4『妖怪アパートの幽雅な日常』香月日輪
現代が舞台ならローファンタジーって少し不思議。
という呟きとはあまり関係なく、今回ご紹介するのはこちら。
『妖怪アパートの幽雅な日常』
香月日輪
人の温かさとたまらねぇ飯テロ、ホラーもちょっぴりな傑作です。
悩むことが多い中高生にぜひ読んでほしいと思う物語です。きっと人生のヒントが見つかります。
そんな『妖怪アパートの幽雅な日常』、好きなところや読んで感じたこと、書いていきますよ。
【妖怪も人も、温かくてじんわり】
妖怪たちと、少し不思議な人とが一緒に暮らしているアパート。そこで暮らすことになった主人公は他者のぬくもりに触れていきます。
自分が若い頃、こんな人たちに出会えていたらと思わずにいられない、人の心を温かく埋める優しさに溢れた住人たちが魅力です。
若く青く、荒んでふらふらした心を、きゅっと掴まえてお話を聞かせてくれたり、一緒に寝てくれたりするような感覚になります。
また、アパートの住人たちだけでなく、主人公が学校などで関わっていく様々な人々も、素敵な人ばかりで、ふとんはよく憧れを抱きます。
しかし誰もが善人なわけではありません。主義主張の違いで、どうしても理解しがたい人にも出会います。そのとき主人公がどう足掻くのか、それもまた若人へのヒントになるでしょう。
【夜に読んではいけないレベルの飯テロ】
ほんとこれ。
現代モノだから知っているものばかり出てくる上に、心が疲れているときに欲しくなるほんわか温かなお出汁の香りや、優しい味わいが見事に描かれ、それ以外にも食べ盛りに嬉しいガッツリ系ご飯など、たまらない飯テロの数々をシリーズを通して食らいます。
るり子さんという方がアパートの共同キッチンにいらっしゃり、毎日素敵で美味しいご飯を作ってくれているのです。
彼女のお料理日記+レシピの本も出版されていますのでお料理好きさんはそちらも読んでみてはいかがでしょう。
美味しいご飯は心身の健康の基礎。
それを実感する飯テロでもあります。
みんな、しっかりご飯食べましょうね。
【とても読みやすい】
これは若者へのオススメポイントかも。
香月日輪先生の作品はどれもとても読みやすいんですよ。等身大の主人公と駆け抜ける、日常の隣の小さなファンタジー。読書に慣れていなくても、のめり込むように読むことができると思います。
ぜひ試してみてほしいなぁと考えています。
以上です。
香月日輪先生が亡くなってしまい盛大にショックを受けたあの日の記憶が今も消えません。
『妖怪アパートの幽雅な日常』シリーズは完結しているものの、途中だった『おじいちゃんと魔法の塔』の続きは読めなくなってしまったのです……哀しみ。
作家は死ぬのだ、と『グイン・サーガ』の先生と同じように私にドドンと衝撃を突きつけた出来事。
当たり前のことだけれど、意外と気づけていなかったりするかも。だって作者の顔は見えない。それはなろうと同じですね。
若者へのオススメを全面に押し出していますが、大人にも勿論オススメの作品ですので(大人としても憧れる人が多く登場しますよ)未読の方はぜひ。
それでは、今回はこの辺りで!




