夢見る宇宙
「ようこそ、ここは『ドリームランド』と呼ばれる場所です。
ここの支配者とも言われる、あの方に嫌われてしまえば、人間なんて立ちどころに踊るキノコにされてしまうでしょう。
そう迷信めいて伝わる場所ですが、本来は違います。ここにやって来た詩人なんかが口頭で別な詩人に伝えて、巡り巡って変わり果てた伝承です。他の伝承だってそんなものです。まあ、その伝承が変化していく様に、影響を受けるモノたちも居ますが、、、
まあ、そんな事は置いておいて、私の名前は『キノコ』とでもお呼びください。その方が奇妙で愛着が湧きますでしょうし。覚えやすいでしょう。」
キノコはそうやって、奇妙な世界を案内した。
キノコは黒いスーツとシルクハットを被った紳士のような道化のような印象がある。顔は整った顔立ちをしているようにも見えるが、見つめようとすると淡く煙がかかったかのように輪郭を掴むことができなかった。
喋っているときは口元が動いているのは分かる。
ドリームランドには、沢山の輪郭が掴めないものが浮いていた。雲のようなもの、霧のようなもの、と口で表すことができる類ではない。輪郭は時折出てくるのだが、瞬時に輪郭が無くなったりと、形がモクモクと変わっていく。まるで輪郭の掴めない煙のようで、そうでないモノが生きているような気さえする。赤子の胎動を見たことが有るのなら、きっとそれに近いのかもしれない。
キノコが案内する道は本当に山の獣道のようなもので、絵本に出てくる森の道という感じがする。そんなメルヘンな場所だ。森をイメージした20世紀後半の印象派画家の脳内を散歩しているような気さえする。
「ところで皆さん。道中長くなりますのでお話でもしましょう。」
「ここに浮いてあるアレは何だと思ってますか?」
そう言って、森の中に浮いてある煙のような煙でない輪郭が掴めないアレを指差す。
「」
「」
「」
「フフフ、皆さん分かってないようですね。」
「アレは皆さんの言うところ神様ですよ。」
「」
「」
「まあまあ、待ちなさいな。あのモヤモヤとしたモノは眠っています。もし目が覚めたらあなた達は終わりです。あなた達の魂が滅びると言っても良いでしょう。」
「」
「」
「まあまあ、聞きなされ。あのモヤは眠って夢を見ているのです。その夢は、あなた達が今生きている銀河の生命たちの夢です。」
「」
「」
「もちろん、そんな馬鹿なことおっしゃいなさいとは分かってます。分かってますが。本当のことなのです。」
「あれはあなた達が産まれる、あなた達の星が産まれる以前から眠っていました。そして夢を見ていたのです。」
「あなた達が魂と呼ぶもの、それを夢見ているのがアレです。現実世界が、科学と呼ぶ法則に従っているのは確かです。
しかし、こと、あなた達が自身の体を操作していることに関しては、アレが大元なのです。」
「」
「」
「いえいえ、だってあなた達の身体は、親がブレンドしたDNAが栄養を吸収して出来ている。連続した法則の中にいる。
だから、何もない所からあなたは産まれることはないと信じれる訳だ。」
「では、あなたの意識は?あなたの意識は何処から肉付けされたのでしょうか?あなたは誰の意識から分離して融合して、肉付けされて今の傲慢な意識を形成しているのでしょうか?」
「そうなると、もっと言えば、あなたの星にいる生命体達は全員が個々の意識を持っているのでしょうか?それならいつから?何から連続して?」
「意識は無から作成可能なのでしょうか?」
「」
「」
「いえ、あなた達は答えられないはずだ。何故なら、意識の源はあなた達が観測可能な宇宙には存在しないからだ。」
「」
「」
「ここはドリームランド。あなた達がやって来たのは夢を見てもらうため。それじゃあ、誰の夢かって?フフフ」
急に意識が遠のいていく。その中で無数の夢を見た気がした。そうして、いつも通りの朝を迎えた。