8『ハリー・ポッター シリーズ』J・K・ローリング
いつも言ってる「翻訳家変えて」。
そんな状況でもがっつり読めるのは物語の力でしょう。
『ハリー・ポッター シリーズ』
J・K・ローリング
原書は英語がちょっとできる程度じゃわりと難しいのでふとんには無理。
そんな英国ファンタジー作品です。
前回ちょろっと名前を出したので「じゃ、次書こうか」となりました。
もう、どんな物語か語る必要がないほど有名な傑作ですよね。
魔法学校モノには『ハリー・ポッター』が影響を与えていること間違いなし。
子供の頃に読む『ハリー・ポッター』と大人になってから読む『ハリー・ポッター』は違う。それも魅力の1つだなと思いつつ、いつも通りやって参りましょう。
【魔法の世界は一歩隣に】
まずはこれが個人的にとっても魅力的なところ。
ふとんは現実に地続きなファンタジーが大好きなのです。
たった1枚の入学許可書でがらりと変わる日常。石の壁1枚隔てた向こうは魔法使いが闊歩する町。現実世界の空を飛び、車にだって魔法がかかる。
そんな、魔法が実は自分のすぐそばにあるんじゃないかと思わせる世界観が素敵です。
駅の柱、柳、猫をじっと眺めてしまうのも仕方がないかも。
でも、そういう「目」を持つことは大事でしょう。ふとんねこは数多のファンタジーから「見ること」の大切さを学んで今の書き手活動に活かしています。もしかしたらすぐそばにあるかもしれない幻想の世界を見逃さないために、意識は広く視野も広く、景色を眺めて空を仰ぐのです。
そう思わせてくれるファンタジーの1つが『ハリー・ポッター』のシリーズですね。
【ドラゴンよ……】
これも超個人的な魅力ポイント。
ふとんねこはドラゴンが大好き。いっぱい勉強しています。
『ハリー・ポッター』のドラゴンと言えば、映画で大迫力のバトルを見せてくれたハンガリーホーンテイルですね。あとは銀行でなかなか虐待な番人の役を負わされていたウクライナアイアンベリー。
この『ハリー・ポッター』でのドラゴンの何が好きかって言いますとね……
・生物の一種なこと
まずこれ。
西洋の作品はどうしてもキリスト教の影響があってドラゴンを悪役にしがち。『指輪物語』でもそうです。仕方ないですよね、生活に密接な宗教で散々に「悪いもの」と言われていればそのイメージから脱却するのはなかなか大変ですもん。
しかし『ハリー・ポッター』では、ドラゴンはあくまでも沢山いる魔法生物の一種。
しかも絶滅の危機とかで保護活動もされています。ワクワクします、とても素敵。
ドラゴンって、幻想生物の中の幻想生物って感じで、超大型な上持つ力も絶大。つまりは科学的な文明とは相容れない存在ってことです。人間の技術が発展して、地球のどこへでも人間の目が届くようになることで生息域も減っていく。だから彼らは姿を消していく。寂しいことこの上なし。
……あばば、脱線脱線。
とにかく、そんなドラゴンが悪役ではなく、単に生物の一種なのが嬉しいふとんでした。
・ネーミングセンス
そしてこれ。
『ハリー・ポッター』を知らない人でも、上記の2つの種類の名前を見てもらえばわかると思うんですが、この作品におけるドラゴンの種類名は基本「生息地+特徴」なんですよね。
それが何か、いいなって思うふとん。
現実と地続きのファンタジーってお話は前述の通りですが、この名付け方のお陰でそれが強調されるというか、いるのかなぁって思わせてくれるというか。そんなほっこりを感じるのでした。
……でも、保護対象の生物を「殺しちゃ駄目」のルールがあるとは言え、イベントで人間と戦わせるのはいいんでしょうか? ホーンテイルは谷底に落下、ファイヤボールは確か卵が割れた……まずいのでは。
【大人になると見えてくるもの】
