2『廃墟シリーズ』仲村つばき
第2回には、本作を書くきっかけになった作品シリーズをご紹介。
『廃墟シリーズ』
仲村つばき
最近のお気に入りのシリーズです。
本当に面白くて、毎秒新刊が欲しい気持ちでいっぱい。
こちらは現在、2022年1月30日の時点で6冊出ています。
刊行順で並べると以下の通り。
1『ベアトリス、お前は廃墟の鍵を持つ王女』
2『廃墟の片隅で春の詩を歌え 王女の帰還』
3『廃墟の片隅で春の詩を歌え 女王の戴冠』
4『王杖よ、星すら見えない廃墟で踊れ』
5『クローディア、お前は廃墟を彷徨う暗闇の王妃』
6『神童マノリト、お前は廃墟に座する常春の王』
シリーズ一覧では2と3の前後編作が最初になっています。
これは1、4、5、6の舞台の過去編にあたりますから、刊行順に読むもよし、シリーズ順に読むもよし。
王位継承者全員が戴冠し、複数の王が立つ架空の王国を舞台にした架空歴史モノです。年代記の中の一部から、そこに生きる歴史の織り手である人々の様子を描き出した様々な人間関係の物語。陰謀に政治、恋愛や親愛など、様々な要素を楽しめる作品です。
それでは、前回やったようにいくつかの魅力ポイントや感じたことを書きます。
【魅力的な登場人物】
この作品の一番の魅力だと思っています。
自分の意志を強く持ち、道を切り開くために努力し邁進する輝くような女性陣に、優秀さとチャームポイントになるユニークさを併せ持つ素敵な男性陣。メインキャラクターもサブキャラクターも皆魅力的なのです。
誰もが欠点を抱えていて、それを補う大切な存在に巡り合ったり、自分自身を変えていかなければと努力したりする様はまさに「人間」であり、血の通った人間を描いた物語を愛するふとんにストライク。
ふとんが一番好きなキャラクターは『クローディア、お前は廃墟を彷徨う暗闇の王妃』の主人公クローディア。彼女の変化は目覚ましく、大変好感の持てる人柄でありました。そして可愛い。
そうした魅力的なキャラクターたちが、それぞれに関係し合い、影響を与え合うので、織りなされる人間関係もまた魅力的。
恋人同士だけでなく、上司と部下の関係や親愛、友情などは勿論、仲の悪い様子まで納得のいくもの・しっくりくるものばかりで、こんな人間関係を描けたらと書き手としての憧れもあります。
また、表紙のイラスト、人物紹介のイラストが非常に美麗です。
血縁なども上手く捉えた描き方をされていて、すごいなぁと思うのでした。
【架空歴史モノとして】
物語の舞台である架空の王国イルバス。
ここは寒冷地で、雪国故の様々な問題を抱えています。
基本的にメインキャラクターが王家の人間や貴族なので、そうした問題に対処していくわけですが、魔法なんてないので簡単にはいきません。そうしたリアリティも好きです。おいもをそだてるんじゃ……
また、最大の特徴であろう「複数の王を戴く」という制度。
新しいな! と感動しつつ、その制度が生まれるに至った経緯に納得して「いいなぁ」と思いました。
沢山王様がいたら当然発生するであろう問題も上手く描かれていて、架空の王国モノ、王宮モノが好きな人はドストライクだろうなと思っています。
そして陰謀。じわりじわりと主人公たちに迫ってくる感じがするこれも、物語を盛り上げるスパイス。
何巻か続いても未だ全貌が明らかにならず、インクが滲むような不安感を掻き立てる様もシリーズを通して描く一番大きい陰謀だろうと推察して、描き方が素晴らしいなと思います。
やはりキャラクターの造形が見事なので、陰謀なども面白く魅力的なのでしょう。
ふとんも見習いたいです。
それから世界の広さ。
基本的にはメインの舞台イルバスで繰り広げられる物語ですが、常春の島国ニカヤや怪しい感じのする大国カスティアなどの近隣諸国も登場し、時には舞台になります。
戦争も起こりますし、主人公たちは国内だけでなく時には海を渡って移動します。そういったところから感じる世界の広さ。それが歴史モノとして好ましいところです。
一国だけでも狭さを感じさせない世界観。好きです。
【構成】
ここは人によってはちょっぴり残念ポイントかも?
このシリーズの作品はどれも「問題発生→解決に奔走→事件発生→解決、穏やかに将来を思う」という構成なのですが「問題発生→解決に奔走」の部分がですね、じれったいというかもどかしいというか、そのような感じで、人によっては「序盤がしんどい」という感想(ふとんふぁみりーの一人より)を抱くかもしれません。
ですがそう言ったふとんふぁみりーの一人も「最後まで読むととても楽しかった」と言っていたので、序盤のもどかしさはちょっと堪えて読み進めてほしいなと思います。中盤から終盤は本当に楽しくて目を離せないので。
一気読み推奨かな。
【タイトルが格好いい】
ここらで完成、としようとして思ったことを追加。
毎度「廃墟」を含むタイトル。とても素敵ですよね。
ただ……自作『ショタコン』でサブタイトルを「ショタコン」から始める縛りを設けて、連載50部辺りから「ひいひい」死にそうになっていた書き手ふとんとしては「いつか「廃墟」が入らなるんじゃなかろうか」という感想。
完結まで素敵タイトルでいてね……
作者様のセンスにおいのりするふとんでした。
うむ、このくらいでしょうか。
このシリーズは未だ連載中なので、続きがいつも楽しみです。
最近出たばかりなので、次の巻はまたしばらく待機が必要。ふるふるします。
読みやすく面白さも最高なシリーズですので、この紹介でご興味持っていただけたら幸いです。
それでは、今回はここまで。