初めての戦闘
「ぎt;*s^sあghk!」
こちらの攻撃を斧で防ごうと相手は振り下ろして来たものの、斧を破壊して斬りつけることに成功し、炎に包まれ消滅する。
「仁太、前を見ろ!」
剣の力に驚き呆然としていたところに、後ろからサーガさん飛んで来てはっとなった。女性の手を引っ張っていた緑色の人がもう一人いたのを思い出し、前を見たがいつの間にかその場を離れ山道を駆け下りている。
凄い速さで移動しており、このまま追うより今は女性の救出をした方が確実と思ったが、サーガさんから追ってあのゴブリンを倒せと言われる。
あれが小説にも出ていたゴブリンか実物は初めて見るな、と感激しつつ追うべく走り出した。一目散に逃げだした感じに見えたので、しばらくは真っ直ぐだろうと考えこちらも同じように走る。
靴を履いてないので足全体が痛いが、今は我慢しようと堪えながら追いかけていると、やっと視界に先ほどのゴブリンを捉えた。
なるべく気付かれないよう移動しようとしたものの、勘が良いようでこちらに気付かれてしまう。このままでは道を知っている相手に追いつけないと思い、なにかぶつけられる物は無いかと探していた時、左手首にいつの間にか縄が括りつけられているの気付く。
縄の先には少し尖った槍の先のようなものが付いており、これは武器なのかと思って見ていたところ
―羂索という。悪しき者を捕らえるのに有効な物だ。
頭の中に剣を貸してくれた人の声が聞こえ、縄の名前と捕獲する物だというのを教えてくれる。羂索かと頭の中で復唱し、頼んだぞ羂索と言って先の部分を相手に向かい放り投げた。
こちらの物が動き出す前に背を向け走り出していたゴブリンに対し、ホーミング機能でもあるかのように追尾し、体へ巻き付くとこちらへ連れて来てくれる。
このまま連れて行ってサーガさんに対応を聞こうと思っていると、羂索は手前で説けてしまい、ゴブリンはこちらへ襲い掛かってきた。
「でりゃぁああああ!」
相手は武器を持っていなかったが本でも力があると書いてあったし、悪なら斬れる剣で斬った方が間違いない、そう考え先ほど体が勝手に動いたものを真似てみる。
ゴブリンに見事命中し光の粒子となって相手は消えた。自分で狙って当てることが出来たとホッとしつつ、女性を救出していないのを思い出し急いで来た道を戻る。
「急げ仁太、このままだと不味いことになるぞ」
元来た道を戻ると女性を押しつぶしている物に背を当て腰を落とし、サーガさんは体を押し付けながら立ち上がろうとしていた。
慌てて手伝おうとするも女性を先にと言われ、急いで手を取り引っ張り出す。女性は足を怪我したようで地面に膝を付いたので、おぶりましょうかとしゃがんで背を向けるも、結構ですと声を荒げて言われてしまう。
やっぱりカッコいい人間が言うのでもない限り、こういうのは余計なお世話なんだなと思いつつ、サーガさんのところへ移動する。
サーガさんは女性に対し急いでこの場を離れなければならない、荷物は諦めてくれというも、彼女は形見の品だけでもと食い下がる。
どうすると聞かれたので形見は大事なのでそれだけでもというと、少し考えた後でそれもそうだなと同意してくれ、女性を押しつぶしていたものを二人で起こす。
見れば馬車の客室が彼女を押しつぶしていたらしく、扉を開けると中が散乱していた。悲鳴を上げてこちらを押し退け、急いで中に入ると戸を閉める。
早めにお願いしますゴブリンの仲間が来る可能性が高い、とサーガさんは告げると中から急ぎますと返って来た。
やはりゴブリンは仲間を呼んで集団で襲って来るんですか、とたずねるとよく知ってるなと驚かれる。
天使から借りた小説で読みましたと答えると、やっぱ学生の時ってそういうの読むんだなと笑いながら言ったので、サーガさんはと聞くと読んでないと答えた。
特殊な環境で育ったから読む切っ掛けも無かったと続けて言い、それ以上は聞かない方が良いなと考え、僕も彼女から渡されてそういうのは初めて見ましたと合わせる。
「お待たせしまた。あの、そちらの方、こ、これを」
元の世界の話を続けるのは不味いと考え、この世界のことを聞こうとしたところ、女性が中から出てきた。長い髪を後ろでまとめ緊張が解けたからか表情が和らいでいて、年上かと思っていたが少し背が高い同年代な気がしてくる。
彼女は綺麗なドレスを着ておりお金持ちなのかなと思って見ていたところ、なにかをこちらに向けて差し出された。
差し出された物を見ると女性物の洋服だったので、さすがに女性物を着るのは変態に見えませんか、とサーガさんに聞くも女性にあなたは今変態ですと叫ばれてしまう。
どういうことだと思い首をひねった時、そう言えばなぜか裸だったことを思い出し、背に腹は代えられないと諦め着ることにする。
シャツはフリルの付いた女性物だったが、履く物はスカートではなくピンクだがスラックスだったので、これならなんとか誤魔化せる……よう祈りながら着用した。
「さてこれで多少マシになったところで、お嬢さんは彼か私に負ぶされてくれ。ここから先は全力で走って町まで行かなければ夜になる。夜に山や森に居るのは不味い」
なにか抗議しようとした女性だったが、自分のような異世界人ではないので事情は理解しているらしく、仕方ありませんと言って諦める。
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