに君には他の魔法使いとは違う心意気がある、鍛えればそれなりに化けると思うし...案外悪い話じゃないかもね。」
女はアトリエに
「わかった。僕は君の師匠になって一緒に魔王に立ち向かうよ。けどこの村を調べ終わってからね。ちゃんと協力してもらうよ?」
と言い、アトリエは
「ありがとう!」
と言って、また頭を下げた。
「ところで君、名前は?」
「私はアトリエ・フィルノート。冒険を初めて2日目の冒険者。」
「案外短いね。アトリエ・フィルノートか...わかった今日から君を『フィル』と呼ばせてもらうよ。」
やっぱりどこか変な人だな。とアトリエは心の中で思った。
「僕の名前はネオン・テール。以後よろしくね、フィル。」
「うん。よろしく!」




