表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/125

06話 義元討ち取っただと、何てことしやがるっ

 善照寺砦を経て、中島砦に至ったボクら織田軍五千は急停止し、そのまま途方に暮れていた。家来らの手前、救援するぜと豪語していた丸根砦や鷲津砦がとっくの昔に陥ちていたからではなく、桶狭間とかいう土地が周囲から丸見えの場所だったのである。


「へぇ、そうか。桶狭間って言うから窪地と思ったけど、そうじゃなくって山だったんだ」


 要するにうかつに近づくと火傷する。どころか死亡さえしてしまう危険行為だと判明したためである。

 ただ例によってボクとしてはそこを敢えてゴリ押しし、中央突破で綺麗に玉砕! が「いいね!」って感じを狙ってんだけどな。


 ヤツらは桶狭間山を起点に陣を張り四方を囲みながら休憩している。おいおい余裕だねぇ。


「旦那。いかがいたしましたょう」

「我らの動きは敵に丸見え。奇襲も何もあったものではございません」

「てか、大高城に入った松平元康が妙におとなしくしているのも気になるでござる!」


 どーでもいーよ。面倒くさいよお前らの悩み話は。とにかく前進あるのみだろ。けれども相手に警戒心は与えちゃならぬ。だって可能な限り本陣に近付いてパーッと華々しく、見事な散り際を演出したいからなぁ、ボクはな!


「てか、こそこそ裏から忍び寄り、隙を突く。超卑怯な作戦! それしかござらぬでしょう」

「林。お前来てたの? ウザイよ」

「ひいーっ。冷たいお言葉。てか、泣けてきます。せっかく良いアイディアだと思って進言したのに。あんまりです」

「それ! それだよ、その言葉っ! 《アイディア》ってナニ?! お前、戦国時代の人でしょうが。だったららしくしろよ、らしくよ!」

「ひーん。てか、旦那がいじめるシー」


 あーうっとおしい。


「旦那っ。ご注進ですっ」

「藤吉郎か。なんだ?」

「サイコーのビュースポットが見つかりましたですよー。キキッ。敵の大将のカオが丸わかり。ププ」

「なんだよ? なんでそんなに笑ってんだ?」

「いやー。敵の大将、今川義元さん。すんごいお化粧だったんですよー。見てくださいよー」

「どれどれ」


 え? 義元って女か? 藤吉郎が撮った写真を見た。


「うえっ、ナニコレ、どうしたの彼? メッチャ目立ちたがり屋、この暑いのに」

「どれどれ、わたくしにも。え? てか、別に普通ですが、何か?」

「炎天下なのに化粧でカオ真っ白だよ? じゃなくってさ、オマエもっと写真自体を見て驚けよっ? 何度も言うがYOUは戦国人なんだろーが!」

「てか、コイツは白粉(おしろい)にお歯黒(はぐろ)と申しましてな、京かぶれしたシャレオツな連中の間で超ブレイク中のファッションなんですわ」

「分かっとるわっ! 前に会ったことがある足利将軍も真っ白だったし。じゃなくてボクが言いたいのは、こんな面白いヤツに負けちゃう悲惨さがたまらないって言ってんだよ! っていちいち説明さすな」

「てか今川殿は京の文化に通じた風流人。インスタ映えしてるのはそのせいですな」


 いいからもう……。もうオマエ、明日から令和人になれや。あ、平成くらいかな、昭和でもいいや。

 

「信長旦那」

「今度はなんだ?」

「服部小平太と毛利新介がワーワー喚きながら敵陣に突っ込んでいきました」

「誰だソイツら? なんで突然暴走しちゃったの?」

「厚化粧のオッサンを倒したら、嬉しいご褒美がもらえちゃうゲームが始まったとかデマが流れて。それで」


 藤吉郎が指差した先にドローンが飛んでいた。(いもうと)が内蔵したスピーカーから可愛い声を発していた。


『さぁ。《死にたい奴らは前に出ろゲームう!》 っスタートぉ。ハデに暴れた人には、わたしから素敵なご褒美あっげちゃうよー』


「うおおおっ!」


 自軍から、地鳴りに似た喚声が上がった。


「てーか! バカな二人に後れを取るな、褒美を得るのはワシらじゃあ! 続けぇ!」

「おおおうっっ!」

「な、な、な、な、ちょー……」


 藤吉郎(さる)が興奮して飛び跳ねる。


「ま、けどこれで今川の大軍に蹴散らされて、見事な全滅劇が撮れますよー。ウキウキッ」


 織田の突撃に合わせ、突如雷雨が起こった。局地的な突風も吹き出した。今川軍は最初織田の攻撃よりも雨風を凌ぐ方に懸命になっていた。


 で、それがヤツらの命取りに……。


 あ、義元さん討ち取られてしもた〜〜……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