加工ですわ!
「さて」
魔王城にて。
念願の鉱石、ウルガイトを目の前にし、ローザは手下を集めて会議中である。
「問題はわかっておりますわね?」
側近A「は。加工……でございますか?」
「その通り。誰がこの塊をティーカップにするのかという話ですわ」
元悪役令嬢ローザ。実はほんの少し人より不器用なのである。
「どなたか心当たりはありまして?」
側近A「鍛冶工芸といえば……流れ者のドワーフが数人、暮らしておりますが」
ドワーフ。
ファンタジー世界でよく聞く単語にローザのわくわくは止まらない。
「ドワーフ!それですわ!」
ローザが手を叩く。
轟音で手下たちの体が一瞬竦む。
「会いに行きましょう!」
側近A「は、こちらに呼ぶのではなくてですか」
「頼み事をするのですもの。こちらから出向かうのが礼儀ですわよ!」
言うが早いがローザはウルガイトを抱えドワーフの集落へと向かった。
手下の案内によりたどり着いたのは水辺の近い森の中数件の質素な小屋が立ち並ぶ、ほんの小さな集落であった。
「では早速……」
側近A「お待ち下さい。魔王さまが開けると破壊してしまいますので」
ドアに手をかけたローザを素早く制し、側近がかわりに開けてやった。
「お邪魔しますわ」
ドワーフ「!!?」
突然の魔王降臨にざわつくドワーフたち。
驚きと怯えが見て取れる。
「こちらの方々にお仕事を頼みたいのですの」
ドワーフ「……は、はあ」
恐る恐る中のひとりが前に進み出る。
身長はローザの半分にも満たない。
「こちらの鉱石。これを加工してもらいたいのですの」
ドワーフ「……!こ、これは……!」
差し出された鉱石を見て動揺する。
怯えて後ろに隠れていた他のドワーフたちもたまらず前に進みよる。
ドワーフA「なんと希少な……」
ドワーフB「ウルガイト……久しぶりに見た……」
ドワーフC「それもこんな大きいのはまず見たことがない」
ドワーフD「この光り方……純度も段違いだぞ」
興味深げにドワーフたちが鉱石を見る。
そうでしょうそうでしょう頑張って掘りましたものとローザはどこか誇らしげである。
ドワーフA「して。これをなにに加工したいのですかな」
ドワーフB「盾か……いや、この量なら鎧にしても良いですな」
「ティーカップですわ」
ドワーフA「ティ……え、なに……」
ティーカップ。
この希少な鉱石をティーカップに。
「わたくし専用のティーカップにしてほしいんですの!」
ドワーフ「……」
なんと言ったらいいかわからないが、魔王が言うのだからこう答えるしかない。
ドワーフ「承知いたしました」