「透明人間」のスキルを手に入れた俺が、見下されてた奴らに仕返ししてみた
2021年、とある国に男がいた。その男は今年で40歳になるにもかかわらず、定職についていなかった。それどころか働いている人々を見下し、アルバイトすらせず、親に金を無心する日々をおくっていた。しかし、男は満たされていた。なぜなら、インターネットとゲームが、この男の心の隙間を埋めていたからである。掲示板に語気の強い言葉を打ち込んでは、反応してきた相手との口論に勤しむ日々。こんな生活も悪くないか、男は心からそう思っていた。しかし、そんな日々は突如終わりを告げた。誰も自分の書き込みに反応しなくなったのである。次の日も懲りずに書き込みを続けるが、反応は無い。
「まるで、透明人間みたいじゃないか」
男はしゃがれた声で、そうつぶやいた。暇を持て余した男は、ゲームやパチンコ、アニメに興じるが、心は満たされない。自分な有り余る時間を消費するには、これらのコンテンツでは力不足だったのもあるが、何よりも人との関わりが無いのが大きかっただろう。インターネットで口論をしていた頃は流れる文字を見て、人との関わりを感じることができた。しかし、今は違う。アニメやゲームは、素晴らしいエンターテインメントではあるが、それはあくまで一方通行のものである。大好きだったはずのそれが、今の男には、まるで笑う事を強要されたコントのように感じた。薄ら寒いそれを消し、男は無駄だと知りながら、ただ明日はきっと良い日になるだろうと期待して、惰眠を貪った。
ある日、男の両親が死んだ。いや、殺された、というのが正しいだろう。家に強盗が入ったのだ。男は必死に命乞いをしたが、強盗はそんなのを気にする素振りすら無しに逃げていった。男が違和感を感じ出したのは、その時からだ。親が殺されてから少ししたら、叔父が葬式を手配やその他諸々をしに家に来てくれたが、叔父は男のことまるで見えていないようだった。その後も、どうやって生きたらいいかを聞きに役所に行った時も、まるで相手にしてくれない。その男は男は自分はこの社会から完全に拒絶されてしまったのだと悟った。この世界という大海に一滴だけ垂らされた油のように、溶け込むこともできず、影響を与えることもできない、ちっぽけな存在なのだと悟った。