16『廃墟シリーズ最終巻』仲村つばき
あまり上手く言葉にまとめられないくらいに傷を負いました……
こんにちは……
まだ胸が痛いふとんですが、こちらを書きます。
最初の方に大オススメした『廃墟シリーズ』についてです。
オススメした以上、少しの責任もあると考えての最終巻に関するお話です。
ストーリー本体や結末に関するネタバレはしませんが、ストーリーラインに関するネタバレはあります。
簡単に言うなら「誰がこうなる」と言う際の「こうなる」部分はネタバレしますが、「誰が」はネタバレしません。
この思いは完全なネタバレ無しではご報告できそうにない。
『ベアトリス、お前は廃墟を統べる深紅の女王』
仲村つばき
未だに涙が出ます。
後遺症がデカい。
さて、今回は本エッセイにおける特殊回です。
先日私がこの最終巻を読んだ際の活動報告を目にされた方は「何が起きたのだ」と思われたことでしょう。
正直、完結となる最終巻の内容のために、以前のように「万人にオススメ」とは言えない作品になってしまったという感想です。
作品としての完成度はやはり高いです。
キャラクターも魅力的で、息づいていると感じられる。
しかし、しかしですね……
今回、とある主要キャラクターが死亡します。
今まで、主要キャラクターが死亡する際は、それなりにヘイトを溜めていたり、明らかすぎる理由があったりしたのですが……
そのキャラクターらしい最期でした。紙媒体の本として、ページが黒に染まっていく表現も良かったと思います。けれど、そのキャラクターである必要はあったのだろうかと、死ぬ必要はあったのかと、思わずにはいられないのです。
今まで「この人死ぬかもな」とか「この人は死ぬしかなかっただろうな」という納得感のある死だけを与えてきたシリーズだからこそ、あまりにもショックでした。
そのシーンが作品の真ん中辺りなので、ふとんはそこから読み終わるまでずっと泣いていました。
辛かった。でも手は止められなかった。
そのキャラクターの死が、何故必要だったのか知りたかったからです。
結論は……やはり「どうして」でしかありませんでした。
確かにそのキャラクターが死亡したことで物語は大きく動きました。
起承転結の転の始まり、という感覚でした。
でも、どうして、としか思えなかった。
悲しくてたまらなかったのです。
納得のいく理由を探しました。
読み終えても涙が止まらなくて他のことに手が付かなかったので。
作中、舞台の王国イルバスは戦火に包まれました。
それは前作から匂わされていたので「そうなるだろう」と予想できていたことです。
これかな、と思ったのは今回の物語における「問題」が「戦争」という部分です。
本シリーズの序章的な『廃墟の片隅で春の詩を歌え』も戦時中でしたので、主要キャラクターが死にました。ファンタジーですが、魔法ファンタジーではないので、死んだ人は戻らないし、便利な回復魔法も回復薬も存在しない、無情な現実がありました。
戦争とは無慈悲で非情なものです。
現在、ウクライナでも起こっている上に日本にも迫っているかもしれないと感じている現実です。
だから今作は、架空王国史としての完成度は非常に高いと思います。
歴史上には、奇跡的な出来事も、悲劇的な出来事も平等に存在するのです。
その、戦争の最悪さを、悲しさを、あの死に乗せたのかもしれないと考えてみました。
多分違うな、とすぐに諦めましたが。
やっぱり私には、納得のいく理由が見つかりません。
そういうわけですので、ハッピーエンドを求める人にはオススメできないという感想になります。
まだ心が酷く傷ついて、上手く文章にまとまった気がしません。お目汚し、申し訳なく思います。
でも、戦争の悲惨さすらリアリティをもって描き出した架空王国史をとして読みたい人にはオススメできます。そうした「こういう国があったかもしれない」という想像をさせる力は健在の作品です。
また、こうして激しく人の心を揺さぶることができる、すごい作品であるともいえます。
エンターテインメントとは人の心を揺らすことだ、と思いますので、これもエンターテインメントなのだと思います。
文章としての力は間違いなく強いです。
皆幸せハッピーエンド、を求めていたつもりではなかったのですが、いつからかこのシリーズは「きっと幸せになる」を私に幻視させていたようです。
そういう物語だと、思わされていたのでしょうか。
最後には皆で、春の詩を歌って、イルバスの繁栄を願っていくのだと、そう思っていました。
どういう感想にまとめればいいのかもわからないほどに、心がかき乱されています。
読もう、と思った方へ、こうなる可能性もあると提示することが、このシリーズをオススメした一人の読者としての小さな責任、と思う次第です。
結末自体は、きちんとまとまっています。
本当に、そのキャラクターの死だけが、ひどくて。