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ふとんの本棚  作者: ふとんねこ


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21『竜の医師団』庵野ゆき


 紙の本、高いですねぇ~!!!!

 それでも買うけどねぇ~!!!!


 皆様いかがお過ごしでしょう、ふとんねこは積読が床に溢れ始めました。ピンチです。

 そんなこんなで本日の本棚。久々にファンタジーです。


 『竜の医師団』

 庵野ゆき


 竜が実在する世界で、その巨躯がもたらすものによって国を富ませる竜に居ついてもらうべく、そしてそんな世界の宝である竜を助けるべく生まれた竜の医師団と、そんな医師団に所属する竜の医師となるべく奮闘する少年たちの物語です。


 前々から「気になるな~」「どうしよっかな~」と思っている間に四巻まで刊行されておりました。一巻を読み終えてすぐ全巻揃えました。いっぱいあって嬉しかったのに読み終えるの一瞬だった……次は来年だそうです。そのくらい面白かったよ、ということでいつものご紹介を始めます。



【竜の巨大さの描写】


 やっぱりまずは皆大好きドラゴンについて!


 この作品における「竜」はめちゃくちゃ大きいんですよ。ふとんが今まで読んできた小説のどの竜より巨大なんじゃないかな……描写としてはほぼ「動く山脈」です。


 何せ作中で医師団は竜の鱗に杭を打ち(全然肉には遠いので平気)ロープを結んで登っていたし(医療行為として)、竜が身じろぎすれば全速力で離脱していたし(人間が蟻を無意識で踏み潰すのと同じようにされちゃうから)、生まれてすぐの赤ちゃん竜すら脅威たり得る大きさと書かれていて……何より、竜の皮膚の常在菌が人間よりデカい!!という今までのファンタジーには絶対出ていない視点で「竜の大きさ」を表現していました。


 そんなわけで、動く山脈サイズの生き物が飛んだり、病の痛みや痒みで暴れたりするわけですが、その描写がちゃんと「動く山脈サイズ」感なんです。


 小説の中で物の大きさの描写をきちんと設定どおりに保ち続けるのって難しくて、それが実在しないファンタジーなものなら猶更だとふとんねこは思っているのですが、それを完璧にこなし続けている作品じゃないかなと思います。


 そしてその巨大さが故の恩恵だけでなく、人間への脅威もきちんと誤魔化さずに書かれていて「リアリティのあるファンタジー」が大好きなふとんには最高なところです。



【竜のいる景色の鮮やかさ】


 本作品の作者「庵野ゆき」は「庵野」さんと「ゆき」さんの共同ペンネームだそうです。

 それでこのお二人が医師とフォトグラファーだそうで……


 本項目「竜のいる景色の鮮やかさ」はフォトグラファーの方の視点が強く表れているのかしら、と考えるなどしています。


 そう、この作品の「リアリティのあるファンタジー」感の「リアリティ」部分を強めている理由の一つが竜が存在する作中世界の色鮮やかさなんですね。


 竜の巨大な翼が巻き起こす嵐の力強さ、竜の巨大な喉から発される声が大地を震わせる感覚、晴れ渡る空と雨の降る暗夜。そして、とある特殊な能力を持つ主人公リョウの目で見た世界の景色。


 何もかもが目に浮かぶほど鮮やかで、実感を伴っていて、没入感が凄いのです。


 巨大な竜の体の上を文字通り「登攀」していくので、医療の場面は激しいアクションを伴いますがその目まぐるしさすら映画を観ているかのような見事な描写で、その瞬間何が起きているのかがとても分かりやすく描かれています。


 これは、常に動き続け、目まぐるしく変化する鮮やかな世界の一瞬を見事に切り取るフォトグラファーの能力なのでは、と感じたのです。勿論、共同で執筆されているのでどちらか一方だけのお力ではないのですが……



【医療行為のリアリティ】


 続きましてこちらは「流石お医者さんが作者の一人」と思わされたポイント。


 竜の医師団ですので、竜に対する医療行為が本作品の大きな盛り上がりの一つです。カルテやら医療器具やら現場でのやり取り、そして医療行為中の緊張感。読んでいて「わぁ、お医者さんすぎる……」と思うほどにめちゃくちゃリアリティを感じました。


 患者(患竜)が前述の通り大変巨大ですので、医療器具やそれを用いた医療行為の規模も桁違いになっています。それが本当に物語として面白くてですね……


 オペ中の緊張感などは医療系ドラマを見ている時と同じくらいかそれ以上にハラハラでしたし、手術成功の瞬間は作中の医師団と一緒に歓喜したし、登場人物と一緒に過去のカルテを読んでいる時は「本当にドラゴンのカルテがあったらこうかもな」とワクワクしました。


 本当に「リアリティのあるファンタジー」として魅力的すぎるのです。



【登場人物の魅力】


 これも大事ですよね。


 主人公のリョウ含め、舞台である極北の国カランバスの竜の医師団に身を置く人々は大変魅力的な人物ばかりです。ふとんの推しはリョウの同期レオですね、大型犬系雪豹とかいう犬と猫の美味しいとこだけ集めましたみたいな性格とフィジカルを持つ作中屈指の美形であり面白ぇ男です。


 他にもリョウとレオが所属する研究室の主であり、医師団における竜血管内科科長であるカイナ・ニーナ氏、おっとり美人で最強の看護主任、機工学の天才少女リリ等々……様々な魅力を持ったキャラクターが登場します。巻数が増えるごとに増加していきますし、誰かしらお気に入りのキャラが見つかると思いますよ!




 久々のご紹介、こんな感じでしょうか。


 医療系ファンタジーですが、政治や歴史の話も絡み、世界観の奥深さ、広大さが窺える魅力的な本格ファンタジーでもあります。今後の展開にも期待大で待機しているふとんですよ。


 こんなに大きな竜の描かれるファンタジーは初なのでワクワクが止まりません。自分もドラゴン書きたいなという気持ちが溢れて参ります。


 地に足付いたどっしり系ファンタジーが読みたい方に非常にオススメです!


 それでは、今回の本棚紹介はこれにて。

 また次回の紹介も読みに来ていただけたら嬉しいです。


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