エピローグ
女がいた。
女は机に向かい大型ディスプレイを一心に見つめていた。部屋にはその女一人きりだ。
異様な部屋であった。照明は暗く、壁一杯に無数のモニタが設置されている。それらモニタには日本中の主要な駅構内や設備が映し出されていた。映し出されては秒単位で他の場所に切り替わっていく。
部屋の扉が開き、細面の男が入ってきた。
「課長」
男の呼び掛けに女は顔をあげた。
「例の件ですが背後関係が判明しました」
少しの間の後、「そう」と素っ気なく答えた。男は手に持ったファイルを女の机に置いた。
「課長の予想通りでした」
「ならば計画通りに進めて下さい」
「分かりました」
男は軽く会釈をするとそのまま出ていった。
女はしばらくキーボードをカタカタと触っていたが切りの良いところで男の持ってきたファイルを手に取った。赤い文字で極秘とかかれていた。数ページをめくっていると、メールの着信音が鳴った。
『風花 着信』と出ていた。
《雪ねぇ ありがとう
事件解決したよ それで、お土産何がいい?
私的には『こなきなきなこ』って奴が受けると思うけどどう? ってかもう買ったからね 楽しみにしてて!》
という文面とともに、きな粉をまぶした妖怪子泣き爺のようなお菓子をもつ今春風花の姿があった。女の口許が少し緩む、がすぐにその目が険しいものに変わった。
女の視線は風花の背後の少女に注がれていた。
女はさっき見ていた書類を手に取った。
そこには少女の写真が載っている。下に少女の名前も記載されていた。
《神凪 愛》
女は、だるそうなため息をつくとファイルを投げ出した。しばらくの間、部屋の天井を見つめていたが卓上の電話の受話器を取り上げた。
「ああ、三島さん。さっきの資料だけど。あそこに載っている候補者について話があるの。申し訳ないけど来てもらえるかしら。
そう。最適な人材だと思うわ」
2020/01/15 初稿
神凪愛は帰ってくる
な~んちゃって