悲劇の少女
暗い夜、焼けた村の片隅に少女は座り込んでいた。
魔王軍の魔物の大群が襲ってきたのである。
各地から悲鳴が聞こえ、親子共々心中するものまでいた。
少女はもう人生を放り投げていた。
家族は目の前で魔法により殺され、仲の良かった老夫婦や親友までも殺されてしまった。
少女は悟る。
「人類は魔物に淘汰され、絶滅する。」
そう思い、魔物に殺されるのを待った。
魔物が近づいてきた、そいつは少女の両親を殺したやつだった。
少女は最後の力を振り絞り、全力で逃げた。
理由は彼女にもわからない。
死ぬのが怖くなったのだろうか、両親の仇には殺されないと誓ったのか、諦めていた少女は全力で走った。
しかし少女が少し走ったところで焼け石に水、すぐさま仇の魔物の魔法が飛んできた。
それは両親を殺した魔法と同じだった。
光のようにも見えた。
死ぬのか。
そう思った矢先、その光のような魔法は何者かによって弾き飛ばされた。
自分よりも10歳は年上の女性。
その背中は小さいはずなのになぜかとても大きく見えた。
「走れる?」
その声は冷静でとても落ち着いていた。
とても赤の他人に自分の寿命を差し出してるようには聞こえなかった。
少女は頷いた。
恐怖からか、声は出なかったが少女は走るのを再開した。