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【完結御礼】新説信長公記! ― シスコンお兄ちゃんが大好きなんだけど、モテすぎだしハラスメントな信長さまだから、織田家滅亡のお手伝いをするね! ―  作者: 香坂くら
第六章 兄・信長包囲網(志賀の陣) 

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71話 兄・信長包囲網② 横山城に秀吉


 ― 兄・信長 ―



 ああ……。そんな目でオレを見るな。特に帰蝶(きちょう)、お前のコトだ。くっそー、悪かったよ。確かに車の燃料計を確認してなかったオレが悪かった。


 でもな、日常点検を怠った草履取りも悪いだろ? って、草履取りは整備士じゃないし担当業務外でムリか? ……おいいぃ、だからさー、そんな目で見るなって。


「帰蝶。オマエ、なんか言いたそうだな?」


「言わいでかっ、ったく、やれやれじゃわい。秀吉の部隊が救援してくれんかったら、今頃、お主自慢のヨンクとやらが、これまたご自慢だった金満《棒道》(=高速道路的な軍事道)の真っただ中で立ち往生して半泣きになりつつ、浅井や六角共の影におびえて、お日さまが昇るのをひたすら待ち望むところじゃったし」

「だから許せって」


 オレらは当初予定していなかった横山城に《成り行きで》立ち寄った。

 この城は姉川戦の折に浅井から奪い取ったものだ。現在、木下秀吉に城番をさせている。


 今回はもっともらしく近江表の戦況を督戦するという名目をこじつけてやった。城中のモブヤローらは、突然のVIP来訪に望外の喜びを感じてか、上へ下への騒ぎになってやがる。


「はぁ? オマエ、ナニサマのつもりじゃ、アホ」


 帰蝶がほざくと秀吉も、


「そうでござるっ。敵が攻めてきたのより、ずっと大変な事態になってしもーたのでキキっ!」

「抜かせ。後日大量のバナナを差し入れてやる。だからこうして来てやったオレに、最高級のおもてなしをしろよ?」


 秀吉のわっかりやすい超不快気なツラ。あぁ、そーさ! 全部オレが悪いんだよ! この猿めっ!


「ヒデヨシ! あなた、信長さまに向かってなんて無礼な態度なの?! 家臣の風上にもおけないってまさにこのコトだわっ! ああっ、信長さまっ、お久しぶりです。わたし、木下家の家宰を務めます、木下(きのした)寧々(ねね)でーす! 出来の悪いサル公に代わって、この寧々が、誠心誠意、お殿さまのおもてなしをいたしますから! どうかごゆるりとお過ごしください!」

「う、うむ」


 嬉しいが、この子はこの子で、ハイテンションキープしすぎてて話し続けるのがちょっとコワイ。


 外を眺めていた帰蝶が、秀吉に振り返って尋ねた。なんとレアな真顔だ。


「わが軍が攻囲しておる佐和山(さわやま)城の磯野(いその)丹波(たんば)は、この期に及んでもまだ粘っておるのか?」

「……は。重囲している丹羽さまと連携し、連日、投降を促しておりますが、頑なに浅井への忠義心を貫いております」

「フフン。浅井の後詰をまだ信じておるのか。主にとっては誠に殊勝な心掛けじゃの。……で、そこの。さっきからコソコソこちらの様子を覗き見しておるオナゴ! そう、お主じゃ。半兵衛ではないか。実に久方ぶりじゃの?」


 眉を曇らせた彼女が、いかにも「仕方なく」とゆーふてくされた態度で目前に寄り、正座した。


「帰蝶さま。随分挨拶もなく、失礼してました。おかげさまで社長の安藤どもども、こうして元気に過ごさせて頂いております。また信長さま。いつにも増してお元気そうで何よりです」


「かっかっか! ……だとさ、ノブ。まーったく心にもない言葉をけなげに申しておるぞ? このパワハラ男よ?」

「ウルセーよ。――なぁ半兵衛ちゃんよ、姉川以来、オレにイイ気してないと思うが、オレは一向に意に介してないからな。そもそもオマエが余計な忖度したせいで、ややこしい事態になったんだからな! そのオトシマエをつけさそうとして、ナニが悪いんじゃい!」


 半兵衛ちゃん、今にも泣きそう。けれども泣いて許されると思うなよ、このヤロー! ……でも、かなり言い過ぎた。


「おーヨシヨシ、泣くな泣くな。コワクて性格の悪いお兄ちゃんですねぇ。でものう、半兵衛や。お前はとても利口だから、ここでこうして雇われて暮らしてるんじゃよ? 思い違いしてはイカンぞ?」

「はぁ」


「このアタマと性格の悪いコワイお兄ちゃんはのう、ときどきオマエのコトを気にかけて、そこな秀吉にウザイ電話しておるそうじゃよ。『半兵衛ちゃん、大丈夫か? 持ちそうになかったらスグに岐阜に返してくれよ?』などとな」


 き、帰蝶、キサマ⁈ ダレから聞きやがった! ってコイツしか、いねぇ!


「サル公、テメエ、シバき倒すぞ? コラァ! ペラペラとっ」


「ウキッ。寧々ちゃまを横山城(しごとば)に呼んでくれたのも、実は殿でしたよね?」

「う、ウルサイわっ! テメーら全員、敵に喰われてまとめて死んでもらおーと思ったんじゃい!」


「……だってさー」

「黙らんかい、帰蝶!」


 息継ぎ忘れるくらい大声で怒鳴って、グッタリしたじゃねぇか! 寧々がさりげに差し出してくれたミネラル麦茶お徳用をがぶ飲みする。ふー、気が利くいい娘だ。


「ヨォ、半兵衛。知恵貸してくれぃ。オマエ、佐和山城、どーする?」


「はあ。わたしですか? わたしなら攻囲を解きます。そして法外の金品を送りつけます。同時に小谷城にそれを宣伝します」

「ほー」

「丹羽さまには小谷に向かっていただきます。佐和山の兵が繰り出して来たら、横山の兵で留守の佐和山を取ります。あるいは出てこなかったら、浅井に《佐和山が裏切った》と念押しのデマを流します」


「だってさー。ノブナガぁ」


 そろそろ大坂に向かうとするか。ここにオレの出番はない。三好征伐に専念するとしよう。


「秀吉。岐阜に急使を出してガソリン持ってこさせろ」

「承知!」

「ええーっ、せっかく信長さまのためにごちそう作ったのにィ! もう出掛けちゃうんですかぁ?」


 出立の段取りを考えていると、寧々が食べきれんくらいの量のごちそうを運んできた。う、うまそーだが、この城の兵糧は問題ないのか?


「アリガトな、寧々。キミの名は永遠に忘れない!」

「キャーキャー! あーん、ミショーさまぁ!」


 常時ハイテンション娘の歓声を背に受け、廊下に出るオレ。

 なかなかいい気分だ。


「お兄ちゃん、待ってー」


 ざーとらしい帰蝶のアタマをドツき、横山城を発った。






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