夢は覚めて悪夢の現実
あしたからはなみだおろぼろでもいい~から~
きみとお~え~らんだみちをはしろう
あしたから~はなみだおろぼ
「黙れっての」
「いい曲じゃないですかあ」
「何を気持ちよく歌ってたんだよ」
「もちろん拓さんの歌ですよ、『明日はぼろでも』」
やっぱネーミングセンスねえな
なんだろね おろぼろて
「あしたから~は」
「うるせええええっっ」
雪でぬれた服が余計冷えてきた
あーあーあー
来ねえなあああ
「救急車の落としません?」
「音?」
そいつの惚けた顔は無視して耳を澄ます
あ 聞こえる
まさかね まさかな
だって あり得ないって
「駅の近くの病院に入っていきますね」
嘘嘘嘘嘘
走ってた
気がついたら走っていた
病院へ 病院へ 速く速く
「まだ確定した訳じゃあ・・ないっです」
じゃあなんだよ
じゃあこの胸騒ぎはなんだ
「そこ曲がってっ・・近道いい」
踵で曲がる 音が鳴る
頼むよあと10秒で着いてくれ
春海が浮かぶ
明日は二人で買い物しよっか デパートもね
こないだ瑠菜の言ってたpv見たよ
pvって何の略かね パーフェクトヴァイオレンス?
「走馬灯じゃないんだよっ」
あほな春海 でも約束守るやつ
病院 重症 春海
「そこですそこおっ」
救急車の担架に乗る人影
だらりと垂れた腕にはブレスレット
そうだ あれは・・
あたしが春海にあげたやつ
「うああああああああぁぁぁぁっっ」
咆哮 悲鳴 何かが体から出ていく
何だったの今日 あの楽しい時は
駅で過ごしたあの間に
春海に何が起こったの
「あーあ、ご対面ですか」
衿菜の声が変わっていた




