表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/23

異世界人と異世界人

「君、こんなところで裸でどうした? 追い剥ぎボブゴブリンかティサウルスにでもやられたのかな?」


 目の前のとんでもない人物は優しくたずねてくれた。見た目は不気味だが良い人なんだなと感じ、先ずは自分の名を名乗ることにする。


「あの、自分は萩野仁太と言います。信じられないかもしれませんが」


名乗り終えた後で、この世界に来る前に話していた相手に言われた通り、別の世界から来たことと天使(あまつか)彩乃という少女も共に来たが、途中ではぐれてしまったことを伝えた。


「……そうか……君もか……失礼、名乗るのを忘れていた。私の名前は……そうなだ、サーガとでも呼んでもらおう。訳あって本名は名乗れんが、君と同じ異世界のそれも日本から来た人間だ」


 サーガさんの自己紹介は衝撃的だったものの、僕の世界とか言っていた人が彼を教師役に選んだ理由に納得する。


来たと言っても信用ならないだろうから、そう言って元の世界での話とここに来る経緯をしてくれた。明らかに自分の知っている話だったので安心する。


彼は自分の話をした後で天使(あまつか)彩乃のことを聞いて来る。知る限りの情報を話したが詳しくないのですぐ終わってしまい、ここに来た経緯となぜ自分に異世界から来た、と言ったのか聞かれた。


「……あの野郎、俺に借りが山ほどあるのを忘れすぎだろ」


 腕を組みながらサーガさんは空を見上げつつ憤る。しばらくしてから視線を戻し、アイツに言われたからではなく恩人の娘さんだと思うので、君と共に行動し彼女を助けると言ってくれた。


感謝の言葉を述べつつ頭を下げる。通学中に読んでいた異世界物では、同じ世界から来た人は最後の方にしか出てこず、最初は手探りだったので同じかと思っていたのでほっとした。


サーガさんから暗闇で話していた相手から、チート能力をもらったとか聞いていないかと聞かれるも、元仲間が作ったボディの話をしたところ首を振る。


何か不味いことを言ったかと思ったが、どうやらサーガさんも来た当初は多少アップしていたものの、世界には強い人たちが多く恩恵をあまり感じなったらしい。


「誰か! 誰か助けて!」


 アイツは神様のくせに本当に雑だとサーガさんは吐き捨て、僕の世界と言っていた人は神様だったのかと知り驚いていると、下の方から悲鳴が聞こえてきた。


天使(あまつか)かもしれないと思い体が自然と声へ向けて走り出す。うっそうと生い茂る森を駆け抜けていたところに、再度悲鳴が聞こえその方向へ向きを変える。


木々の間を走り抜けていると山道が現れ、そこになにかの下敷きになった金髪の女性とその手を引っ張る、緑色の肌をした腰蓑(こしみの)のみを履いた人がいた。


女性は明らかに嫌がっており、手を引っ張るのを止めろと声を上げながら近付く。緑色の肌をした人はこちらを見ると右手だけは無し、口笛を吹き始める。


何をしているのかは分からないけどその手を離せと言うも、ニヤリとしてから何かの言葉を発し笑った。


異世界に来たから言葉が分からないのか、そこくらいはチート能力を付けてくれよと憤りつつ、女性を助けるべく緑色の人の手を取ろうとする。


「ギャグェウ!」


 突然上の方から叫び声が聞こえ、その方向を見ると何かが飛んで来た。ゆっくりとスローモーションのように見えたそれは、手を取ろうとした人と同じ姿をしており、違うのは右手に斧を持ち振り被ってこちらに来ていることだ。


やられる、直感でそう思った。天使(あまつか)を助けるどころかどこにいるかすら分からない、こんな序盤で死ぬなんて笑い話にもならない。


冗談じゃないぞ……絶対に彼女を助けるまで死んでたまるか!


―少年、力を欲するか?


 声が聞こえると突然周囲が暗闇に閉ざされる。まだ相手がこちらにも来ていないのに死んでしまったのだろうか、と慌てていると


―もう一度問おう。少年、力を欲するか?


 どこからか低く威厳のある声がした。前にこういう空間で話した神様とは違うようだ。問いに対して力が欲しいです、そう正直に答える。


普通の人間より上に強化されても簡単に殺されてしまう世界なら、武術の経験もない自分では何度死んでも天使(あまつか)を助けられないだろう。


本当なら少しずつ鍛えていくのが正しいのだけど、ここで死んではそれも出来ない。悪い神様とかそういうのでなければ、是非力を貸してほしいと願った。


―お前の願いは聞き届けた。その代わり条件がある。人によっては難しいかもしれないが。


 間を開けずに条件を教えて欲しいと伝えたところ、条件は三つあると言われる。ひとつは人助けをすること、もうひとつは悪しき者を倒すこと、さいごのひとつは悪いことをしないことだ、と提示された。


自分に出来る範囲では人助けはすると約束し、悪しき者の見定めがわからないが分かる範囲での対処を約束、悪いことをしないのは親の教えで自分に返ってくるのでしない、と答える。


―それで構わない。お前の心根は見ていたが、我が力を貸すのに申し分ない少年とみて声を掛けた。ならば契約の証として我が剣を貸そう。


 暗闇の中で漂っていると突然、目の前に金色に輝く不思議な形をした剣が現れた。剣の(つば)と手を持つ部分の一番下である柄頭に、牛の角のようなものが付いている。


―剣の名は三鈷剣(さんこけん)。悪しき者しか斬れぬ故、気にせず振るうがよい。剣で斬れたものこそが悪なのだ。


 言葉が終わると剣は輝きを強くし暗闇を塗りつぶしていく。白く塗りつぶ終えたところで、剣はこちらの目線の高さに手で持つ部分である握りを見せてきた。


持てということなのだろうと感じ、握るとあっという間に元の景色に戻り、斧が振り下ろされる寸前に戻される。


え!? どうしたら良いんだ!? と大混乱に陥っていると


火焔斬(かえんざん)


 頭の中に声が聞こえ


火焔斬(かえんざん)!」


 そのまま口に出すと剣に炎が宿り、上段の構えを体が勝手に動いて取り相手を斬りつけた。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