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17話 魔法使いの息子・フォップ

「zzz……むにゃむにゃ……」


 それは、人間誰もが寝静まり、魔王のわたしでさえ眠っちゃうような時間のことだった。


「むー……zzz――」



 ズドガァァァァァン!



「むぁぁっ!? ふぁ!? むぁ!? な、なに!? 何の音よ!?」


 深い眠りも一発で覚めるような轟音。


 何かが近くで爆発したような音と衝撃にわたしは飛び起き、すぐさまショボショボした目で辺りを見回す。けれど、そこには誰もいなかった。


「いや、違う。これは――」



 ドドガガァァァァン!!!



「外よ! 外、外! 外にバカがいるわ! ちょっとそこで待っときなさい! わたしの安眠を妨害した罪をその身でしかと受けるがいいわよ!」


 パジャマのまま、わたしは怒りの感情そのままにズカズカ外へと向かう。


 いったい何なのだろう。この音は何かが爆発してるものとみて間違いない。そこまで大規模なものじゃないし、魔法だとしても、魔力の感じからしてだいぶ未熟だ。


「ちょっと! どこのどいつ!? 時間考えなさい時間! 魔法かなんか知らないけど、そういうのは昼に――」


 ボガァァァァァァァァァン!


「ふぎゃぁ!」


 全部言い終わる前に、いきなり人影のないところから爆発魔法が顔面へ飛んできた。


「なっ、なにふんのよぉっ! いくら魔王だからって、わらひも女の子なのよ!? 顔に傷がついたらどーふんのっ!?」


 人影も何もない。そう思っていたが、暗視を使ってみればそういうわけでもなかった。


 縦に長い帽子とローブを身にまとい、右手には杖、左手には魔法書、それから生意気そうなツラをした、ロナくらいのガキがそこに立っていたのだ。


 そして――


「……ふん」


「鼻で笑うなぁぁぁぁ!」


 極めつけには、わたしを見て鼻で笑ってきた。


 これだけで一発でわかった。どこから来たのかはわかんないけど、このガキはロナとは比にならないほどのクソガキだ。粛清対象だ。だって、魔王のわたしに向かって鼻で笑うとか、そんなことあっていいはずがないから。


 わたしは和らいできた鼻の痛みを手で押さえつつ、続けた。


「あんた、ガキのくせに何時だと思ってんのよ! 魔族ならともかく、人間のガキは今寝てないといけないところでしょうが!」


「……ガキ? ガキとは、いったい誰のことでしょうか?」


「~~~~っ! あんたよっ! あ・ん・た・っ!」


 言ってやると、謎のガキは首を横に振って「ふぅ」とため息をついてきた。


 わたしの怒りボルテージはさらに上がっていく。


「まったく。頭の悪い方はこれだから困ります。僕にはちゃんと名前があるんだ。あんたとか、こいつとか、名前で他人を呼ばない失礼で礼儀のなってない人、嫌いです」


「~~~~~~~~~~~~っっっ! もーーだめっ! コロす! このガキはコロす! わたし決めた!」


「それで、できもしないくせに腹を立てれば殺すだのなんだの……。呆れますね。ふぅ」


「ムキィィィィィ!!!」


 本当に魔法陣を召喚させたところで、毎度おなじみ創造主からストップのお声がかかった。


 魔法陣は強制的にかき消され、わたしは何かに縛られたみたいに、気を付けの姿勢をさせられてしまう。身動きが取れなくなったのだ。


 それを見て、よくわかんないガキはまたしても「愚かな」みたいな感じでため息をついてきた。


 自由の身なら、今頃わたしは大陸を破壊してたと思う。何なのこのガキは。安眠中だったってのに、いきなり来て爆発魔法放つだけ放ってさぁ!


「まったく、仕方ありません。自分のことを魔王だのなんだのとホラばかり吹く頭の悪そうな方に名前で呼ばれないのも癪です。僕の名前はフォップ。以降、ちゃんとこの名前で呼んでください」


「だーれが呼んでやるかっての! あんたの顔なんてそもそもわたしは二度と見たくないわよっ!」


「それは僕も同じです。魔法陣から魔法も出せない人のところへ通うことになるなんて、先が思いやられますよ。でも、仕方ないんです。今日からこの幼稚園に通うハメになったんですから」


「はっ! そんなのわたしは知らな――って、えぇぇぇ!? ちょっと待ちなさい! 今あんたなんて言った!?」


 わたしが心底驚いて聞き返すと、ガキンチョはお決まりのポーズ(哀れにこっちを見て首を横に振る)を取った後、確かにこう言った。


「だから、今日からこの幼稚園に通うハメになったんですよ、僕」


「はぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」


 わたしの声はまだ明ける気配のない夜空へ響いて行った。


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― 新着の感想 ―
[一言] 夜中から、お疲れ様です。 魔王様はパジャマをお召しになるのですね。 魔法使いのガキ、相手をするのが大変そうです。 ご愁傷様です。
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