チュートリアル、は終わった。なぜお前がいる。
オープニングが終わってあたしは、草原の中にいた。
【チュートリアル 今の身体に慣れよう】
目の前にテロップが流れてあたしは体を揺らした。
周りの背が高いはずなのに、リアル体系の目線が変わらない…のは身体が浮いてるせいか。
上下左右、前後に動いて徐々に身体を馴染ませて行く。
【チュートリアル ステータスの確認をしよう】
下の方に書かれているアナウンスに従って、手をスライドさせてステータスを開け閉じる。
そして今度は「ステータスオープン」と声をかけてステータスを開けた。
名前:フィーア
種族:シルキー(妖精) Lv.1
職業:メイド Lv.1
HP:1/1
MP:15/15
STR:1
VIT:1
AGI:5
DEX:14
INT:8
MND:1
スキル:攻撃無効 物理無効 魔法無効 状態異常無効 重量装備不可 浮遊 生活魔法Lv.1 料理Lv.1 採取Lv.1 調薬Lv.1
称号:天下無敵の大博打
お、自分が妖精さんになってる。
なってる…けど待って?待って?
なんかステータスおかしくない?
まあいい。これは多分レベルアップごとに振り分けしたらいい。
でも、スキルがぱっと見めっちゃいい!
武具のスキルがないけれどこれはやばくない?
スキルの確認してみよう。
【攻撃無効】
パッシブスキル。敵に物理、魔法でダメージを与えることができない
待って待って待って待って待って。
詰みスキルゥゥゥゥ!
ま…まぁいい。生産したらいいんだ生産。
レベルは生産とかで上げたらいいんだ。
【物理無効】
パッシブスキル。敵から物理攻撃を与えられることがない
【魔法無効】
パッシブスキル。敵から魔法攻撃を与えられることがない
【状態異常無効】
パッシブスキル。状態異常にかかることがない
【浮遊】
パッシブスキル。飛ぶことができる。そして地に足がつくことはない。
え、なんてチートスキルオンパレード。
やばない?
【重量装備不可】
パッシブスキル。合計重量20以上の装備不可
物作りも鍛冶屋はできないことが判明。
なにしろ、装備欄は手、頭、服、ズボン、足、カバン、アクセが4の10コだ。
鍛治で使うハンマーとか重量がないと仕事できないってあたし知ってる。
でも待って。あたしなんの装備できるの。
【生活魔法】Lv.1
アクティブスキル。生活魔法が使える。
Lv.1クリーン
【料理】Lv.1
アクティブスキル。料理ができる。
Lv.1焼く料理に補正
【採取】Lv.1
アクティブスキル。採取に補正がかかる。
レベルが上がるごとに補正率アップ。
【採掘】Lv.1
アクティブスキル。採掘に補正がかかる。
レベルが上がるごとに補正率アップ。
【調薬】Lv.1
アクティブスキル。調薬ができる。
Lv.1蒸留水に補正
これであたしの生産方針は決まった。
調薬と料理だな。
というところで称号を見た。
【天下無敵の大博打】
キャラ設定でオールランダムを初めて使用した人に贈られる称号。
一度だけならすぐにキャラの作り直しできますよ。
運営がキャラリセット勧めてくるぅぅぅ!
内心号泣しながら次へスライドすると、どこかのお屋敷に場面が変わった。
【装備をセットしよう】
メニューを開いて装備を見てみる。
手:木の箒
頭:布の三角巾
服:布のワンピース
ズボン:なし
靴:布の靴
アクセ:なし
木の箒をセットすると次の指示が出て来た。
【この部屋の掃除をしよう】
そう…じ?
しょうがないので天井付近からポスポス埃を落として行く。
そういえば掃除スキルないぞ、おい。
浮遊が便利ー。ポスポス埃を落として落としてふと気づいた。
なんか魔法欄が光ってる。
生活魔法ぉぉぉぉ!
「クリーン!」
差した方向一画が綺麗になる。
お前かァァァ!
