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悪を飲み込む炎! 超必殺技・迦楼羅炎!

「……アンタ本当に何者なの? あの黒騎士(ブラックナイト)と知り合い?」


 黒騎士(ブラックナイト)に蹴り飛ばされた魔族の少女メリンは、ゆっくりと左肩を抑えながら戻ってくる。


勘違いだと自分の感覚を抑え込みながら告げたところ、あっそうと興味なさげに返してきた。今はあの敵を処理するのが先決だとサーガさんに言われ、頷き移動しようとしたものの


「残念だけどお前たちの相手は私よ? それとも私を野放しにして良いのかしら?」


 そう言いながら右掌をこちらに向けた次の瞬間、黒い炎の玉が放たれる。自分たちだけなら逃げる選択肢もあったけど、他にも兵士がおり逃げれば彼らが死んでしまう。


「剣よ、来い!」


 こちらも手を突き出して三鈷剣(さんこけん)を呼び出し、ボールを打ち返す感じで相手の放ったものに対し剣の腹を立て弾いた。


「な、なんなのよそれ!」


 打ち返されたことが無いらしく、メリンはマントの隙間から腕を出して交差し、打ち返したものを受ける。


出した腕には篭手を付けていたものの、防いだ代償か吹き飛んでおり素肌が露になり傷がついていた。


「癇に障るわ……たかが人間如きに私の黒炎弾を弾き返された上に、けがまで負わされるなんて……。元々生かすつもりは無かったからどうでも良いけど、ボロボロにしてから止めを刺してやる」


 メリンの眼は赤く染まり瞳孔が六芒星に変化する。先ほどまで感じていた圧がさらに増し、近くの兵士たちが身を震わせ堪らず膝をつく。


「仁太! 偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)を!」

「はい! 偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)!」


 サーガさんからの指示を受け、直ぐに偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)を呼び出した。背負う炎の影響か、兵士たちの震えが徐々に止まり立ち上がれるようになった。急いで他の兵士たちに知らせるよう促しながら、剣を両手で持ち構える。


「お前の背負っている焔なら、短時間の飛行が可能になる。だが気を付けろ、降魔火焔斬(ごうまかえんざん)を放った時のように、いつ意識が飛ぶか分からん」

「わかりました!」


 なぜサーガさんがこの力の詳細を知っているのか疑問に思ったけど、それはあとで聞くとして今は目の前の魔族を倒すことに集中しよう、そう頭を切り替え塀の上から跳躍した。


「……どういうことなのかしら? 私が聞いていた話とはまるで違うんだけど」

「くらえ!」


 出来れば少しでもメリンから情報を得たかったが、サーガさんが言うように恐らくこの力を長時間使うには、今の自分には何もかも足りない。


焦るつもりは無いが無駄に時間を費やす訳にもいかないので、一気にケリをつけるつもりで斬りかかる。


こちらを見下しているのか回避されはしたものの、マントへ剣に宿った炎がかすって移り、あっという間に広がってメリンを包もうとした。


異変を感じ素早くマントを脱ぎ棄てた彼女の首から下は、黒騎士(ブラックナイト)よりも肌の露出部分が多い黒い鎧を身に着けおり、腰には短剣を二振り佩いている。


短剣使いであれば異世界物だけでなくゲームの知識から考えても、機動力を生かした戦闘を得意とするタイプに違いない。


「人間如きが私のマントを剥がすなんてね……ふざけるんじゃないわよ!」


 鼻で笑ったかと思いきや突然激昂し、こちらへ向かって鬼の形相をしながら突っ込んで来た。ギリギリまで引きつけてから避け背中へ斬りつけようとしたけど、卑怯に感じその手を止める。


「アンタ私のこと馬鹿にしてるの……? 斬れば戦いは終わったかもしれないのに」

「お前のことがどうとかじゃない……僕はお前たち魔族とは違うんだ。なるべくなら背中から相手を斬るようなことはしたくない」


 彼女も感じているように、今の自分は他の人間たちよりも明らかに力があったけど、それはこの力を貸してくれた人のお陰だった。


正義を成し悪を斬れという契約をしているのなら、特にこの力を借りている時は突っ張りだとしても、その部分を極力護りたい。


「くだらない! 死ね人間!」


 俯いて身を振るわせた後でそう叫び、腰に佩いた短剣を左右の手其々で引き抜いて、こちらへ向かって斬りかかってくる。


炎のお陰で彼女の圧に後れを取らなくなり、さらにサーガさんとの剣の稽古のお陰でなんとか凌げていた。


「人間の癖に私の攻撃を防ぐな!」


 確かに異世界に来るまでは何もしてこなかった人間が、戦闘のプロと思われる魔族と戦えている。自分にはチートが無いと思っていたけど、ひょっとしてあるのだろうか。


「くっ……なぜ通らない!?」


 それまで力任せに斬りつけてきた攻撃のリズムを変え、こちらの下腹部目掛けて突きを繰り出して来た。これは防げないと思った瞬間、剣が自然と動き突きを剣の腹で受けるように動いてくれる。


「な、なんだ……?」


 攻撃を凌ぎ続けていた時、突然右の手首から手の先が熱くなるのを感じた。なにかくるという漠然とした予感を感じつつ、攻防を繰り広げていると


―お前には力があるようだ……この力、使ってみるが良い。迦楼羅炎(かるらえん)を。


頭の中に力を貸してくれている人の声が飛び込んでくる。また新たな力を貸してくれるんだと喜んだものの、最後の技名をどこかで聞いたことがある気がした。


あれはたしかお祖母ちゃんと出掛けたお寺で聞いたような……。


迦楼羅炎(かるらえん)……?」

「やめろ仁太! その技はまだ!」


 サーガさんが叫んでいたが両手が自然とメリンへ向き突き出され、背中の炎が強く輝き始める。


「技など出させるか!」


 右手の短剣を上げ左手の短剣を突き出しながら、メリンはこちらへ向かって突っ込んで来た。


迦楼羅炎(かるらえん)!」


 自然と口が動きそう叫ぶと両掌から縁の濃い炎が湧きだし、突っ込んで来たメリンをあっという間に飲み込んで大地に落ちる。


見れば塀の周りにいた敵たちをも飲み込んで行き、皆光の粒子に変えてしまった。とんでもない技を教えてくれたなと感激していたのも束の間、あっという間に意識を失ってしまう。

 

読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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