14『烏に単は似合わない』阿部智里
こんにちは、お久しぶりでございます。
いやめっちゃ久しぶりだ……ほったらかしてごめんなさいなのです。
久々に本棚に載せられるように読んだので、書いていきます。
『烏に単は似合わない』
阿部智里
大人気な八咫烏シリーズの第一巻ですね。
ふとんはこのシリーズで一番コレが好きです。
人の姿と烏の姿の両方を持つ人々「八咫烏」が暮らす『山内』の宮廷陰謀劇。
第一巻のこちらは、その中でも一等華やかな后選びの回であります。
日嗣の御子の后に選ばれるため、宮廷へやってきた東西南北の四家の姫君たち。それぞれが住まう屋敷の名を冠するがごとく、春夏秋冬に似合う美貌の彼女らが、后に選ばれるために妍を競い、謀略を巡らせる。桃源のごとし美しさの中、蠢く黒い陰謀は果たして誰が始めたものなのか……
読み始めに感じたときめきとか、そういうものを良い意味で裏切って来るこちら。
がっつり世界観を楽しめるファンタジーですが、ミステリー好きさんにこそおすすめです。
【魅力的で果てしない世界観】
やっぱりこれですね。
冒頭から、特別八咫烏たちの世界の詳しいことを語られないままに、外の世界を知らずに生きてきた主人公視点的の東家の姫あせびの目で、山内のことを知っていくのがすごく良いです。
馬、と言われて唐突に目の前に現れる大烏。
名前こそ我々の社会や文化で知っているものの、形式が違う祭事の数々。
人の姿から烏に転じる同胞を初めて見たときの衝撃。
華やかで絢爛な、宮中の美しさや他家の姫たちの美貌。
豊かな情景描写や、分かりやすい会話シーンで教えられるそれらにあせびと一緒に感嘆し、驚嘆して、読者の中でもどんどん世界が広がっていくのですが、それ以上に広く、果てしないのだろうなというのも端々の描写から見て取れて、想像力が膨らみます。
自分たちは八咫烏であると認識していても、まさか自分が鳥の姿になれるのだとは思いもよらなかったあせびのショックの様子などは、登場人物たちが自分たちを「烏」「八咫烏」と言っていたのをいまいちピンと来なくて流していた読者に、転変の鮮やかさと共に叩き込まれるようです。
空飛んでみたいな……と思いました。
また、ちょっとしたことではあるのですが大好きなのが、山内の人々が八咫烏なので、例えば「口を突っ込む」などの言葉が「嘴を突っ込む」になっている、などの細かさがよきです。
【魅力的な登場人物たちとその変容】
これも外せませんよね。
メインに据えられた四家の姫たちは勿論、宗家の姫宮、女房達や下男等、様々な人が登場しますが誰もかれも魅力的であります。
物語が進むにつれて人物の印象が変わる、というのはよくあるものですが、こちらの作品でのその眩しさや鮮やかさや、時に総毛立つような感覚は別格だと思います。
その魅力自体がネタバレになってしまうので、黙っておきますが、物語の中で登場人物たちに対する印象がガラッとひっくり返される感覚が大好きな方には超おススメです。ほぼ全員に対してそうなるので、非常に良いですよ。
【ファンタジーかつ、宮廷陰謀ミステリーとして】
本当に読み始めは、胸が高鳴る予感に満ち溢れた物語なのです。
しかし、一人の死から暗雲が立ち込め、何かが崩れていくような感覚がまたよい。
世界観を味わって、ファンタジーとして楽しみながら、同時進行で絢爛の裏に潜む仄暗さを堪能する宮廷陰謀ミステリーを楽しめる作品です。
ラストの怒涛の展開は本当に納得の嵐と驚愕の連続でした。
こんな感じでしょうかね。
久々なので紹介の文量がいまいちつかめない……
おすすめ度が上手く伝わるといいのですが、ネタバレを避けると非常に難しいですね。
シリーズを読み進めていくと『山内』そのものの正体に近づいたり、所在に驚いたりしますし、登場人物たちがもっと鮮やかになっていきます。二巻である『烏は主を選ばない』も好きです。
ただちょっと気になるのは、文庫版の初版の頃と今売っているもの、表紙のイラストが変わったよな……前のやつの方が素敵だったよな……というところ。
こちら、初版の頃に友人に借りて非常に気に入った後、最近になってこの巻だけでも手元に欲しいと思って買ったんですが、表紙が変わっていてびっくり。初版を探そうにも、見つからなくて諦めて今のデザインのものを……というふとん事情アリ。
そうやらシリーズ通して、すべて今のものにいつからか統一されてしまったよう。
調べてみたらコミカライズされているようで、その影響かも……??
本ってそういう時もあるから、表紙含めてお気に入りの時は出会った時に買わなきゃな、という教訓になりましたね。
それでは、今回のオススメはこれにて。
また次回の紹介でお会いしましょう。