48話 番外 雑賀の荘 その四
一組のチーム脱落を知らせる号砲が鳴る。
すかさず、みっちゃんが至近に潜む砲手を見つけて発砲。ほぼ同時に牧少年が発砲して二人目を仕留めていた。
二組目の脱落を知らせる号砲が響いた。
「典型的な大筒の失策だな。周りの敵の存在を確認しなかったのと、狙撃後の即時撤収を行わなかった
という事だな」
守重師匠は、もったいないという仕草でため息をついた。
そして、ふたりに尋ねる。
「幸か不幸か、残りの連中が種子島長筒のみになったが、どうしたい?」
「何処にいるのかを知りたいです」
みっちゃんが、不安そうに答える。
「そりゃそうだが、それは敵も同じだろ。……そーだなぁ、審査員の動きから察してみても、一組はだいぶ遠くにいるようだが、もう一組の動向はよく分からんな。……で、ここで質問だが。今、オレたちを襲うとしたら、おまえらなら何処から狙うっちょー?」
守重師匠は一歩下がって目線を上げた。
二人も師匠に倣い、同じようにして周囲見渡してみる。
「……ここ、扇状地……」
牧少年のつぶやきに、みな息を呑む。
みっちゃんは思わず少年を木陰に隠し、自らもそばに伏せた。
「やられたな。今やったヤツらはオトリにされたんだ」
「なんですって!?」
「なかなかの知略だ。オレたちは何処からか狙われている。もうお終いだ」
突如、牧少年が発砲した。
「なにっ?!」
号砲一発。一人が倒されたという合図だった。
師匠が草むらに転がり込んだ。彼の立っていた位置に赤い斑点が付いた。
「助かった。……牧、もうひとり、右のヤツ。……アレも行けるか?」
「……うん。いける」
「じゃあ、オレが先に飛び出して支援弾を撃つ。相手の正確な位置を見極めて仕留めろ。その間、光秀は接近を試みろ。牧がこぼしたらオマエが代わりにやれ」
「はい!」
「行くぞ。いち、にの、さんっ!」
師匠の放った弾が付近の山すそに着弾する。同時に相手の撃った弾が彼の頬すれすれに飛んだ。
牧少年が苦も無く二人目を倒す。
「……あなた、どうして一人目の位置が分かったの?」
「あの松の木、根元のコブの形がヘンだった。あれはコブじゃないって思ったから撃った」
師匠が少年の頭をクシャとする。その目はとても嬉しそうだった。
一人生き残った相手の男は投降の旗を挙げた。「脱落」の号砲が響く。この三人は、種子島長筒の組だった。
「あと一組ですね。彼らの居場所はまったく不明です」
「ああ。最後の相手はオレたちの居た場所には向かってないだろう。牧、もしお前ならどうする?」
師匠が問う。
「広い範囲が見渡せる場所でひたすら待つ」
「それしかないか。ヤツらはそうしてるのだろう」
――やはり。
山城のように急こう配の斜面に腹ばいになり、種子島長筒で狙い定めている射手を見つけた。
だが三人はすぐに攻撃を仕掛けず、木陰に隠れて策を練ることにした。
あの射手を倒したとしても、後の二人が何処にいるのか解らないからである。オトリの可能性もある。
一か八か、とりあえず散開し、牧が射手を倒す事になった。
師匠と別れたみっちゃんは、牧を直進させ、自らは木立の中を身をひそめながら並走した。
みっちゃんは山道の手前で、牧に銃口を向ける種子島長筒の射手を見つけた。
「牧!!」
はー。
おい、このページ。
「なんじゃ、どーした? 信長よ?」
「なぁ、このページさぁ。クライマックスなんだけど、クドすぎない?」
「どーして?」
「みっちゃんがさ。牧少年をかばってダイブしてるでしょ? たわわな胸を揺らしながら」
「それがどーした?」
「あのさ、三カットも要る?」
「あー、確かに三カットも費やしてるのう。……で? だから?」
光秀、牧をかばうように飛び込む。
光秀、牧の顔をかばうように自らの胸を押し当てる。
光秀、胸の谷間に牧の顔を抱え込む。
「……だから? ……あー、もーいーよ!」
射手の銃弾は、みっちゃんの背中をかすめた。
師匠の放った弾が轟音と共に飛来し、その射手を撃ち、真っ赤に染めた。
斜面にいた射手が異変に気付いて発砲した。師匠を撃ったのだ。彼は大筒を抱えたまま後方に倒れ込んだ。
「師匠!!」
光秀さんが思わず叫ぶ。
押っ取り刀の大筒の男がみっちゃんに狙いを付けたが、倒れざま、牧が発砲、
「もう、遅いわよ!」
と、みっちゃんも体勢を崩しながら、撃ち放った。
二発の弾が射手の顔を赤く染めた。
脱落の号砲がまず鳴り、次に勝者を報せる号砲が何発も響いた。雑賀ノ荘全体が最高潮の活気に包まれた。祭りのフィナーレに沸き立った。
膝をつく牧少年に、みっちゃんが手を伸ばす。しっかりと手を握って引き立たせると、照れる彼に肩を貸し、優しく微笑んだ。
その近くでムックリと起き上がる男がいた。
「師匠!」
ふたりの破顔に、守重師匠は「にかっ」と歯を見せた。
大筒の砲筒が真っ赤に染まっている。なんと愛用の武器を盾にしたのだ。
「三人ともどうにか生き残ったなっぴょん」
このあたり、力の入った絵で描かれていた。
……でもやはり、語尾のぴょんは止めとけ。




