娘に好きな人が出来たらしい
僕が娘の父親になってからもう6年近く経つ。小学生2年生の娘はそれはそれは可愛くて、本人から直接聞いたことはないが、何度か男子に告白されて断ったことがあるという。娘はモテモテなのだ。
そんな娘に、好きな人が出来た。これも本人から直接聞いたわけではないが、同じクラスのユウくんのことが好きらしいのだ。彼は中性的な顔立ちをしており、たまに女の子とも間違えられるような子だ。イケメンでもあるし、可愛くもある。
「ユウくんが好きなんだって?」
直接聞いてみた。父親として実は少し敵対心があるのだ。なので事実確認をしたい。
「え、なんで知ってるの⋯⋯」
娘は驚いたような顔をしてボソッと呟いた。
「当たり前だろ、パパはなんでも知ってるんだから!」
「えっ⋯⋯」
「そうだ、ママに聞かれたくないこともあるだろうし、夜にお風呂で話そうか!」
女親のほうがそういう話はしやすいかもしれないが、僕は娘を溺愛しているので、どんなことでも話してほしいのだ。
「え⋯⋯」
「どうしたの?」
娘が固まったまま動かなくなってしまった。道の真ん中でこんな、危ないじゃないか。
「ミサキ〜!」
娘の母親が走ってきた。ここはもう家の近くなので、声が聞こえたから出てきたのだろうか。
「あ、ママ! このおじさんが私と一緒にお風呂に入るって言ってるの⋯⋯」
「誰ですかあなたは! 警察呼びますよ!」
警察を呼ばれても怖くなどない。僕には失うものなど何も無いのだから。
でもさ、なんでダメなの?
ミサキちゃんめっちゃ可愛いんだよ?
ミサキちゃんお父さんいないんだよ?
父親になってあげたくない?
めっちゃ可愛いんだよ?
一緒にお風呂入りたくない?
ね?
分かるっしょ?




