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別荘を走り続けて二十分が経過した頃。
ワンスは結局、ツードもシックサも発見できなかった。寝室にはいなかった。まだどこかを行進し続けているに違いない。
そこで、一度ロビーに戻ることにした。もしかしたら隠れているかもしれないと希望を抱いて。
しかしそこにいたのはツードではなかった。
「セブンヌさん?」
「あっ………」
白くなった毛髪を激しく乱したセブンヌが、少しばかり濡れながら出入り口を閉めたのが見えた。
つまり外にいたのは庭師のセブンヌだったというわけだ。
「ちょ、ちょっと。濡れているじゃないですか。どうしたんです?」
「お気遣い痛み入ります。ワンス様もご存知でしょうが、この館には飼い犬がいまして。それがもう、大食らいでしてねぇ。いつからこんな贅沢を覚えたんだか、この時間に食事を要求するようになったんです。食べさせないと、誰に似たのだが、猛抗議のつもりか明け方まで遠吠えを続けまして。ツード様はもちろん奥様やフォーム様、ファイヴァ様、そしてワンス様の睡眠の妨げとなります。今宵だけは特別に夜食を与えていたのですよ。その甲斐あって、やっと大人しくなりました」
「そ、それは………お疲れ様です」
「いえいえ。皆様の快眠を守るのも私のしご───いえ、失礼しました。いけませんね。歳かな。もう、そうではないというのに」
セブンヌは儚げな表情を浮かべ、ジャケットを脱ぐ。
「では、私はこれで失礼します。今夜はそこまで冷えはしませんが、念のため温かくされてお休みくださいませ」
流麗な仕草で頭を下げ、セブンヌは自室へと足を向けた。
ワンスはその背中に視線を向ける。
「………思い出した。犬小屋って確か、室内にあったはず。でもなんで外で犬に餌やりなんてしてたんだ………?」
同時刻。
フォームに逃げられたメイドのエイメは、二階の窓から闇夜のなかで佇み、霧雨よりも強めの雨のなかでジッと建物を見上げる存在に気付いて外に出た。
「ギルティちゃん。もうお家に戻る時間ですよぉ、ギャンッ!?」
大型犬の名をギルティという。エイメもこの別荘を訪れた際はよく世話をしているので懐かれていた。ギルティは嬉しそうに尻尾を振ってエイメの接近を心待ちにしていた。
そしてあと数メートルというところで、エイメはなにかに足を取られて転倒した。清潔感のあるエプロンドレスが泥で盛大に汚れてしまった。
「うぅぅ………な、なにぃ?」
エイメは涙目になりながら足に絡まったものを見た。
エイメかわいい。




