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それから目まぐるしい日々が続いた。
ワンスはツードの資金援助により、まずは店舗を得た。それだけでなく、ツードは信頼できる部下を赴かせ、無償で商売のノウハウを徹底して叩き込むという手厚いサービスもあった。
ワンスの技師としてのセンスや技量は良くはないが悪くもない。レベルを下げれば及第点。
そこで店舗には小物の販売コーナーも設けるなりして、売上の足しになるようなアイデアを加えた。ワンスは工場で得た技術のなかには木材や鉄を加工するものもあり、小者くらいならちょっとした道具があればいくらでも作れるのだ。
一年後───ワンスが千載一遇の好機を得て営業する店舗は、一応黒字を出せてはいる。
というのも、ツードが資金援助をするだけでなく、広報に情報を広げたためだ。お節介に近い。
ツードの名声は優れている。ツードが目を付けたとあらば、彼の傘下に入った者、あるいは恩がある者、あるいはこれから取り入りたい者は、どんな場所に機転が隠れているのか目を皿のようにして探しているだろうから、必ずワンスの店に訪れ、大した依頼をしていないにも関わらず、終了した修理品の完成度やクオリティが低くとも、絶対に高額な報酬を押し付けて帰る。
残念なことにワンスひとりで得た功績ではないのだ。
が、それでもワンスは満足していた。
去年までは考えられなかった待遇。ホームレスと顔馴染になるくらいの民度だったはずが、店を任される責任者となった。純利だって五倍はある。もう食費を切り詰めなくてもいい。好きに食べて好きに飲んで。ハブに行けば女を口説く。暇さえあれば推理小説を読みふける。
最高な日々だ。田舎の両親が知れば驚くだろう。
なんだったら仕送りをしてもいい。条件は、「出て行く寸前まで罵ったことを地面に額ずいて謝罪すれば」だが。
そしてある日、ツードの家族で行うホームパーティーに招待される。家族のみならばと断ったが、「お前はもう息子のようなものだ」と押し切られた。田舎の両親よりも信頼しているツードに息子扱いされて、喜ばないはずがない。
ワンスは別荘に向かい、そして───ツードの死を目の当たりにした。
持前の推理力が猛威を発揮。館にいたワンスとツードを除外した八人のうちのひとりが犯人だと突き止める。
で、
「あなたはまだやり直せる。さぁ、立って。罪を償ったあとで新しい人生をグベアッ!?」
犯人を立ち上がらせようとして、背後から接近した何者かにワンスは刺殺された。
やっと第一章が終わりました。
ツードを殺したのは誰なのか、ワンスを殺したのは誰なのか。てかワンスまで死んでるのに続きがあるのか。
いやまぁあるんですけどね。ここからが本番です。
四つの勢力が疑心暗鬼になりながら好き勝手にやっていきます。
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