主人公たちと同い年くらいで読むと「あるある」とか「分かる」という共感が数多く。
しかし大人になってからもう一度読むと「あれ?」とか「イライラ」が出現します。
主人公たちが等身大すぎるというかリアルすぎるというか。思春期のイライラがリアルすぎて、同世代の時には共感が勝って気づかないけれど、大人になると「イライラする……」と感じてしまうということがあります。
このイライラは、すごいリアルだからだよなと作者様の筆力に感心しますが、ちょっとそのリアルは削っても良かったのではと思っちゃうふとん。皆様はいかがでしょう。
それから、すごいおじいちゃんだと信じて疑わなかったダンブルドア先生のあれそれに疑問を持ったこともふとん的に驚いたこと。大人になると知識と思考力がついて、視点が増え、考えられることが増えるのだなと己の成長に感心しました。だから勉強は大事。
【魅力的なアイテムたち】
お菓子類はともかくとして、魔法薬や道具類にはワクワクが止まりません。
羽ペン欲しいと思いつつ、レポートを羽ペンと羊皮紙で書くのはキツイなと想像したり。
ファンタジーなアイテムたちはファンタジー作品の醍醐味ですよね。
子供心をくすぐるものが数多くあり、童心を忘れない大人としても未だワクワクします。
魔法薬学の教室に並ぶ試験管、小瓶、小鍋。製法が書かれた教科書をぜひ出版してほしい。
あとは箒。映画には出てこない箒の名前がいくつかあるのですが、何となく「分かる」と思える名前たちで、可愛いセンスだなと思っています。
魔法生物たちも魅力的ですよね。ただ、魔法生物を堪能するなら『ハリー・ポッター』より、今ホットな映画の『ファンタスティック・ビースト』で。
【正直残念、翻訳】
そして残念ポイント。
個人の意見ではありますが、本当に残念。濁すことなく残念。
いつも、いつか大手が再翻訳権獲得してくれないかなと思っていますが多分駄目。悲しい。
解けない謎解き、おじぎをするのだ、ちょっと特徴的すぎる一人称、表記がバラバラの固有名詞、何故かギャグ風味にされる作中の本のタイトル、ちょっと引っかかる魔法薬名、形容詞の変な翻訳、若干古い言い回し、耳慣れない嫌がらせあだ名に、おじぎをするのだ、児童書という括りに捕らわれすぎて消える下ネタ、日本語の誤用、おじぎをするのだ……
若かりし暇なときに図書館で並べて確認、をやったことがあるのですが(英語スキルが低くて全部は無理だったので気になるところだけ)本当に引っかかるところが多すぎる。
表記揺れの権化「ハウスエルフ」は本当にどうしちまったのかと思いました。
我が君が日本で圧倒的ギャグキャラなのも翻訳のせいだと思います(お陰で読者に愛されてるからいいのかもしれないけど。それとも元々厨二くさいからこれでいいのか……?)。なんなん「俺様」って……なんなん「おじぎをするのだ」って……
下ネタ言ったっていいじゃない、子供は分かんなくて、大人だけにやにやするんだから。
翻訳に癖がある作品はそれなりの数ありますが、これは誤訳と誤用と……つまり翻訳の問題以外に、日本語自体にも問題があるので、多くの人に問題視されているんですよね。
ほんと、いつか再翻訳して…………
以上になります。
本当に翻訳はね……あれなんですけど、全世界でヒットしているだけあり作品の力が強いので、面白く読めてしまうんです。もっと読んだ人全員が引っかかるレベルだったら再翻訳かかったんだろうな……
色々言いましたが、本当に面白いので、映画見たけど原作はまだ、という方は是非。
そしてそういう方の中で英語スキルの高い方は是非原書の方をオススメします。やっぱり物語は書かれた言語で読むのが一番ですからね。
それでは今回はここまで!
映画の話なんですけど、シリウス・ブラックは黒髪ストレートだろォッ!と思うのはふとんだけ?