プロローグ
新作です、よろしくお願い致します。
(ここは何処かしら……)
何も無い真っ白な空間に私はフワフワと浮いていた。
―気がついたかね?エリス・ポワナータ―
(え?)
いきなり名前を呼ばれ私は辺りを見回したが誰もいない。
―申し訳ないが姿を見せる事は出来ない、私は君達の言う所の『神』と呼ばれている者だ。―
「か、神様ですかっ!?」
私は驚きの声をあげた。
―エリス、君はこの空間に来る前の事を覚えているか?―
「この空間に来る前、ですか……、確か……」
私、エリス・ポワナータはポワナータ国の王妃だ。
貴族学園卒業と同時に婚約者でこの国の王太子であるルアモン様と結婚、数年後に前国王が崩御してアルモン様が国王となり私は王妃としてサポートしていた。
国王就任から1年後には跡取りである息子が生まれ幸せな日々を送っていた筈だった。
いつの頃からかアルモン様は執務をサボるようになりその皺寄せが私に寄ってくる様になった。
細かい書類の処理や外交スケジュールの管理、貴族婦人会のお茶会の準備その他諸々……、目が回るくらいの忙しさだった。
「確か執務中に急に心臓が苦しくなってそのまま意識が遠くなって……」
―そう、結論から言うと君は過労死してしまったんだよ―
か、過労死……。
私、まだ30手前だったのに……。
―因みにだが君の旦那さん、仕事をサボるようになった理由は浮気だよ―
「う、浮気っ!?」
―学生時代からとある令嬢と良い仲だったみたいでね、君に仕事を押し付けてヨロシクやっていたみたいだよ―
「し、知らなかったわ……」
―君の死後、旦那さんはその浮気相手と再婚するよ。息子さんも君の事を忘れて懐いているみたいだね―
「そんな……」
私はガクッとなってしまった。
何の為に私は王妃として過ごしてきたのか……。
アルモン様にとって私は都合の良い存在だったのか……。
―まぁ、そんな幸せな日々は長くは続かなくて結局国民の反感を買って彼等は破滅してしまうんだけどね―
「そんな先までわかってるんですか!?」
―神だからね、そういう事になってるんだよ、でここからが重要な話なんだけど、エリス、君は人生をやり直すつもりはないかい?―
「やり直す、ですか?」
―君の死はこの世界において大きな痛手だ。もう一度エリス・ルイアーズとして生きてみないかい?勿論、今までの記憶を持ってだ。もう一度王妃になるか、それとも別の人生を歩むかは君次第だ―
「あの、やり直すにしても赤ちゃんからになるんですか?」
―いや、君の人生の分岐点となる時、つまり君が王太子の婚約者になる前日に戻してあげよう―
アルモン様と会う日、つまり婚約者選定のお茶会だ。
あの頃の私はお父様の言いつけでアルモン様に気に入られようと必死だったんだよね。
「わかりました、人生をやり直します」
―よし、今度は悔いのないように頑張ってね―
そして、私は再び意識を失った。