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5-3


「ククク………なんだ、こりゃ………全部、わかっちまった」



 寝室の奥に進めば進むほど見えてくる。


 あるものは巧妙に。あるものは杜撰に。トリックが仕込まれていた。



「あー………そうか。だからツードさんを酩酊させる必要があったんだな。酔っ払ってれば、部屋の汚れなんかそこまで気にならないし。そこになにがあるのかなんて、気にもならないよな」



 床、壁、天井───すべてを見渡して、笑いが止まらなくなる。



「ああ、スッキリした。お陰で全部繋がったよ。トリックとしてはお粗末だけど、こりゃすごい。こんなの見たことがない! 前代未聞だ! なんでこうなっちゃったのかなぁ。狙ってたにしても、こりゃあ………クックック」



 床にしゃがんだワンスは笑い声を殺そうとするも、またひとつ見つけてしまい、さらに笑ってしまう。


 こりゃあダメだ。と直感で悟り、誰かが声を聞きつける前に寝室から出た。なるべく自分が入った痕跡を消しながら。


「あー、笑った。こんなの、どんな小説でも書けないぞ。いや、見たことがない。なんの偶然かは知らないけど、事件前に戻れてよかった。俺からこれから書く小説は、もっと深みを増す。だとすれば………俺がこれからやることはひとつだよな」


 ひとしきり笑い終えたワンスは廊下を行く。階段付近で声が聞こえた。



「ツードさん!」


「お? おお、ワンスではないか………ではない! お前、あれだけ寝ろと言っておいたはずなのに、こんなところでなにをしている!?」



 勇者の凱旋を三十分以上は継続していたツードが偶然にも下にいたのだ。


 声をかけずにはいられなかった。



「俺のことなんてどうでもいいんですよ!」


「ぅおっ!?」



 段差を飛ばす勢いで駆け下りたワンスは、ツードに迫る。



「ツードさん。この前本で読んだんですけどね。飲酒後の運動は体に良くないんです。ああ………ほら、顔色もよくない。これ以上は本当に障ります。ツードさんこそお休みになるべきです!」



 ワンスの瞳は、少年のように輝きに満ちていた。



 それこそ、踏み込めば死あるのみという地雷原に、恩人を叩き落すしかないという欲望で満ちた目だった。






 ツード・ナンバーズ。四十三歳。


 ナンバーズといえば三代に渡り、企業を発展させた名前だ。


 ツードは三代目として二代目を超越する勢いで仕事に没頭し、さらに地位と名誉を手にした。


 国の重鎮、王も謁見済み。政治家とも強いパイプがある。


 事業発展のためなら手段を選ばなかった。噂になっていた右肩上がりの企業があれば、目障りだからとマフィアに依頼して潰すような真似をした。


 当然治安維持のため警察も動くが、そこのトップたちともすでに繋がりを得ていたため、金を握らせて黙らせた。


 すべてが順風満帆で、満ち足りた人生のロードマップを進行し、いずれ国から称えられる存在となる。


 それがツードのすべてだった。




 だったのに───


やはりワンスは下衆でした。信じられます? こんなのが主人公なんですぜ?


で、次回からツードの回想に入ります。


笑えます。きっと。そしてなんと、まだ中盤だというのに型破りなこともします。でもそれでいいのです。誰が犯人なのか、きっと理解できます。

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