「クリーン!」
差した方向が一画が綺麗になる。
ところでこのミッション、どこに冒険要素があるんでしょうか。
MPが途中切れたので回復するまで休み、時間をかけてクリーンを連発するとミッションをクリアしました。の文字が流れた。
【チュートリアルをクリアしました。ギルド登録をしましょう】
場所が変わって建物の前に来た。
冒険者登録は物語の始まり。
とりあえずミッションをこなしてレベルを上げよう。
そしてスキルポイントで新しいスキルを取ればまた色々やりやすくなるだろう。
どうにかこうにかして冒険者にさえなればきっと何とかなるはず。
自動的に建物の中に入るとそこは厳つい男たちがたくさん…いなかった。
メイド服を着たウサギ娘。タキシードを来た羊男。
ワンピースを着た花の妖精。
…。とーっても嫌な予感がするんです。
そして窓口に行くとニッコリの受付のお姉さんが微笑んだ。
「いらっしゃいませ、メイドギルドにようこそ。登録ですか?」
冒険者ギルドですらなかったァァァー。
「…はい、お願いします」
「はい。それでは説明します。メイドギルドは、家政婦をご依頼者の元に送るギルドになります。メイドギルドのランクはSが一番上でA〜Fランクでクエストをクリアしていってランクを上げていきます。クエストボードからクエストを受けてランクを上げていってくださいね」
ギルド証をゲットした。
その流れでクエストボードを確認するとどうやら料理の登録やら掃除のクエストがあるようで…。
そしてチュートリアルは終了した。
なお、冒険者ギルドに行ったところ、登録できなかったことをお伝えする。
※※※※
始まりの街。
そこは全ての始まりの街。
チュートリアルがおわれば全ての人がそこにおくられる。
そしてあたしはそこのベンチでひたすら項垂れていた。
攻撃スキルは全て取れない。
当然防御スキルも取れない。
なんなら注目を集めるような補助スキルも取れない。
ということはあれだ。
固定パーティどころか野良パーティすら入れてもらえない。
入れてもらえないということはレベルアップしないし、スキル治癒魔法とることすらできない。
治癒魔法とれたとして、よく考えてみるがいい。
パーティに入れるなら神官のほうがいいだろう。なにしろ回復の幅がそもそも違う。
寄生先が許してくれるかどうか。
てことは、まず所謂街クエをしてレベルを上げるべきか。
しかしFランクの街クエでレベルが上がるほど稼げるかどうか。
詰んだ。
本当に詰んだ。
あたし本当になんのゲームするつもりなんだろ。
「…で、なに「うっひゃぁぁ!」
隣から男の人の声がしてリアルに飛び上がって驚いた。
「あ…ぱ、パリスさんだぁ」
隣にいつものアバターで初心者服を着たパリスさんがいた。
パリスさんは、他のシミュレーションゲームで一緒にグループを組んでる人だ。
「あれ?パリスさんなんであたしがわかったの?」
いつもと違うアバターなのになぜだ。そしてなぜそこにいる。
「いや、偶然みつけて。で、何やらかしたんスか」
フレンド登録が飛んできたので即了承してパーティを組む。
パーティ会話にするためだ。
全方向の会話なぞ不用心にも程がある。
『んー…まあとりあえずこれを見て』
パーティメンバーにステータスを見せる、にチェックを入れてパリスさんにステータスをスライドする。
「おい、パーティ飛ばせ」
低い声がして身体に震えが走る。
口が渇いてきた。
頭が固定されそして強制的に向かされる。
「クリオネットさん…こんにちわ」
「はよしろ」
「ウィス」
クリオネットさんにパーティを飛ばすと秒でインがくる。そしてフレンド登録。
ステータスを見ていたパリスさんに指だけで寄越せと指示。
『これはヤバい』
苦笑してパリスがスライドして渡した。
クリオネットさんもシミュレーションで同じグループというか、あたしがリーダーで彼がサブリーダーというか。
ほぼ彼がグループを運営している。
ので。
あたしはこのゲームをすることを彼にバレないように内緒で始めたはずなのだ。
別ゲー始めるなんて怒られる怒られる絶対怒られる。
『パリスさんもう出れんの?』
『あ、私は大丈夫ですよ』
『んじゃ、行くか』
『待ってどこに』
パリスさんとクリオネットさんがさ、行くか。と踵を返した。のを止めた。
『レベル上げでしょう』
「ちゃー。ここ?ここでいい?フィーアさんパーティください」
女の子が走り込んできてあたしに抱きつく。
メロディさんだ。女の子だけどこれまたシミュレーションの同じグループの子だ。
パーティと共にフレンド登録も送る。
『すみませんあの、あたしが入ると寄生になるんですけど』
『フィーアさん寄生?寄生なの⁈』
『いや今更じゃないすか』
『あんたが寄生だろうがなんだろうが、うちのボスなんだから堂々といりゃいいんだよ』
最後のクリオネットさんの言葉にメロディさんもパリスさんもそうそう、と頷く。
いや、それじゃダメだと思うんです。
パーティ枠一つ潰すことになるんだぜ?
「きました!」
振り返ると数人の男女がニコニコと集まってきていた。待て待て。
「え、何でこの場所が皆わかるの」
そもそも、このゲームやるって言ってた?君ら。
グループを作ってたシミュレーションゲーム。それのメンバーたちが集まっていた。
ポンとパリスさんがあたしの肩を叩く。
「あのねフィーアさん。あんたのハード、フレンド登録してるからどこにいるかわかるんです。皆」
「そうそう。集まってるところに行けばいいんだよね」
全体チャットだろうが何だろうが構わない。
「嘘でしょォォォォォ!」
大絶叫が響き渡ったのだった。