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3-3 

 ワンスが足を運んだのはロビーだった。


 招待客が大勢いたとしても二十人は収容できる広域。まるで一流ホテルのそれだ。



(確か、前回もこんな天気だったな………)



 心のなかで呟くワンス。口にすればなにかが変わる気がした。


 朝から続く曇天は陽光を遮るも、夏がやっと終わった季節ゆえ、暖炉に火を入れずとも過ごせる。


 この曇天は雨を呼び、確かこの時間から降り出す。すでにポツポツと雨粒が窓を小さく叩いている。


 外はすでに強風が吹いていて、壁で遮られていても木の葉の擦れる音が怨嗟の大合唱めいて激しく響いた。


 窓から暗がりを見る。前回もそうした。


 記憶にあったのは、雨に打たれながらも外でなにかの作業をする誰かがいた。特にそこには疑問がない。なぜならこの別荘には一匹の犬が飼われているからだ。


 広い敷地内に放牧同然にされた大型犬は、体力が有り余っているのか、接近した何者かを快く受け入れている様子。天候のことを考えてリードを繋ぎ、犬小屋に戻すための作業をしているのだろう。



「………おっ。誰かと思えば………あんたかい」



「テンガさん。本当にまだ飲まれるとは。お強いですね」



 窓越しに映った男が朗らかにしながら近寄ってくる。ワンスは振り返りながら笑顔を浮かべた。


 基本的にこの男は信用ならない。


 故郷の村にもこういう類の男はいた。いつも笑顔でいるが瞳が笑っていない。あまり良くない噂まであるくらいだ。よく村を出ては稼いで帰ってくる。村の外に仕事を与えてくれる奴がいて、ハイリスクハイリターンではあるが、実入りを優先する傾向にあるので躊躇いはないという。


 その男はワンスが村を出る半年前に死んだ。村の郊外で惨殺されていた。父曰く「他人から、それも多くの人間から恨まれていなければ、こうはならない」らしい。多分、相当あくどい所業で稼いでいたのだろう。


 テンガから、あの男と同じ空気を感じる。だから信用できない。


 ただテンガはツードの身内で、兄の誕生日を祝うために訪れた。ワンスだけが露骨に接することを拒むわけにもいかない。ある程度のラインを引き、接待用の笑顔を浮かべた。



「これでも十三の時から飲み続けてるんだぜ? 酒なんて俺にとっちゃジュース同然よ。………なぁ、あんた。今日は大人しくしてた方がいいぜ。この別荘はな、出るんだってよ」



「なにがです?」



「幽霊さ。アッハッハ!」



 テンガは蒸留酒を片手に、ご満悦で去っていく。


 この会話はすでに経験している。幽霊についても。


 だが、語調がわずかに異なる。前回よりもトーンが落ちていた。今回は忠告の色合いが濃くなっているとも感じ取れた。


さーて、ここから面白おかしくしていきます!


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